ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

書道用品専門店

2010-02-12 10:56:30 | 能楽
昨日は 豆ぬえが1月に引き続いて二度目の子方を勤める『船弁慶』の申合がありました。まあ、豆ぬえは大過なく勤めることができましたが、少々直したい箇所も見つかり、まあ、催しはまだ1週間近く先のことなので、これからの稽古で修正は利くでしょう。

さて申合が昼過ぎに終わったので、新宿区にある書道用品の専門店に行って来ました。。とは言っても ぬえが書を嗜むわけではありませんで、じつは「経巻」を買いに行ったのです。

1月に 豆ぬえが子方を勤めさせて頂いた『海士』。この曲では子方が後シテから経巻を手渡されるのですが、今回つけられていた小書「懐中之舞」の場合は、子方は受け取った経巻を開いて読む型をする場合があるのです。この度はおシテの注文によって 豆ぬえはその型で勤めることになりました。さてそうなると稽古で経巻を使わなければなりません。なんせ 豆ぬえは未就学児童ですし、なんと言っても現代っ子ですから巻子本…つまり巻物なんて触ったこともありません。やはり稽古で巻子本にも慣れていてもらわないと舞台での失敗につながります…

もちろん師家にある経巻を稽古用に拝借するわけにはいかず、そのため稽古用には巻子「らしき物」を用意するのですが、ところが ぬえ、小道具の経巻も、稽古用に使う代用品も持っていません。そこで師家にある稽古用の経巻「らしき物」を拝借して 豆ぬえの稽古をすることにしました。

そうしたら…豆ぬえは稽古でしっかり…経巻を破ってしまいました! (O_o) まあ…稽古用の代用品もそろそろくたびれてきていて、紙が弱くなっていたことも事実なんですが、豆ぬえの扱い方が悪いのもまた事実でして…

事情を同門に話すと、なんとこの代用品の経巻は書道用具専門店で買ってきた「掛軸」なんだそう。お店の所在も教えてもらって、そうして昨日、申合が終わってからその書道用品店にてこの代用品の経巻を求めてきたわけです。ようするに弁償
です~ (T.T)

ところが初めて足を踏み入れた書道用品専門店で見た商品は興味深いものでしたですね~。所狭しと並べられた墨・硯・筆… 大きい物から小さい物まで、まあ、ありとあらゆる物が揃っています。四角い硯もあれば丸いものもあり…お値段も、もう、目が飛び出るようなものもあって、品のよしあしがわからない ぬえはその値段を見て、もう「何でやねん!」とベタなツッコミを入れるしか術がありませんでした~

面白かったのは、「墨磨り機」という機械が、今はあるんですね~。これは電動で墨を磨る機械で、モーターで回転する円形の硯? の上にアームで固定した墨を押しつけて自動で墨を磨る、というもの。をっ、ネーミングも凝っているぞっ。「墨磨職人」「自動墨磨機らくらく」…このへんまではご愛敬として、「墨磨機 るんるん」…なるほど。そして極め付きは「縦横無尽 たおやか」…ここまで来ると、もう何がなにやらわからない世界です。

こんなのも。「高野切」「和漢朗詠集」「恋路」「絶妙太閤」「神技」これらは筆の商品名です。筆の毛の原料も山羊・鼬・山馬というものから、果てはミンクなんてものまであるのですね。さらに…「墨美人」こちらは墨汁。「蛙」「天衣無縫」「森羅万象」これは固形の墨です。(*^。^*)

最も驚いたのは墨の高価なことで、7~8万円という墨もありました…がしかし。ふと見つけたひとつの墨は、金字で「比叡山 延暦寺」と書いてあります。なんとこれは比叡山の根本中堂に伝教大師・最澄の時代から灯り続ける「不滅の法灯」の火(当然でしょうが、その分灯ではありましょうが)によって採られた煤から作られた墨なのですって! こんなものまであるのねえ…ちなみにこちらは2万数千円というお値段でした。をっ、これなら手頃なお値段かも! …なんて考えた ぬえは俗人でありまするねえ…(・_・、)

ぬえがお訪ねした書道用品専門店→ キョー和