えッ!戸籍や国保まで外部化? どうなる私たちの生活やプライバシー

2012年10月12日 18時58分47秒 | 日記

 公共サービス「改革」というけれど
行政の役割放棄、サービスの低下、個人情報の漏洩、官製ワーキングプア増加のおそれ

足立区が全国の自治体に呼びかけ「研究会」
 足立区長は9月21日、「行政改革」の一環として区の窓口業務や国保、戸籍、会計出納など自治体の「専門定型業務」を、外部に委託する手法を研究するための「日本公共サービス研究会」を、全国の自治体に呼びかけて立ち上げたと、自慢げに本会議で挨拶しました。

7月27日第一回会合 152自治体が「参加」
 研究会「立ち上げ」となった第一回会合には99自治体が出席し、その他「加盟」53自治体を加え、152自治体で発足しました。区は、今後メール会議方式で情報交換するなどして研究を進めるとしています。
 8月17日の区議会総務委員会で報告され、日本共産党は詳しい説明を求めるとともに、問題点を明らかにし批判しました。

「実際に突破口を開けることが一番のねらい」と近藤区長
 会合では足立区の近藤区長が研究会立ち上げの経緯を説明。 2006年ごろから市場化テストの導入をめざしたが(労働法に違反する)「偽装請負」や「公権力の行使」の規定に反する疑念などから断念したことに触れました。
 そして、従来は外部化(委託化)が不可能と思われた自治体業務をいかにすれば可能となるか研究するとともに、現場で懸念される課題などを自治体間の連携で議論したい旨を述べ、「研究会と銘打っているが、実際に突破口を開けることが一番のねらい」と強調しました。

自治体の変質・自己否定につながる危険な方向
 自治体の使命遂行や、より効率的・効果的な行政サービスのために研究や改革を進めることはいいことですが、いま足立区が「研究」し「突破口」を開けようとしていることは、第一に自治体の使命・役割を投げ捨て、自治体の変質・自己否定にもつながる危険な方向です。
 区役所の(国保や納税や戸籍などあらゆる)窓口業務は、公務員が受け付け、処理しているからこそ本人確認やプライバシーの保護、公的事務の遂行など、「公権力の行使」を伴って正常に行われています。
 これが「民間委託」されたら、それをチェックする公務員がその奥に必要になるなど「二度手間」「二重チェック」の無駄が生じるだけでなく、役所がやっているから住民は国保も戸籍も納税も信用して手続きに行くわけで、「民間会社」なら民間の保険と同じように、入る入らないは本人の自由になって、役所は要らなくなってしまいます。

「自分たちの責任を他に譲るということなら大変」
 日本共産党は総務委員会でこのような指摘をして批判しました。
 他党議員からも「人件費の削減、最少の経費で最大の効率を上げる(ため)だけでこれが発足したのか」「自分たちの責任を他に譲るということになってしまったら大変」「公から民に移すというならもう少し適切な理念があるのではないか」「そこのところを聞かせてもらわなくてはイエスと言えない」など疑問の声が上がりました。

各種窓口業務、会計、出納、国保、介護保険関連、設計、積算、入札、契約
 日本共産党は「外部化」「委託化」の対象はなにかと質問すると区は、各種窓口業務、会計、出納、国保、介護保険関連、設計、積算、入札、契約などの専門定型業務であることを認めました。

公権力の行使・偽装請負・ノウハウ
 区はまた、公権力の行使にかかる部分は委託できないこと、民間業者にノウハウがないもとで委託すれば指揮・命令という問題が発生し偽装請負になってしまうことも認めました。

サービスの低下 個人情報の漏洩
 区が進めようとしている「公共サービス改革」=専門定型業務の外部委託化は、部分的な業務の委託ではなく中心的・専門的業務の委託ですからノウハウのない民間業者では十分遂行できず、サービスが低下する恐れが大です。また、ノウハウのある公務員から指示を受けながら業務を遂行すれば偽装請負となります。
 健康保険料額や通院の状況、あるいは戸籍の家族関係、あるいは公平性が命の入札や契約など個人情報の一番重要な部分が民間業者の間で扱われることになり、個人情報の漏洩が非常に懸念されます。

低賃金労働の拡大、公務員の削減など雇用問題が必ず発生
 公共サービスの外部化・委託化の目的は突き詰めれば人件費の削減です。公務員より安い低賃金労働者を区役所が増やすことになります。また、外部委託に伴って区の職員は削減され、たとえば災害時でも職員が少なくて対応ができなくなるなど自治体の使命が果たせなくなります。