翌日、いつものように6時前に目覚めた。
カーテンを開けると朝日が眩しかった。
シャワーを浴び、早々に朝食に出る。
最近のビジネスホテルは効率一辺倒に作られているから、食堂と云ってもロビーの一角が簡単に仕切られているだけである。
簡単なメニューが用意されているだけだ。
パンとコーヒーと2つ、3つの料理を取り上げた。
部屋に戻り、神代植物園に行くか、井の頭公園に行くか迷ったが井の頭公園に行くことにした。
井の頭公園に行くには西武線是政駅から乗らねばならない。
是政駅は昨日渡った多摩川の橋を右折してすぐだと聞いていた。
それだったら もう一度妹に会っていこうと携帯電話を手にした。
その時である。携帯電話が鳴った。
妹からである。
「きょう、是政から電車乗るんでしょう」
「うん」
「それだったら家に寄って!朝食ぐらいして行って。きのう気づけばよかったのに・・・、馬鹿ね」
「俺もそう思って、お前に電話しようと電話を取り上げたところだ。今からホテルを出る」
「食事は終わった。旨いコーヒーでも用意いしておいてくれ」
昨夜、
「明日の夜は職場の仲間だった奴と会食する事になっている」
「昼間、井の頭公園と神代植物園で夕方まで時間を潰し、夜一杯やる予定だ」と説明してあった。
9時過ぎまで話題もなく他愛もない時間を過ごした。
「もう行くわ」
「お土産も用意してないけど後から送る。何がいい?」と妹。
私鉄駅までは10分足らずだった。夫婦で送ってきた。
(仲のいいことだ)内心可笑しくなったが、口には出さなかった。
是政駅は終点駅だが、方々で見てきたターミナルではない。
これより先、線路がないことで終点とわかる。折返し運転だ。
「お土産何がいい?」としつこい。
「俺はあまり食べたいというものがないから要らない」
「それより、府中競馬に遊びに来るから、それまで教えたストレッチの成果を出しておけよ」
「わからんわ。もう忘れた」
「バカ!」
電車が入ってきた。
駅員に
「井の頭公園に行きたいのですが、どういったらいいですか」
愛想の良くない50過ぎの駅員が応えた。
「吉祥寺で井の頭線に乗り換えて、井の頭駅で降りるといいです」
電車はすぐに発車した。
妹夫婦の小さな後ろ姿は、視界からすぐに消えた。
「元気でな」
両親も兄たちも他界して、ただひとり残る妹である。
電車はJR中央線武蔵境駅に着いた。
乗り換える。
人に尋ねることもなくJR中央線のホームに立った。
東京のこうした案内板の充実さは昔からだった。
吉祥寺駅に着く。
井の頭公園の看板が目につくので、不審に思い駅員を捕まえてたずねた。
「井の頭駅に行くよりもここで降りて、歩いて10分ほどで着きます。
そこが公園の中心に一番近いですから・・・」
丁寧に礼を言って標識に従って、ゆっくりと辺りを眺めながら歩いた。
やがて、公園に降りる階段が現れた。
階段を降りたところは高い木々に覆われた広い空間だった。
三々五々森林の木立の下で過ごす人たちの姿があった。
ふと、大木の根元を巡らしたベンチの歩きを歩こうとするあるき始めたばかりの幼児が目に入った。
幼児にに手を添える母親の姿が目に止まった。
しばし歩を止めて眺めた。
この橋を園の渡れば入り口。
園の入り口で、小学校4,5年生か、父親と代わる代わる写真を撮っている姿が、偶然カメラに入った。
「撮ってあげましょう」と近づいた。
怪訝な顔で子供は父親を見上げる。
若い父親が頻りに頭を下げながら、何かを言っているがわからない。
「チャイニーズ」と聞こえた。中国人なんだ。
「わかった」と片手を上げ、子供からカメラを預かり、二人並んだ写真を撮った。
父親はとても喜んで何度も頭を下げて離れていった。
紳士然とした柔和な表情に、外国人の面影はなかった。
ゲートを通ると正面は水生動物の檻が並んでいた。
水生動物?何がいるんだろうと覗いてみると、水辺に暮らす鳥ばかりであった。
