リッスン・トゥ・ハー

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2010-02-25 | リッスン・トゥ・ハー
宏はミルクをコップにつぎ一気に飲み干した、ミルクは冷えていて、腹にすとんと収まる。部屋の中には宏以外にもうひとりの人間がいる。もうひとりは息をしていない、心臓も動いていない。宏が殺したのではない。仕方なかったのだ。彼女は宏に詰め寄り、あの女と別れなさい、と叫びながら頬を何度も打った。それでおさまるのならいくら打たれてもいいと宏は無表情にじっと彼女の目を見ていた。それが気に入らなかったのだろう、彼女は宏に体当たりし、よろめく宏にさらに体当たりをしようとして全力で頭をむけてつっこんでくる。宏はかろうじてバランスを取り、それをよける。彼女はそのまま棚にぶつかる、ものすごい音がして彼女は倒れ込む。棚に入れてあった包丁が落ちてくる。下に倒れた彼女に刺さる。彼女はうめき声もあげずに動かなくなる。まいったなあ、と宏はつぶやく。ミクルは腹を冷やし、ぐるぐると腹が低く鳴る。まいったなあ、もういちどつぶやく。宏がふと見る、デジタルの時計が表示していた22222。

宏の浮気相手、杳子はフライパンを洗っている。宏に食べさせるために今朝ホットケーキ焼いたときに使用した。フライパンを洗いながら杳子は幸せをかみしめる。宏は現在の彼女、いずみと別れ自分とつきあう、と昨日話してくれた。決意も固いという。信じてもいいような気がした。宏との出会いは勤めている歯科だった。杳子は歯科衛生士をしていてそこに患者として宏がやって、杳子は一目で好きになり宏が2度目に訪れたときにそっと手紙を渡した。そこにかかってくるまではとても長い時間だったけれど、かかってきてからは早かった。その2日後にはふたりははじめて治療室以外で会い、その日のうちに体を重ねた。はじめ遊びだったという宏も会う回数を重ねるにしたがい次第に杳子に惹かれるようになる。そしてその半年後、昨日宏はついに決意してくれた。杳子は宏との生活を想像し、ぼうっとしてフライパンを落とした。フライパンはけたたましい音をたてた。やだ、と杳子はつぶやく。それから117で時報を確認すると22222。


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