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ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

千葉県匝瑳市「飯高檀林コンサート」(続)

2007-10-17 04:04:19 | 能楽

さて、この由緒ある飯高寺で催された今回の「飯高檀林コンサート」ですが、番組は次の通りでした。

舞囃子    『高 砂』    ぬえ
舞囃子    『船弁慶 後』  加藤眞悟
装束付舞囃子 『経 正』    梅若紀長
 (いずれも囃子方は小野寺竜一、森貴史、大倉慶之助、大川典良)

じつはこの催し、太鼓方の大川典良くんが主催だったのです。お囃子方が主催の催しも最近はときおり見かけるようにもなりましたが、若手の彼がこのようなしっかりした催しをする事ができたのは立派な事です。もっとも「飯高檀林コンサート」自体は今回で12回目を数える歴史のある催しで、「コンサート」という名称の通りこれまではクラシックや雅楽の演奏会などが行われてきました。能の公演は、装束付舞囃子という略式のものだったにせよ、今回が初めての上演だったそうですが、それでも これまでのコンサートの際にお客さまから頂くアンケートには「この重要文化財の講堂を使って演じるのには能楽がふさわしい。ぜひ実現してほしい」という声が多数寄せられたのだそうです。

また一方 大川典良くんは当地・匝瑳市の出身で、ぬえと同じく大学時代に能に魅せられてこの世界に飛び込んだ人です。今は故郷であるこの地のそばに住む彼は、コンサートのお客さまの要望と最も合致した人材で、歴史あるこのコンサートに結びつくのは必然的な流れであったかもしれません。

しかしながら、やはり彼は今回の催しで故郷に錦を飾ったのです。さらに、出演者へは謝礼を用意しなければならないのに、コンサート自体は入場無料 という難しい条件の中で、しっかりと支持者からの後援を得て催しを実現できたのは、やはり彼の努力の成果だと考えるべきでしょう。よくがんばりました>大川くん

それで。今回のコンサートでは大川くんも自分と同世代の「友達」の囃子方ばかりを集めて、気の合う仲間同士での上演を図ったわけですが。初番の『高砂』を舞うことになっていた ぬえは、若手ばかりのこの催しだからこそ注文をつけておきました。「神舞はできる限り速く演奏して」。

こういう事は ぬえも大先輩が出演されるような催しでは なかなかお願いしづらいところです。ただ、神舞というものは通常の舞の中では最速な舞ですし、しかも曲目が『高砂』ですから、「立て板に水を流す」と表現される脇能の中でも 最も潔い演奏であってしかるべき、とされています。こういう、血気盛んな(?)若手が集まる催しだからこそ、『高砂』を演じるにあたって最も潔い。。最高速で演じてみたい、と ぬえは考えたのでした。

結果は。。ぬえも、高速の神舞をお願いした手前、若さにまかせた超絶・神舞が実現した場合、それに身体がついていかないのでは笑い者ですので しっかり稽古はしておいたのですが、う~ん、ぬえが考えたほどには速くならなかったな。。ぬえは通常より長い五段の神舞を注文したし、『高砂』は初番の上演だったので、囃子方がその後の曲目のことを考えて『高砂』は体力を温存、という事も考えられる場面ですが、そのような様子は彼らには見えなかったけれど、「無難に速い」、という印象の『高砂』となりました。でもまあ、囃子方の誰かが高速の神舞の演奏に絶えきれずに脱落、という事も、これまた場面として考えられるのに、それは全く危惧する必要もないほど しっかり合った演奏でありました。

お客さまも超満員(どうやって会場にたどり着かれたのか。。)、ぬえも楽しみながら舞うことができました。気持ちの良い催しでしたね~~。


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