地域循環共生圏概論 ㊷

2022年03月16日 | 防災と琵琶湖


作成日:2022.3.16|更新日:2022.3.
地域循環共生圏概論 ㊷
□ 地盤強化と地震防災⑦

 今回は「彦根愛知犬上地域 新ごみ処理施設整備基本
計画」の後半部分の考察を行い、 「北九州市日明工場
建替事業 公共事業事前評価調書」の考察に移る。
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第5章 公害防止計画・焼却残渣処理計画
廃棄物処理施設は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法
律」に規定されている“施設の技術上の基準”に適合す
るとともに“施設の維持管理の技術上の基準”に基づき
適切に運営管理されなければならない。これと同時に、
公害防止および環境保全にかかる関係法令の規制を受け
施設立地場所に応じて、規制基準(公害防止基準)をう
けることとなる。

5.1 公害防止項目の設定
(1)排ガス
  1) ばいじん ばいじんの排出基準(総理府令第 27
  号 1998 年平成 10 年 4 月 10 日付)は施設の種
  類と規模によ り定められている。集じん器入口の
  ばいじん濃度は、炉の構造や運転条件(焼却負荷、
    空気比等) によって変動するが、連続炉では通常
  2~5g/m3 N であるので、基準達成のためには集じ
  ん器の設備 は不可欠である。また、炉構造等の工
  夫により、集じん器手前でばいじんの一部を除去す
  ることは、 集じん器の負荷低減に有効である。 集
  じん装置には、ろ過式集じん器(バグフィルタ)、
  電気集じん器、機械式集じん器がある。また、処理
  ガス温度については集じん器入口において、「ごみ
  処理に係るダイオキシン類発生防止等 ガイドライ
  ン」では 200℃未満、「廃棄物処理法」ではおおむ
  ね 200℃以下とするよう定められている。

 2) 塩化水素・硫黄酸化物 ごみ焼却施設の排ガスに
  含まれる酸性ガスとして、塩化水素と硫黄酸化物が
  ある。塩化水素の排出基準は、残存酸素濃度 12%
  換算値で 700mg/m 3 Nであり、これは約 430ppm に
  相当する。ごみ焼却施設から排出される塩化水素濃
  度は、ごみ質によって変化する。発生原因物質は主
  と して塩化ビニール系プラスチックと考えられる
  が、食塩等の無機塩化物からも塩化水素が発生する
  ので、分別のみで排出基準を大幅に下回ることは難
  しい。 硫黄酸化物の排出基準は、いわゆる K 値規
  制で行われる。これは、それぞれの地域ごとに定め
  られるK値と、施設の有効煙突高さとから排出基準
  を算出する方式で、煙突による拡散効果を考慮した
  規制方式である。排出基準の算出式はサットンの拡
  散式を基礎としている。ごみ焼却排ガス中の硫黄酸
  化物濃度は、通常 20~80ppmであり、重油(低硫黄
  重油で 100~300ppm)や石炭(500ppm 以上) に比べ
  ると低い。また、飛灰中には結晶性の硫酸塩(Na2SO4、
  K2SO4等)が 5%以上(S04換算)含まれて いる。一方、
  ごみ中の硫黄分は全硫黄で 0.05~0.2%、揮発性硫
  黄が 0.03%程度である。これらの ことはごみ中の
  硫黄分の半分以上が主灰および飛灰中に残っており、
  排ガス中の硫黄酸化物のかな りの割合が、炉内お
  よびガス冷却部でアルカリ性ばいじんと反応してい
  ることを示している(Na20 +/202→Na2SO4)。

