登記情報提供業務外部評価委員会の評価結果について(公表) 平成23年10月18日
http://www.minji-houmu.jp/download/houkokusyo20111018.pdf
登記情報提供業務評価報告書 (抜粋)
本評価委員会は、下記事項について評価を行った。
評価事項 1 登記情報提供業務のシステム運用の基本的問題に関する事項関連
・現行登記情報提供システムにおける運用上の問題点について
・新登記情報提供システムにおいて、新たに考慮すべきシステム開発等について
・その他登記情報提供業務のシステム運用の基本問題に関して検討を要する事項
評価事項 2 登記情報提供業務の委託に係る経費に関する事項関連
・現行登記情報提供業務の委託に係る経費(システム運用SE等の配置、人数及び単価等)の適正性、効率性について
・新登記情報提供システム稼働後におけるシステム運用SE等の配置、人数及び単価の適正性等について
・その他登記情報提供業務の委託に係る経費に関し検討を要する事項
評価事項 3 その他協会の会長が必要と認める関連事項
・登記情報提供業務を運用する上で評価事項1、2以外で改善すべき事項について
・登記情報提供料金のより適正な徴収方法等について
上記項目を評価するに当たり、財団法人民事法務協会(以下「協会Jという。)が行っている登記情報提供業務に関して、業務全体の流れを掌握することを行ったが、その過程で、
1.業務全体のフローを説明できる資料が不十分であること
2.担当者用のマニュアルが一部を除いて整備されていないこと
3.外部委託に必要な経費に関する積算根拠となる資料が不十分であること
等、業務全体を説明できる資料が不十分であることが明らかとなった。このため、本評価委員会は全体の業務の流れを掌握することから行った。この業務会体を掌握する過程で、登記情報提供業務は、法律に従って法務省から指定法人として指定を受けて行っているものであることから、協会が自由裁量で行える部分は、少ないことが判明した。また、協会が実施している委託を受けた部分に関しても、内部にシステムや経理等の専門家がいないことから、外部委託を行っているシステム運用に対する管理統制・モニタリングが不十分で、今後の課題として改善の余地があることが判明した。
以下、評価項目に対して、業務を見直す過程で判明した事項について現状分析と評価を記述することにする。
評価事項 1 登記情報提供業務のシステム運用の基本的問題に関する事項関連
・現行登記情報提供システムにおける運用上の問題点について
現行の登記情報提供業務は、法務省が所有する登記情報提供システムを用いて行っている業務であり、協会の自由裁量で登記情報提供システムの改善・改修ができないこともあるが、この運用に関して、
協会内部にシステムに関する専門家を置かずに外部委託を行っており、これらの業務に対する内容を正確に掌握できていない部分があることから、外部委託に対する経費の見積根拠について十分な説明を受けることができなかった。また、登記情報提供システムの運用に付随して発生している業務(電話相談、料金請求業務)に関しても、利用者の動向によって左右されることが多い事項ではあるが、その工数の見積も、同様に十分な説明をうけることができなかった。
これらについては、長期的にみれば協会内部に専門家を育てることが必要である。既に、一部の業務は、派遣社員から協会の職員による処理に移行してきでおり、一層の協会の職員による処理への移行が望ましい。また、これに伴って、業務全体を掌握し、適切に人事管理ができる人材の養成も必要である。
なお、これらの育成には長い年月が必要であることから、外部から利害関係のない専門家を招聘して、指導を仰ぐのも一案である。
・新登記情報提供システムにおいて、新たに考慮すべきシステム開発等について
新登記情報提供システム稼動後においては、運用場所が二か所に分かれるため、人員の配置等の検討が必要である。また、運用場所が二か所に分かれることにより発生すると思われる請求業務等を運用するシステムの取扱いに対しても人員を含めた最適配置について検討を行う必要がある。
・その他登記情報提供業務のシステム運用の基本問題に関して検討を要する事項
協会は、法務省で開発されたシステムの運用管理だけでなく、利用料金の徴収等利用者との窓口も受け持っていることから、利用者の要望等を知ることができるので、これらの情報を的確に法務省に伝える必要がある。このためには、法務省と密接に連絡を取り合う等の努力が一層必要である。
評価事項 2 登記情報提供業務の委託に係る経費に関する事項関連
・現行登記情報提供業務の委託に係る経費(システム運用SE等の配置、人数及び単価等)の適正性、効率性について
協会においては、システム運用SE等の配置、人数及び単価等の積算根拠となる業務全体の流れ及び各業務の内容を正確に説明できないことから、その経費が妥当かどうかの評価は難しいのが現状である。そのため、
各業務の経費に関する予算書等で検討を行ったが、一部経費の根拠が不明確な部分もあり、これらの根拠を今後明確にする必要がある。また、その根拠を的確に判断できる体制の整備が必要である。
また、委託のほかに一部決済の提供機能を併せて調達しており、単独応札になっている。
SE委託と決済機能の2つに分けて2本の調達に分け、複数の入札にできる可能性があり、そのような努力をすべきである。
・新登記情報提供システム稼働後におけるシステム運用SE等の配置、人数及び単価の適正性等について
システム運用SE等の配置、人数及び単価については、業務内容が正確に掌握できていることが条件となることから、これらを評価するに当たり内部に適切な人材がいない場合は、これらの評価を第三者機関に委ねる等、将来運用委託先となる業者を除いた業者等に評価させることが必要である。なお、本来は、内部に評価できる人材を確保することが望ましい。このためにも、内部での人材育成を積極的に行うべきである。また、拠点を二分割することが予定されているが、二分割に伴う業務の分割、二点聞の情報の伝達等考慮すべき点についての評価は今後に譲ることにする。
・その他登記情報提供業務の委託に係る経費に関し検討を要する事項
上記、システム運用SE等の配置、人数及び単価と同様に、電話相談業務、請求業務、未回収債権の取り立て等に関しでも、外部委託や派遣社員で賄うのであれば、その内容と人数に関して適切に判断できる人材の養成が必要である。なお、これらの業務の一部については、計画的に協会職員が担うよう進められているが、将来的には全て協会の職員で賄うのが理想的である。
評価事項 3 その他協会の会長が必要と認める関連事項
・登記情報提供業務を運用する上で評価事項1、2以外で改善すべき事項について
・登記情報提供料金のより適正な徴収方法等について
現在の徴収方法では、平成23年6月1日現在で約5千3百万円の未回収が発生している。このような未回収債権は、法人会員にだけ認められている口座引き溶としの方法(当月の利用料金を翌月請求する方法)をとることによって発生したものと考えられるが、今後は、利用者の利便性を考え、法人だけでなく個人にもこの方法を拡張することとしていることから、利用料金が一定の金額を超えた場合は、その時点で請求を行い、利用者IDを止める等の方法も考慮する必要がある。また、クレジットカードによる徴収、預託金による支払等併用することも検討する必要がある。預託金による徴収は、利用者側から見れば不便な一面もあるが、適切に利用料金を徴収するためには、検討に値すると思われる。