10数枚撮ったが、ほとんど役立たずだった。
鳥たちを見終わり、ひと休みしょうと思っていたら「動物園」入り口とある。
前日は肌寒かったので、今朝は薄手の長袖シャツを着込んできた。
ところが、朝から暑い、少々、疲れ、喉も枯れて来ていた。
動物園は素通りすることにした。
と、目前に「うどん」の大きな幟。
躊躇することなく店内に入った。
郊外の里山を背にして暖簾が揺れるそんな小さな食堂であった。
中に入ると妙に雑然としていた。
それが窓の外の深い緑の木立と、樹間に見える池端に溶け込んでいて安堵感を覚えた。
700円の月見うどんを注文した。
うどんが出てくる間、壁にずらっと並んだ色紙をみる。
有名人だろうが何と書いてあるか読めやしない。
「菅直人」が目に止まった。
他にも幾人かの芸能人だの文化人の名前があったが忘れた。
うどんを啜っている間、若者が入ってくる。
大方は、カレーを注文して店頭の木蔭のテーブルに座る。
カレーもあるんだと思いつつ、みんな常連なのかと首をかしげながら店を出た。
店先に、大きな幟が立っていた。
「カレーライス」
”常連なんてそんなものいるはずはないじゃないか””俺も耄碌したな”
仰ぐ若葉が心地よかった。
木立の中を散策する。
これも森林浴か、ちと違うなと苦笑い。
ふと池之端の木立の下に本を読むひとりの外国人女性が目に止まった。
シルエットが妙に端正で美しい。
ヨーロッパの旅をしていたとき、公園や木立や、河の畔でこういう姿をよく見た。
文化の違いをしみじみ感じたものだった。
時計は13時半をまわっていた。
真夏の暑さに近い。
もっと歩きたかったが、引き上げることにした。
神代植物園は次の機会にしようとあきらめた。
吉祥寺駅からはJRの乗り継ぎで川崎駅に向かう。
東京の案内板は実にうまく出来ている。
世界一ではなかろうかと思った。
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カーテンを開けると朝日が眩しかった。
シャワーを浴び、早々に朝食に出る。
最近のビジネスホテルは効率一辺倒に作られているから、食堂と云ってもロビーの一角が簡単に仕切られているだけである。
簡単なメニューが用意されているだけだ。
パンとコーヒーと2つ、3つの料理を取り上げた。
部屋に戻り、神代植物園に行くか、井の頭公園に行くか迷ったが井の頭公園に行くことにした。
井の頭公園に行くには西武線是政駅から乗らねばならない。
是政駅は昨日渡った多摩川の橋を右折してすぐだと聞いていた。
それだったら もう一度妹に会っていこうと携帯電話を手にした。
その時である。携帯電話が鳴った。
妹からである。
「きょう、是政から電車乗るんでしょう」
「うん」
「それだったら家に寄って!朝食ぐらいして行って。きのう気づけばよかったのに・・・、馬鹿ね」
「俺もそう思って、お前に電話しようと電話を取り上げたところだ。今からホテルを出る」
「食事は終わった。旨いコーヒーでも用意いしておいてくれ」
昨夜、
「明日の夜は職場の仲間だった奴と会食する事になっている」
「昼間、井の頭公園と神代植物園で夕方まで時間を潰し、夜一杯やる予定だ」と説明してあった。
9時過ぎまで話題もなく他愛もない時間を過ごした。
「もう行くわ」
「お土産も用意してないけど後から送る。何がいい?」と妹。
私鉄駅までは10分足らずだった。夫婦で送ってきた。
(仲のいいことだ)内心可笑しくなったが、口には出さなかった。
是政駅は終点駅だが、方々で見てきたターミナルではない。
これより先、線路がないことで終点とわかる。折返し運転だ。
「お土産何がいい?」としつこい。
「俺はあまり食べたいというものがないから要らない」
「それより、府中競馬に遊びに来るから、それまで教えたストレッチの成果を出しておけよ」
「わからんわ。もう忘れた」
「バカ!」
電車が入ってきた。
駅員に