  なお、硫黄酸化物は S02(二酸化硫黄)と SO3(三酸
  化硫黄)とからなるが、ご み焼却排ガスでは集じん
  器出口で、S02が 98%以上占めている。

 3) 窒素酸化物 窒素酸化物の排出基準(第 5 次規制
  1983 年連続炉)は、残存酸素濃度 12%換算値で
  250ppm である。排ガス中の窒素酸化物の大半は一
  酸化窒素(NO)であり、二酸化窒素(N02)の割合は数
  %以下である。ごみ焼却排ガス中の窒素酸化物濃度
  は通常 100~150ppm 程度であり、排出基準の 250
  ppm超をえる可能性は小さい。窒素酸化物排出の抑
  制には燃焼制御による方法が有効で、低酸素燃焼と
  炉温 管理等により、平均濃度を 100ppm 以下とし
  ている例も珍しくない。一方、窒素酸化物の規制に
  は 都道府県の上乗せ排出基準や総量規制基準もあ
  り、一般の排出基準 250ppm より厳しい規制値が適
  用されることもある。これに対応するために燃焼制
  御と併用してアンモニアや尿素を炉内に吹込む無触
  媒脱硝法や排ガス処理設備でアンモニアを使用した
  触媒脱硝法が用いられることもある。燃焼によって
  生成する窒素酸化物は、空気中窒素の酸化によるサ
  ーマルNOx、燃焼中窒素分の酸化によるフューエル
  NOxに大別される。ごみ焼却の場合は発電用ボイラ
  ーに比べ燃焼温度が低いのでサーマルNOxの発生は
  少なく、7~8 割以上がフューエル NOxであるとさ
  れている。ごみ中の窒素分は約 0.5%ある。したが
  ってこれが全部 NOx に転換したとすると、排ガス
  中の窒素酸化物濃度は計算上 1,000ppm以上になる。
   これまで、焼却炉内の自己脱硝反応(ごみ熱分解
  時に発生する NH3等の還元性物質と NOx の反応)に
  よって、実炉における窒素酸化物濃度は、上述の値
  まで低くなってきた。この反応を促進する第一要素
  は、低酸素管理することである。しかしながら、低
  酸素運転は一酸化炭素やダイオキシン類の発生増加
  の要因となるため燃焼温度の維持や充分な ガスの
  混合撹絆を行うなど運転管理上留意する必要がある。
 4) ダイオキシン類 1990 年(平成 2 年)12 月に「ダイ
  オキシン類発生防止等ガイドライン」(旧ガイドライ
  ン)が厚生省 (当時)において策定され、当時におい
  て技術的に実施可能な限り、ダイオキシン類の発生
  防止等を効率的に推進するという観点から総合的な
  対策が取りまとめられた。その後、1997 年(平成
  9 年)1 月「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止
  等ガイドライン」(新ガイドライン)が「ダイオキシ
  ン 類削減プログラム」という副題にて策定され、
  1997 年(平成 9 年)8 月に廃棄物処理法に基づく政
  省令の改正が行われ、ダイオキシン類削減のための
  法的規制措置が 1997 年(平成 9 年)12 月から施行
   された。その後、「ダイオキシン類対策特別措置法
  」が 1999 年(平成 11 年)7 月 16 日公布され、2000
  年(平成 12 年)1 月 15 日施行された。 廃棄物焼
  却炉は法の特定施設に位置づけられ、施行規則で大
  気排出基準が定められている。ダイオキシン類対策
  の基礎となる我が国の耐用 1 日摂取量(TDI)につい
  ては、1996 年(平成 8年)l0 pg-TEQ/kg/dayとする
  厚生省の中間報告(提案)がまとめられた。その後、
  世界保健機関(WHO)専門家会合の結論を踏まえ、環
  境庁および厚生省の共同作業による見直しが行われ、
  1999 年(平成11年)6月のダイオキシン類対策関係閣
  僚会議で 4pg-TEQ/kg/dayとすることとなり、「ダイ
  オキシン類対策 特別措置法」の基本とすべき基準と
  して定められた。ダイオキシン類については連続測
  定できないため、代替的に、燃焼の状態を表す「一
  酸化炭素」を連続測定し常時監視が行われる。
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※ 既に多数のダイオキシン類長期サンプリング装置を
導入しているベルギーでは2000年1月にダイオキシン類
の連続的測定監視が法制化されている。2週間に1検体
の採取期間で連続的に排ガスの採取を行い、排出基準の
0.1ng-TEQ/m3Nを超えないように焼却炉の燃焼管理を行
うよう法律にうたわれている。
同様にドイツでも利用可能な最良の技術(BAT:Best
Available Technology/Techniques)を導入し燃焼施設
から排出されるダイオキシン類濃度を連続的に監視する
事を施設管理者の責務として「17. BImSchV」という法
律の中に明記している。 この他、イギリス、フランス
などの欧州諸国もベルギーやドイツのこのような動きに
同調する動きを見せ、特にフランスでは2010年8月3日付
の新しい法令が発布され、一般廃棄物焼却施設における
ダイオキシン類の連続採取が2011年11月 1日から法的要
求事項として法制化された。移行期間は、2011年11月11
日から2014年7月1日となっており、現在は多くの燃焼施
設でアメサのような長期モニタリングを行うための装置
の設置作業が進められている。
下記に続測定装置事例を記載。
 ■主な仕様
 製造会社:日立製作所 計測器グループ
  測定対象:ダイオキシン前駆体(クロロフェノール)
  測定方式:大気圧化学イオン化法、三次元四重極質量
      分析法
  検出限界:0.5μg/m3(N)(トリクロロフェノール)
  計測時間:1分以内(連続測定)
  周囲温度:-5~40℃
  消費電力:AC100V 4kVA,3相AC200V 3kVA
  外形寸法:1,600(W)x1,200(D)x2,100(H)mm
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 5) 水銀等 「大気汚染防止法」施行規則の一部改正(2
  016 年(平成 28 年)9 月 26 日)が行われ、水銀等
  の大気排 出規制値が定められた。施行日は、2018
  年(平成 30 年)4 月1日となっている。 規制対象
  となる施設(水銀排出施設)の排出基準値は、ガス状
  水銀および粒子状水銀の合計した全水銀30μg/㎥N
  の量であることとなっている。また、経過措置が設
  けられており、既存施設の水銀排出施設は、50μg
  /㎥Nの量が適用される。水銀排出者は、環境省令で
  定めるところにより、当該水銀排出施設にかかる水
  銀濃度を測定しその結果を記録し、保存することが
  定められた。測定は、全水銀(ガス状水銀および粒
  子状水銀)を対象として、バッチ測定方式で行い、
  試料採取・分析方法は、排出ガス中の水銀測定法(
  2016年(平成 28年)環境省告示第94 号)で行うこと
  となる。ごみ焼却排ガス中の水銀排出濃度は、ダイ
  オキシン類対策により普及したろ過式集じん器と揮
  発性物質を抑制する乾式・湿式システムの組合せに
  よる施設において平均 10μg/m3N以下程度であり、
  30μg/m3N未満であると考えられる。排出規制に対
   応するためには ろ過式集じん器、湿式洗煙設備お
    よび活性炭処理等が有効とされている。

