ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第21次支援活動<登米市・気仙沼市>(その2)~「日和キッチン」と大川小学校と長面と

2014-05-16 14:27:32 | 能楽の心と癒しプロジェクト
三春の滝桜が散っていて残念~な気持ちで再び走り出しました。この日は登米市の横山不動尊さんで出演の予定だったのですが、開演は夕方なので、とりあえず石巻に向かい、関係者にご挨拶だけ申しあげることにしました。

石巻。。前回こちらで上演したのは仮設商店街の「立町復興ふれあい商店街」さんの3周年記念のイベントでしたから、昨年の12月ですね。ずいぶん不義理を重ねてしまいましたが、観光協会や秋田屋庭園、そして立町商店街のみなさんのお元気な姿を拝見できてうれしかったです。朝食は初「日和キッチン」でした。





オーナーの天野美紀さん(写真:左の方)は東京在住の建築家で、震災直後から石巻でいろいろな活動を続けておられ、昨年の春にここ「日和キッチン」をオープンされました。こちらもご多分に漏れず被災建物で、それを東京の仲間と一緒にみごと改装し、石巻の食材を活かした料理を気軽に食べられるお店として生まれ変わらせたのです。天野さんは東京での仕事もあるので毎週末、夜行バスを利用して東京から石巻に通っておられるのですって! ここにも震災後の活動から東北大好きになっちゃった方が。

さてまだ時間も早いので、登米市に向かうのと まあ方角が近いので、大川小学校と長面地区の現状を見に行きました。

大川小学校はきれいな祭壇が整えられ、校庭跡には慰霊碑も建てられていますが、周囲になにもなくなった中に、立ち入りを制限するロープが張り巡らされた校舎がポツンと建っているだけ。それでも校舎に手を合わせる人の姿が絶えたのを見たことがない場所です。







現在、石巻市により検証委員会が立ち上げられてここで起きた大惨事の原因究明が進められていますが、様々なトラブルも起こって、真相究明には至っていないのが実情のよう。。ぬえの関心は、それ以外にもあって、先日ここで追悼のためのアコーディオンのコンサートが開かれたというニュースがありました。プロジェクトでは仮設住宅や仮設商店街では上演をしますが、いわゆる震災遺構では ほとんど上演をしたことがありません。やっぱり人的な被害が出た場所では、鎮魂や慰霊の意味がある能楽であっても、どうしてもイベントとして見られてしまうかな。。と ぬえ自身が躊躇していた、ということもあるのですが。。

が、これまで当地で出会った音楽家とか舞踏家の方の中には、意外に震災遺構の前で上演しておられる方がありますね。そういう画像が名刺に刷り込んであったり。。ちょっと違和感も覚える ぬえではありますが、またそれらの上演は必ずしも関係機関に許可を得ての上演ばかりでもないようですが。。 それでも大川小学校の前での能の奉納はしてみたいと考えています。今後関係者の方とお話しさせて頂こうかしら。。

ところがこの日、大川小学校の前でとんでもない事が。。

それは破壊された校舎を見ながら談笑する おばさんたち。ご遺族が聞いたらたちまち怒声が起こるような、ちょっとここでは書けないような冗談を大声で、笑いながら。。

。。風化、という言葉が頭をよぎりました。この人たちは慰霊の気持ちを持って訪れたのではなく、観光客だったのです。個人の人間性の問題かもしれないけれど、風化は悼みの気持ちにも起きるかもしれないです。今後ここがどうなっていってしまうのか。。最後に言っておきますが おばさん、神様は見てます。

大川小学校から海の方へ行って、長面地区にやって来ました。2年前ここに来たとき。。 知らぬ間にぬえの身に危険が迫ったらしく、東京に帰ってから ちょっとした騒動になりましたが。。その時の記事はブログからも削除してしまいましたし、みだりに人に話してもならない、と ある人から言われています。

それから月日は流れ、その人にも相談して、ようやく再びここを訪れることにしました。地区の大部分が地盤沈下で水没していた2年前と比べて、瓦礫の撤去も終わり、大規模にかさ上げ・埋め立てが行われていましたが、やはりあちこちに水たまり。。というか海が入り込んでいる、という様子は変わりない感じです。





驚いたのはこの車の残骸。未だにこういうものが残されていました。この地区は住民さんも激減しただろうし、街の再生には難しい問題もあるでしょう。復興までの道のりの遠さを感じる光景でした。



しかし内海のような長面浦の対岸、尾崎地区の方へ行ってみると、古いながら手の込んだ装飾のある神社があって、こちらでは住民さんとしばしお話させて頂きました。法印神楽のことを伺うと、たまたまこの日、北上川の対岸の吉浜地区でお祭りがあり、法印神楽も奉納されるだろう、とのこと。残念ながらそれを見るには時間がなく、長面を後にしました。

最後に柳津の虚空蔵尊さまに立ち寄って、5月に行う予定のワークショップの打合せ。

柳津虚空蔵尊は横山不動尊と同じく神仏混淆の痕跡をとどめて鳥居を持つお寺です。それにしても柳津虚空蔵尊さんの鳥居の壮大なこと! 奥様の杉田史さんと親しくお話しさせて頂きましたが、お寺カフェがあったりお寺としても面白い試みに様々取り組んでおられて、復興支援活動もかなり精力的に行っておられる方でした。

この日は5月のワークショップの打合せでしたが、秋には境内の野外で能を上演してみようか、などと夢がふくらむ良い機会だったと思います。

。。といってもここ、柳津虚空蔵尊さまでのワークショップも、もう3日後に迫りました! お寺の境内の様子などはそのご報告のときに詳しくご紹介したいと思っております。

お寺カフェ「夢想庵」で頂いた おそばとケーキ、激美味でした!!