「井の頭公園に行きたいのですが、どういったらいいですか」
愛想の良くない50過ぎの駅員が応えた。
「吉祥寺で井の頭線に乗り換えて、井の頭駅で降りるといいです」
電車はすぐに発車した。
妹夫婦の小さな後ろ姿は、視界からすぐに消えた。
「元気でな」
両親も兄たちも他界して、ただひとり残る妹である。
電車はJR中央線武蔵境駅に着いた。
乗り換える。
人に尋ねることもなくJR中央線のホームに立った。
東京のこうした案内板の充実さは昔からだった。
吉祥寺駅に着く。
井の頭公園の看板が目につくので、不審に思い駅員を捕まえてたずねた。
「井の頭駅に行くよりもここで降りて、歩いて10分ほどで着きます。
そこが公園の中心に一番近いですから・・・」
丁寧に礼を言って標識に従って、ゆっくりと辺りを眺めながら歩いた。
やがて、公園に降りる階段が現れた。
階段を降りたところは高い木々に覆われた広い空間だった。
三々五々森林の木立の下で過ごす人たちの姿があった。
ふと、大木の根元を巡らしたベンチの歩きを歩こうとするあるき始めたばかりの幼児が目に入った。
幼児にに手を添える母親の姿が目に止まった。
しばし歩を止めて眺めた。
この橋を園の渡れば入り口。
園の入り口で、小学校4,5年生か、父親と代わる代わる写真を撮っている姿が、偶然カメラに入った。
「撮ってあげましょう」と近づいた。
怪訝な顔で子供は父親を見上げる。
若い父親が頻りに頭を下げながら、何かを言っているがわからない。
「チャイニーズ」と聞こえた。中国人なんだ。
「わかった」と片手を上げ、子供からカメラを預かり、二人並んだ写真を撮った。
父親はとても喜んで何度も頭を下げて離れていった。
紳士然とした柔和な表情に、外国人の面影はなかった。
ゲートを通ると正面は水生動物の檻が並んでいた。
水生動物?何がいるんだろうと覗いてみると、水辺に暮らす鳥ばかりであった。
10数枚撮ったが、ほとんど役立たずだった。
鳥たちを見終わり、ひと休みしょうと思っていたら「動物園」入り口とある。
前日は肌寒かったので、今朝は薄手の長袖シャツを着込んできた。
ところが、朝から暑い、少々、疲れ、喉も枯れて来ていた。
動物園は素通りすることにした。
と、目前に「うどん」の大きな幟。
躊躇することなく店内に入った。
郊外の里山を背にして暖簾が揺れるそんな小さな食堂であった。
中に入ると妙に雑然としていた。
それが窓の外の深い緑の木立と、樹間に見える池端に溶け込んでいて安堵感を覚えた。
700円の月見うどんを注文した。
うどんが出てくる間、壁にずらっと並んだ色紙をみる。
有名人だろうが何と書いてあるか読めやしない。
「菅直人」が目に止まった。
他にも幾人かの芸能人だの文化人の名前があったが忘れた。
うどんを啜っている間、若者が入ってくる。
大方は、カレーを注文して店頭の木蔭のテーブルに座る。
カレーもあるんだと思いつつ、みんな常連なのかと首をかしげながら店を出た。
店先に、大きな幟が立っていた。
「カレーライス」
”常連なんてそんなものいるはずはないじゃないか””俺も耄碌したな”
仰ぐ若葉が心地よかった。
木立の中を散策する。
これも森林浴か、ちと違うなと苦笑い。
ふと池之端の木立の下に本を読むひとりの外国人女性が目に止まった。
シルエットが妙に端正で美しい。
ヨーロッパの旅をしていたとき、公園や木立や、河の畔でこういう姿をよく見た。
文化の違いをしみじみ感じたものだった。
時計は13時半をまわっていた。
真夏の暑さに近い。
もっと歩きたかったが、引き上げることにした。
神代植物園は次の機会にしようとあきらめた。
吉祥寺駅からはJRの乗り継ぎで川崎駅に向かう。
東京の案内板は実にうまく出来ている。
世界一ではなかろうかと思った。
井の頭公園に行った
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