(2)悪臭 施設から発生する悪臭は「悪臭防止法」お
    よび関連条例で定める規制基準値以下でなければな
    らない。悪臭の規制と規制基準値は、「悪臭防止法」
  では、他の公害規制法と異なり、特定施設制度をと
  っていない。また、規制を行う地域や規制基準を、
  都道府県知事が市町村長の意見を聴取した上で定め
  るよう規定している。すなわち、公害としての悪臭
  問題は自然的、社会的条件により、住民の生活環境
  に対する影響度が変化するので、地域毎に規制を行
  うよう配慮しているものである。したがって、当該
  施設がどのような規制を受けるかについては、地域
  ごとの知事告示によらなければならないが、1995年
  (平成7年)に「悪臭防止法の一部を改正する法律」が
  公布され、法では規制基準の内容(種類、方法、範
  囲等)について、従来の物質濃度規制に加え嗅覚測
  定法による規制方式が導入された。物質濃度規制は
  特定の物質を排出する工場、その他の事業所等に対
  しては効果的であり、引き続き規制の基本とされる
  が、嗅覚測定法による臭気指数規制は、発生源から
  複数の悪臭の原因となる物質が排出され、これらが
  相加・相乗される等により、人の嗅覚に強く感じら
  の多種多様な物質への実効性のある対応を図るため
  のものである。更に1999 年(平成 11年)には「悪臭
  防止法の一部を改正する法律」が公布され、嗅覚測
  定法による臭気指数規制にかかわる気体排出口の規
  制基準の設定方法が定められた。なお、滋賀県では
  規制を行なう地域や規制基準の定めについて、各市
  町に権限委譲されている。建設候補地のある彦根市
  では臭気指数規制が採用されており、敷地境界、気
  体排出口、排水それぞれについて以下の規制基準が
  設けられている。
 1) 敷地境界の地表における規制基準(悪臭防止法第
  4 条第 2項第 1 号) 環境省令で定める範囲内(施
  行規則において大気の臭気指数が 10 以上 21以下
  と定められている)において、大気の臭気指数の許
  容限度として定められるものである。
 2) 排出口における規制基準(悪臭防止法第 4 条第2
  項第 2号) 敷地境界における許容限度を基礎として、
  排出口の高さに応じて、すなわち拡散を考慮して定
  められ、臭気排出強度(排出気体の臭気指数及び流
  量を基礎として算定される値)または排出気体の
  臭気指数の許容限度として定められるものである。
 3) 排水の規制基準(悪臭防止法第 4 条第 2 項第 3
  号) 敷地境界における許容限度を基礎として、排出
  水の臭気指数の許容限度として定められるもので
  ある。(3)騒音・振動 「騒音規制法」と「振動
  規制法」では、共に特定施設制度をとっており、特
  定施設を有する特定工場から発生する騒音および振
  動は、敷地境界において、それぞれの法律および
  条例で定める規制 基準値以下でなければならない。
  特定工場に適用される規制基準は、環境大臣が定
  める範囲内にいて、知事が地域を指定して定めるこ
  ととされている。環境大臣が定める規制基準の範囲
  は、敷地 境界における騒音レベル、振動レベルと
  して、区域や時間帯別に、定められている。また、
  一般的に、市町村等がその地域条件に応じて、法 
  と別の見地から、条例により規制することも可能
  であるが、滋賀県ではもとより各市町に権限委譲さ
  れている。新ごみ処理施設に設置が考えられる特定
  施設としては、次のものがある。 (a) 騒音規制法
  にかかる特定施設 … 原動機定格出力7.5kW以上の
  空気圧縮機および送風機 (b) 振動規制法にかかる
  特定施設 … 原動機定格出力 7.5kW 以上の圧縮機

