ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

「ミニオンズ」

2017-05-21 14:09:31 | 映画


少し前に見た映画だけど、
ご存じ「ミニオンズ」

ミニオンズという太古の昔から地球上に生息する得体のしれない「クリーチャー」たちの話。
いつも集団で行動し、強いボスに仕える、というのが彼らの仕事というか生き方。
黄色くて眼鏡といえば、これはもう日本人のカリカチュア以外の何ものでもないわけで、それがわかった上で楽しむのがいいかと。

彼らは強いボス(大体悪者)を見つけるとその召使となり仕えるわけだけど、強いボスたちは悉く(彼らのせいで)滅びていき、ついに仕えるべきボスがいなくなるという事態に遭遇。
ボスのいないミニオンズはまことにやる気のないクリーチャーに成り下がっていた。
そこで最強のボスを探しに、旅に出たのが、ケヴィン、ボブ、スチュワートの三人組。
(彼らが話すのはミニオン語なのに、名前だけはなぜか英語風)

この三人が珍道中の末にたどりついたのがビラコン(悪者たちのコンテスト。誰が一番凶悪かコンテストする)。
ここで優勝した大悪党スカーレット・オーバーキルを追いかけてロンドンへ・・

この後はドタバタ喜劇で、結局、ミニオンズをやっつけようとしたスカーレット・オーバーキルが逆にミニオンズにやっつけられ、彼らは新しいボス「怪盗グルー」と出会うという、つまりこれは「怪盗グルーの月泥棒」の前日譚なのだ。

ミニオンズは常に最強のボスになびき仕え、そのボスが倒れたら臆することなく別のボスに乗り換える。そいつが世界を破壊しようがお構いなし。
陽気でお茶目でいつも楽しそうでどんなことにもへこたれない(たとえ爆破されても死なない)。彼らには善悪の区別はなく、ボスは強ければだれでもいい。
そして、悪はたいてい強い。スターウォーズのダースベイダーしかり。悪は常に力強く破壊的で、だからこそ魅力的なのだ。

悪とは一種の生命力かもしれない。
他の生命を奪ってでも自分だけは生き延びたいという圧倒的な自己保存の欲求。
それが悪の根源にあるのではないかしらん。

自然界の生き物はやがて死に至り、エントロピーの法則により崩壊していく。
けれど、悪はそれに精いっぱい抗おうとする。
他の生命を奪い、自然の摂理からも離脱し、エントロピーさえも凌駕しようとする。そうした欲深な生命力なのかもしれない。

話変わって、
以前、サクラマスの生態についてTVで見た。
サクラマスの子どもはヤマメ。同種である。
ヤマメは川の上流から流れてくる餌を食べるのだけど、上流にいる強いやつほど餌にいっぱいありつけるので大きくなる。
一方、上流に行けない弱いやつは(メスが多い)あきらめて川を下り、海に出てサクラマスとなる。
サクラマスは体長が30センチもあり、わずか15センチのヤマメとは見た目も強さも圧倒的に違う。海で鍛えられ強くなったサクラマスは川に戻り、産卵して子孫を残す。

つまり、川での生存競争にあぶれた弱いものが、海に出て強く大きくなって川に戻り、子孫を残すというわけ。
その際、ずっと川にいたヤマメがドサクサまぎれに自分の精子をサクラマスの卵にかけて、かろうじて子孫を残すという。
これは非常に示唆に富んだ話だと思った。
 
つまり、弱者の生き残り戦略だ。
ミニオンズのように小さくて臆病で、集団でないと行動できないクリーチャーがいかにして生き延びてきたか・・
彼らは、サクラマスのように海に出て鍛えて強くなるという手法ではなく、集団で強いボスに仕える(という安易な方法で)、ボスを代々乗りかえて、実はボスより長く生き延びてきた。
いわば逆説的な悪でもあるのだ。

生命力の強い最強のボスも長くは繁栄せずやがては滅びていく。
強者はやがて滅び弱者が生き残るというお話。
 
ミニオンズって、つまりは大衆。
ま、日本人でもあるけど・・
というわけで、面白い映画でした。


コメント
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