石匠風間ブログ!

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地方の品格

2007-03-14 | 読書
去年読んだ『国家の品格』に書いてあったこと。
著者・藤原正彦は数学者でもある、あるとき天才と呼ばれる世界的な数学者を育んだ土地を訪れて驚いたという。国はインド、決して猛烈な教育タウンなんかじゃない、寒村という名がふさわしい田舎然とした村にもかかわらず目を見張るほど美しい寺院が建っていたという。
その土地周辺からはその他にもあまたの天才が生まれており、「天才を生む土壌の条件」の第一条として「美の存在」を挙げている。

ちなみに第2が「何かに跪く(ひざまずく)心」=宗教のみならずその地の伝統・習慣・個人あるいは大自然などに敬虔であること。
第3に「精神性を尊ぶ風土」=金銭や世俗的なことを低く見て芸術・宗教など直接役に立たないことを重んじる風土。

これは我々が今後の地域を作っていくうえで踏まえるべき重要な教訓が含まれてると思う。いや、無論今から美しい寺を作れってんじゃないよ。やっぱ文化でしょ!

実は来年度深谷商工会議所の事業で、深谷にある遊休施設を利用してなんかやってくれ、と言われている。ぼくの場合は単純直結に「ライブハウス」みたいな発想に落ち着くのだが、「安直に結論出すな」とのことなので、折に触れ考えている。まあ、そこはかとなくね。

そんなさなか、先月深谷で落語を聴く機会があった。立川なんとかっていう本物の真打の落語家さん。PTAの役割で仕方なく足を運んだのだがこれが予想外に面白かった。「古くからある落語には放送禁止用語が多くメディアでは話せないものも多い」のだとか、だから今回面白かったのか、それとも生で味わう臨場感が感動を生むのか。

でもって、落語家を深谷に呼んで月一とかで講演会やったらどうかななんて考えていた。若い世代にはむしろ新鮮なんじゃないかなって。
真打を呼ぶとギャラが高そうだから新米の勉強中なのを呼ぶ、で、深谷演芸場とかってマスコミにも宣伝して、「落語のまち・深谷」みたいな。

けれど、落語のみではいささか文化事業として広がりに欠けるかな。やはりアマチュア音楽家もやらせよう、ロックバンドでもピアニストでもいいし、そんなふうに徒然考えていたけれど、最も重要で深刻な問題は「集客できるか」と「採算ベースに乗るか」ということ。

集客や採算を考えずに行うなら、それは行政あたりでやってることと同じだ。そして、これらを考えると行き詰る。実際難しいと思うのだ。
天才を育む文化、その文化を育むべき社会構造がないのだろう。

偉大なバッハ・モーツァルトたちが偉大になれたのは、その類稀なる才能を愛したパトロン=大富豪の存在が大きい。あんな酔狂な金持ちなんていまどきいないから。

ってことは?とどのつまり、天才を生むにはもっと貧富の差を生むことに帰結する?それじゃあ弱ったな・・・