(4)主灰・飛灰(特別管理一般廃棄物) 焼却残さのう
  ち、焼却炉下部から排出される主灰は「ごみ処理施
  設性能指針のうち焼却残さに係 る事項」に定める
  熱しゃく減量に適合しなければならず、一般に埋立
  てによる最終処分が行われてきた。ごみ焼却施設に
  おける主灰の熱しゃく減量は、一般廃棄物処理施設
  の維持管理の技術上の基準で定められ、また、性能
  指針において、施設の炉型式に応じてそれぞれの値
  が定められているので、施設の運営にあたっては、
  日常の保守整備と適正な管理によって性状を維持し、
  最終処分において環境衛生上の支障がないようにし
  なければならない。焼却残さのうち、集じん装置や
  煙道各部で捕集された飛灰は、1992年(平成4年)7
  月から施行された法改正により、特別管理一般廃棄
  物に指定され、分離排出、分離貯留並びに重金属類
  にかかる 溶出基準値に適合するための中間処理が
  義務付けられた。特別管理一般廃棄物は、処分又は
  再生の方法として環境大臣が定める方法により行
  うこととされており、次の(a)~(e)が定められてい
  る。 (a) 溶融固化法 (b) 焼成法 (c) セメント固
  化法 (d) 薬剤処理法 (e) 酸その他溶媒による安定
  化 2000年(平成12年)1月に「ダイオキシン類対策特
  別措置法」が施行され、同時に「廃棄物の処理及び
  清掃に関する法律」も改正され、一般廃棄物焼却施
  設から排出されるばいじんおよび焼却灰その他燃え
  殻は、ダイオキシン類含有濃度が基準値(3ng-TEQ/g)
  を超えたものは特別管理一般廃棄物と定められ、処
  分を行う場合は基準以内となるよう処理しなければ
  ならないとされた。

(5)排水施設から公共用水域へ排出される水は、「
  水質汚濁防止法」および関連条例で定める排水基準
  値以下、また、公共下水道に排除される水にあって
  は「下水道法」および関連条例で定める水質基準値
  以下でなければならない。排水の規制と排水基準値
  は、火床面積が 2㎡以上またはごみ処理能力が 200
  kg/h以上のごみ焼却処理施設は、「水質汚濁防止法
  施行令」により、「水質汚濁防止法」および「下水
  道法」の「特定施設」とされており、排水が公共用
  水域に排出される場合は、「水質汚濁防止法」の適
  用を受ける。(特定施設そのものからの排水のみで
  なく、事業場から排出される水全般について適用さ
  れることに注意を要する。)また、排水が下水道に
  排除される場合は「下水道法」の適用を受ける。排
  水処理は、ごみ焼却施設にとって、排ガス処理とな
  らび重要な位置を占めている。ごみ焼却施設では様
  々な用途で水を用いるので、これらの排水の処理を
  必ず考えねばならない。ごみ焼却施設で処理対象と
  なる排水には、次のようなものがある。(a) ごみピ
  ット排水 (b)洗煙排水 (c)灰出し排水 (d)水噴射排
  水 (e)純水(軟水)装置排水(f)ボイラー排水(g) 洗
  車排水 (h)床洗浄排水(i) 生活系排水 (j)スラグ冷
    却水(灰溶融施設設置の場合)
 
