原発重点対策範囲 半径30キロ圏内に拡大
福島第一原発事故を受けて国の防災指針の見直しを検討して
きた原子力安全委員会の専門部会は、深刻な事故の際には原
発から半径5キロ圏内の住民を直ちに避難させることなどを
盛り込んだ指針の改定案を了承(12.03.16)。改定案では、
事故の深刻度をあらかじめ3段階に分け、炉心損傷などの深
刻な事故の際には放射性物質が放出される前に、原発から5
キロ圏の住民は直ちに避難させるとしている。また、重点的
に防災対策を取る範囲を原発から30キロ圏に拡大し、放射
線モニタリングなどの実測値に応じて避難区域を設定すると
している。今回了承された改定案は、来月にも発足予定の原
子力規制庁が策定する新たな指針に盛り込まれる見込みで、
それに基づいて原発周辺の自治体が地域の実情に合わせた防
災計画を策定する方針だ。
【滋賀県の想定実験結果】
福井原発大事故あれば最悪大阪府下25市町被曝も
大阪府は16日、福井県内4か所の原子力発電所で福島第一
原発級の事故が起きた際の府内での放射性ヨウ素の拡散状況
を予測した滋賀県の想定実験結果を発表。季節や気象条件の
異なる106例のうち、安定ヨウ素剤の服用が必要とされる
甲状腺被曝ひばく線量50ミリ・シーベルト以上100ミリ・
シーベルト未満の地域が出るケースが11例あり、最大で25
市町村が被曝するとしている。うち1例は屋内退避が求めら
れる100ミリ・シーベルト以上の地域もあった。
実験は滋賀県の光化学スモッグ拡散予測システムを応用。北
風が長時間続いた日に美浜、大飯、敦賀、高浜各原発のいず
れかで事故が起こり、放射性ヨウ素が6時間放出されたと想
定し甲状腺被曝線量を試算した。 実験結果では、50ミリ・
シーベルト以上100ミリ・シーベルト未満の地域が出た11
例のうち、最も広範囲に拡散したのは大飯原発で事故が発生
した場合で、府北部の高槻市から大阪、堺両市や東大阪市、
府南部の富田林市までの25市町村に及んだ。高浜原発の事
故では府最北部の能勢町の一部で100ミリ・シーベルト以
上500ミリ・シーベルト未満となった。松井一郎知事は、
報道陣に「府民の避難計画づくりなどに活用していきたい」
と話した。
滋賀県は昨年11月、最悪のケースで県内全19市町のうち18
市町が被曝するとした実験結果を発表。事故の影響を受ける
大阪、京都兵庫、三重、岐阜、福井6府県と京都市のデータ
は公開せず、自治体側に情報提供を申し出たという。このた
め大阪府は滋賀県に提供を求めたが、他の自治体は要請して
いないという。
【エピソード】
薄氷を踏んでいる。原発を止めれば電力事業およびその消費
者の経済的打撃は大きい。故に穏便に『縮原発』に向けソフ
トランディングさせたいと産業経営者や政府側は考えている。
しかし、この災害は、時間軸が大きく異なる。特に企業経営
感覚でいえば3年、政府は5年範囲の思考枠だが、核分裂の
影響は半減期の10倍がその時間範囲だ。そのように考えた
上で防災計画を構築しなければならない。これはきわめて大
事な考え方と考える。
【脚注及びリンク】
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1.「福島原発事故後初の原子力防災訓練」福井
新聞オンライン、12.03.18
2.「平成23年度滋賀県原子力防災訓練の実施に
ついて」、滋賀県 12.03.14
3. 「原子力防災訓練実施状況」、文科省
4.「大飯原発再稼動の地元同意関西圏域まで」
橋下大阪市長 読売新聞、12.03.17
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