ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

バベルの塔

2017-04-29 12:52:56 | 日本語


昨日はいい天気だったので、上野の都美術館に行ってきました。
ブリューゲル展と、友人が日彫展に彫刻を出展しているのでそれを見に。
ブリューゲルは、あの有名な「バベルの塔」が来ています。
今回は、オランダのボイマンス美術館所蔵展なので、他にボスなどの絵も見られます。あの奇妙な絵で有名なヒエロニムス・ボスです。

 
GW前に行って正解でした。待ち時間もなくスムーズに見られたし、3D映像を駆使した解説フィルムも座って見られました。
こういうところ、日本は至れり尽くせりですね。実に細かいところまで解説されていて、国民に芸術教育を施したいという熱心さが伺えます。

それはさておき、「バベルの塔」ですが、
旧約聖書の創世記に出てくるお話が基になっています。
 
  元々、人々は一つの言語を話す一つの種族だった。
  あるとき、平野に街を作り、そこに天まで届く塔を建てようとした。
  これを脅威と感じた神は、
  人々が同じ言語を話せないように、民族と言語をバラバラにして世界に散らした。
  これ以後、人々は違う言語を話すようになり、世界は混乱した。 
  この街をバベルと呼ぶ。

つまり、バベルの塔は言語に関する逸話なのですね。
なぜ人々が違う言語を話すようになったのか、というお話。
人々が一つの言語を話し協力しあって塔を建てることが神にとっては脅威であった。
そこで、神は人々をバラバラにして世界に散らし、互いに理解できないよう異なる言語を話すようにした。

バベルというのは街の名前ですが、ギリシャ語のバルバロイはここから来ているといいます。
わけのわからない言葉をしゃべる人、という意味。

塔というのは何だろう?
科学技術? 建築技術? 人々の知恵?
ある友人は、言語だといいます。
人々が一つの言語で言葉の塔を建てようとした。
つまり、人間は自らの言葉を駆使してロジカルな世界を構築しようとした。
それは天国まで続く高い塔 (非常に高度な論理性を持つ世界)であったが故に、
神に対抗するものと解釈され、神の怒りを買った・・

旧約の神は強権発動の神様ですね。
従わない者、謀反を起こす者、驕り高ぶる者たちを悉く滅ぼそうとする。
その中からイエスキリストのような愛による救済を唱える人が生まれてきたというのは驚きです。

現在、世界の人たちは違う言語を話し、種族間、宗教間での抗争が絶えません。
旧約の神が人々に望んだのは、本当にこれだったのでしょうか。
そして、現在の高度に発達したロジカルな世界、
量子力学やAIの世界は、まさにバベルの塔といってもいいのではないでしょうか?
神はこれをどう見ているのだろう?


「バベルの塔」を描いた画家は大勢いて、
ブリューゲルにも2点あります。今回公開されているのは小さい方で、こちらのほうが後の作品です。
どちらかというと前期の作品(ウィーン美術史美術館所蔵)のほうが有名ですが、緻密さからいうと今回の絵のほうが優れているとも言われています。


 (ウィーン美術史美術館所蔵のバベルの塔)

いずれにせよ「言語」が人類にとっていかに重要課題であったか、というお話。
創世記の時代から、それは確かに認識されていたようです。

新約聖書のヨハネによる福音書の冒頭には、

  初めに言(ことば)があった。言は神と共にあった。言は神であった・・
  すべてのものは、これによってできた。

とあります。

異民族を侵略するときはまず言語を奪いますしね。
人間にとってコミュニケーションがいかに大事かということでもあります。

ちなみに、
ブリューゲルの「バベルの塔」には、16世紀のオランダ農民の暮らしぶりが細密に描かれていて、細部がとても面白いので、機会があったらぜひご覧になるといいと思います。


コメント (1)
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