   個々の排水の量と水質は、ごみ質や施設の種類、
  水使用システムおよび運転状況によって大きく変動
  する。処理方法については弾力性のあるシステムを
  計画することが重要である。例えば、完全燃焼を行
  い主灰の質を高めることにより、灰出し排水の生物
  処理は不要となり得るし、再利用率を高めることが
  できるので、排水量および使用水量を減らすことが
  できる。排ガス冷却を水噴射設備で行う場合は、一
  定処理した後の排水は全量ガス冷却水として利用可
  能なので、クローズド化を図ることもできる。また、
  灰出設備に灰押出機を用いることにより、灰出し排
  水の量を著しく少なくできる。しかしこのような場
  合、塩類は全て主灰に残留することになるので、埋
  立地における浸出水中の塩問題が生ずることも考え
  られる。また、排水処理汚泥として固定した排水中
  の有害物の行方も考慮することが必要である。

5.2 公害防止方式の整理
以下に、5.1で設定した各公害防止項目について、公
害防止方式を整理する。一般的に、除去性能の よい設
備は、設備費・維持管理費が高価なものとなるため、適
切な機種の選定が必要である。 
(1)排ガス対策
 1) ばいじん除去
  排ガス中のばいじんを除去するため、集じん器を使
 用する。ごみ焼却施設のばいじんの性状は、
 (a) 吸湿性が大きく、湿気を吸って冷えると固着しや
  すい。
 (b) かさ比重が 0.3~0.5 と小さく軽い。
 (c) 粗いばいじんは煙道やガス反転部で沈降するので、
  集じん器入口の平均粒径が小さい。
 (d) HCl・SOx 等がガス中に含まれるため、機器の防食
  上、十分注意を要する。このような条件に適合する
  集じん器としては、ろ過式集じん器・電気集じん器
  およびマルチサイクロン等があるが、ダイオキシン
  類削減という観点により、ろ過式集じん器が主流に
  なっている。後述する塩化水素、硫黄酸化物、ダイ
  オキシン類の除去も考慮した場合、排ガス中に吹き
  込んだ消石灰や活性炭等がろ布上で排ガスと効率よ
  く接触し集じん性能が向上するため、バグフィルタ
  の方が電気集じん器より微粒子について高い集じん
  効率を持ち、有害物質の除去率が高い。(ろ過式集
  じん器の場合、排ガス性状(基準値)の目安としては、
  0.01 g/㎥N 程度とされている。) 以上のことから、
  新ごみ処理施設の熱回収施設では「ろ過式集じん器
  (バグフィルタ)」を採用する。なお、リサイクル
  施設の集じん設備については、ろ過式集じん器や機
  械式集じん器を組み合わせて適切な方式を計画する
  こととする。

(注)集じん効率は粉じんの粒径分布によるので、ここ
  では一般の場合の値を挿入した。

□ ろ過式集じん器 
 ろ過式集じん器はバグフィルタとしてよく知られ、近
年の新設炉では使用実績が最も多い。以下にろ過式集じ
ん器の一般的な構造図を示す。


原理:ろ過式集じん器におけるばいじんの捕集機構は、ろ
布(織布・不織布)表面に堆積した粒子 層で排ガス中の
ばいじんを捕集することによる。ろ布にばいじんが堆積
することにより圧力損失が上昇した場合、払い落とし操
作によって堆積したばいじん(集じん灰)を払い落とし、
再度ろ過を継続する。この際、ろ布の織目もしくは表面
層に入り込んだ粒子は払い落とされずに残る。この残留
粒子層は第一次付着層と呼ばれ、この第一次付着層によ
って新たなばいじんの捕集を行う。ろ布には、ガラス繊
維織布やPTFE、PTFE+ガラスの混合・ポリイミド(耐熱
性・難燃性を備えた高分子化合物)などの繊維を使用し
た不織布を使用することが多い。また、ダイオキシン類
や窒素酸化物の除去を目的に触媒成分を添加したろ布や
集じん灰の剥離効果をよくするためにPTFEを表面に被膜
させたろ布が使用される例もある。ろ布の選定に際して
は、排ガスおよびばいじんの性状(排ガス温度・水分量酸
性成分等)を十分考慮して、また有害ガス除去性能も含め
た上で適切なろ布を選定する必要がある。

 2) 塩化水素・硫黄酸化物除去
  排ガス中の有害ガスである塩化水素(HCl)・硫黄酸化
  物(SOx)は、アルカリ剤と反応させて除去する。 除
  去の方式は、大別すると乾式法と湿式法とに分類さ
  れる。乾式法とは、反応生成物が乾燥状態で排出さ
  れるもの、湿式法とは、水溶液にて排出されるもの
  をいう。なお、HCl の除去に伴って SOxも除去され
  るが、一般的にSOxの除去率はHClに比べ低いので注
  意が必要である。以下に、各方式の比較を示す。下
  表の比較により、塩化水素・硫黄酸化物については
  「乾式法」を採用する。 


□ 処理方式 塩化水素・硫黄酸化物除去(乾式法) 
乾式法は炭酸カルシウム(CaC03)、消石灰 (Ca(OH)2)
や炭酸水素ナトリウム (NaHC03) 等のアルカリ粉体をろ
過式集じん器の前の 煙道に吹込み、 反応生成物を乾燥
状態で回 収する方法が主である。乾式法は湿式法に 較
べて薬剤の使用量が多い(供給した薬剤 のうち一部は未
反応のまま排出される)と いう欠点はあるが、次に示す
ような多くの 利点があるため、実用例が多い。(図 乾
式法(ろ過式集じん器方式)の例 :省略)
【特徴】
a) 排水処理が不要である。
b) 装置出口の排ガスの温度を高温に維 持できるので、
 湿式法に比べてガス 再加熱に要するエネルギーを抑え
 ることができ、発電設備を備える場合には発電効率が
  高くなる。また、白煙防止装置を設置しなくても、煙
  突から白煙が生じにくい。
c) 腐食対策が容易である。最近では乾式法も性能面で
 の改善が進み、湿式法と較べて性能的に遜色の無い機
 種も実用されるようになっている。

□ 塩化水素・硫黄酸化物除去(湿式法) 
水や苛性ソーダ(NaOH)等のアルカリ水溶液を吸収塔に噴
霧し、反応生成物を NaCl、Na2SO4 等の溶液で回収する
方法。NaOH 等のアルカリ溶液を吸収塔内で循環運転し
HCl、SOx を気液接触により吸収。反応生成物は溶液と
して回収し、排水処理装置で処理。吸収塔の形式はスプ
レ-型・トレー型・ベンチュリ型・流動層型・充填塔型
等がある。反応機構としては、排ガス中に二酸化炭素(
C02)が多くあり、NaOH は C02 を吸収して炭酸ソーダ
(Na2C03)として溶液中に溶解し、この Na2CO3が強酸で
ある HCl、S02と反応して C02を放出して NaCl・Na2HCO3・
Na2S04などが生成する。排ガス中には 02が多く存在す
るのでほとんど NaCl・ Na2SO4の形態で排溶液中に含ま
れる。
循環液は HCl、S02を吸収する運転により塩濃度が増え
ることになるので、一般的に排水処理設備の兼ね合いで
循環塩濃度を 3%~15%とする。本方式は除去率が高く、
Hgや As等の重金属類も高効率除去が可能で HClやS02は
15ppm以下にできる。排ガスは増湿冷却されて水分飽和
ガスとなるので、白煙低減が必要となり、除湿・再加熱
のプロセスが必要となるが、除湿用循環水の冷却にはエ
アフィンクーラー等によ り大気中に水滴が飛散しない
密閉系の装置とする必要がある。湿式法は排水処理設備
や塩乾固設備等プロセスが複雑になる欠点がある。更に
吸着液の循環使用によってダイオキシン類が濃縮するお
それがあり、廃液の処理には注意が必要である。(構成
図は省略)

□ その他の乾式法 
(ⅰ)脱硝ろ過式集じん器 脱硝ろ過式集じん器はろ布に
 触媒機能を持たせることによって、NOx をはじめ有害
 成分を 一括除去しようとするものであり、この際、
 ろ過式集じん器の上流側に消石灰および NH3を排ガス
 中へ噴射する。触媒化したフィルタ表面上に形成され
 るダスト堆積層により、ばいじん・HCl ・SOx・ダイオ
 キシン類・水銀を含む重金属類などを除去し、排ガス
 中に注入したNH3とフィルタ中の触媒でNOxを除去する。 
(ⅱ)活性コークス法  本方式は、活性炭とコークス
 の中間の性能を有する吸着材である活性コークスをNOx
 とNH3による脱硝反応において触媒として使用する方法
 で、この活性コークスはダイオキシン類や水銀等の低
 沸点有害物質を吸収除去する能力もある。
(ⅲ)天然ガス再燃焼法  本方式は、炉内に排ガス再循
 環とともに天然ガスを吹込み、最小の過剰空気率でCO
 その他の未燃物の発生を抑えながらごみを完全に燃焼
 させて、NOx等ごみ燃焼に直接関係する大気汚染物質
 を低減させるものである。

 4) ダイオキシン類発生抑制・除去
  ダイオキシン類は、COや各種炭化水素(HC)等と同様
 に未燃物の一種であるので、完全燃焼することにより、
 かなりのダイオキシン類を抑制することができる。た
 だし、排ガスの冷却過程でダイオキシ ン類の再合成
 (denovo synthesis)がある。これは集じん器の運転温
 度と密接な関係にあって、温度が高いほどダイオキシ
 ン類の排出濃度が高くなる傾向にある。排ガス中のダ
 イオキシン類は飛灰に吸着された状態や、ミスト状の
 ほか、ガス相として存在する。排ガス処理過程におけ
 るダイオキシン類の低減化・分解などの抑制技術につ
 いて、下表に比較を示す。設備費・運転費が低く抑え
 られ、採用例も多いことから、ダイオキシン類につい
 
ては活性炭吸着(バグフィルタに活性炭吹込み)を採
<用する。 


□ 処理方式:活性炭・活性コークス吹き込み濾過式集
  塵器(乾式吸着法)
【概要】排ガス中に活性炭あるいは活性コークスの微粉
を吹込み、後置のろ過式集じん器で捕集す るシステムで
ある。 活性炭は泥灰・木・亜炭・石炭から作られる微細
多孔質の炭素で表面積は活性炭 1g 当たり 600~1,200m2
(普通 1,000m2 程度)である。活性コークスは活性炭に
比べ賦活度が低く、表面積も 150~400m2と小さく、吸着
性能は劣るが安価であることから経済性は高い。活性炭
および活性コークスによるダイオキシン類の除去メカニ
ズムは明らかでないが物 理吸着と考えられる。排ガス中
のダイオキシン類は適当な蒸気圧を持っていることから、
吸 着除去が可能であり、吸着の一般特性は低温である程、
吸着性能が向上する。活性炭・活性コークス粉末の排ガ
スへの吹込み方法には、以下の 2 つがある。
① 活性炭、活性コークス単独吹込み
② 消石灰等の他の粉体との混合吹込み
単独吹込み法は、処理排ガス量 1m3あたり、50~200mgを
定量的かつ連続的に吹込む方法であり、ダイオキシン類
との接触を最大限に活用できる位置に吹込むことが重要
である。また、活性炭・活性コークスへの吸着を推進さ
せるためにも、排ガスの温度が極力低くなった位置が好
ましく、排ガス中における滞留時間の確保と、混合が十
分になされる位置に吹込むべきである。活性炭・活性
コークスの吹込み方法としては、消石灰等の粉体吹込み
と同様のブロワによる空気輸送が一般的である。排ガス
中への撹絆効果を期待して、排ガス流速より速い速度で
の吹込みが望ましいが、硬度が高いため輸送配管の摩耗
には注意を払う必要がある。混合吹込み方式は、消石灰
や反応助剤等と活性炭との混合剤を吹込む方法である。
その他、低コストでのダイオキシン類の除去を目的とし
た、活性炭・活性コークスの代用品の研究も進められて
いる。
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□ ダイオキシンの毒性とは
一部にダイオキシンが有毒であるという根拠が科学的で
はないとする論議がある。セベソでのダイオキシン類暴
露事故においては、当日の家畜大量死、翌年の流産率の
急増、女子出生への偏りなどが報告されたものの、事故
直後では人間の死者と奇形出産が出なかった事から、対
人間無毒説の根拠とされる。また、当初はダイオキシン
の高い急性中毒性について議論されていたが、いつの間
にか慢性毒性や発がん性に話がすり替わっているという
ような、研究者の非科学的態度もダイオキシンが有毒で
あるという論への懐疑的要因である。ダイオキシン類の
毒性発現機序は低濃度ではおもにアリール炭化水素受容
(arylhydrocarbon receptor)と結合することで発現
すると考えられている。ダイオキシン類とアリール炭化
水素受容体との親和性は種差があることが知られており、
ヒトのアリール炭化水素受容体とダイオキシン類との親
和性は他の動物に比べ低いことから、ヒトがダイオキシ
ン類の毒性について感受性の低い根拠の一つになってい
る。しかし実験動物では進んでいるものの、ヒトにおけ
る発癌性・内分泌攪乱作用とアリール炭化水素受容体の
役割について詳細には判明していない。一方、アリール
炭化水素受容体を介さない毒性発現も存在すると考えら
れており、おもに高用量での毒性発現と関係していると
考えられている
。実際にダイオキシンが毒殺目的で人間
に大量に与えられた事例があり、有名なところではウク
ライナ大統領候補だったヴィクトル・ユシチェンコの毒
殺未遂事件がある
。しかし、皮膚に湿疹などの異常がで
たが、ダイオキシンの高い急性中毒性については、否定
される結果になっている。(出典:jp・wikipedia)
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この項つづく

【エピソード】


□ 滋賀に適した再生可能エネルギーとはⅡ

【オール水力システム】



3Dプリンタ適用ピコ水力発電レンタルサービス
 水力発電は、日本国内では明治時代から導入が進み、
国産の再エネとしてさまざまな方式が存在していました
が、その多くはダムを伴う大規模な発電向けの高流量・
高落差な環境に適したもの。一方、低落差・低流量な環
境での発電は、地域の住民にとって適した、最も身近な
水源として活用できるものでありながら、適応可能な方
式がほとんどありませんでした。
  地方自治体では、地域政策に必須である防災対策や脱
炭素化推進のため、電力の地産地消の取り組みが始まっ
ており、従来の電力会社による大規模集中型の発電とは
異なる、小規模分散型、オフグリッド、マイクログリッ
ドなどの電力供給方法の活用を模索。現在普及している
太陽光、風力以外の再エネの一つとして、日本の豊富な
水流環境を生かした小水力発電が注目を集めています。
 水力発電は、日本国内では明治時代から導入が進み、
国産の再エネとしてさまざまな方式が存在してきました
が、その多くはダムを伴う大規模な発電向けの高流量・
高落差な環境に適したもの。地方自治体では、地域政策
に必須である防災対策や脱炭素化推進のため、電力の地
産地消の取り組みが始まり、従来の電力会社による大規
模集中型の発電とは異なります。


 3月10日、株式会社リコーは、再生可能エネルギー(
再エネ)の活用および電力の地産地消の推進を目指し、
少ない水量でも発電可能でメンテナンスの手間が少ない
ピコ水力発電のレンタルサービス「LIFEPARTS(ライフ
パーツ)」を開始。本サービスは、リコーの新規事業創
出の取り組み「TRIBUS(トライバス)」のなかで、同社
々内チーム「WEeeT-CAM(ウィットカム)」が提案され
リコーの強みである3Dプリンターを活用して独自形状の
水力発電用プロペラを作成し、工場排水や地域の用水路
などでの再エネ活用促進を目指すとのこと。また、再エ
ネへの理解を深め、活用方法を検討してもらうため、地
方自治体や教育機関向けに、再生プラスチックを用いた
ピコ水力発電機づくりのワークショップを開催するサー
ビスも同時に開始。リコーは、「LIFE PARTS」の取り組
みを通じ、電力の地産地消による脱炭素型・循環型社会
の実現を目指し、地域の魅力を高め、地方創生を推進し
ていきたいとのことです。
 この様に、小規模分散型水力発電を3次元プリントで
つくるという発想はなかったし、「オール水力システム」」
も構想していなかったので、虚を突かれたというか、面
白いということで紹介させていただきました。
 四月もスケジュール的にきついところですが、お城周
辺でお花見や琵琶湖湖岸で小鮎つりの宴をやりましょう
か。

【脚注及びリンク】

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