壁際椿事の「あるくみるきく」

東京都内在住の50代男性。宜しくお願いします。

『警察内部告発者』(原田宏二著)読後記

2014年04月17日 | よむ

ウーロンさん、六郎さん、いろいろ気遣い、ありがとう。
これまでと変わらず、書いていきますよ。

さてさて。
銀行員や教員、警察などは、異動が多いですよね。
銀行員は長く同じ部署にいると、融資先と甘えの関係になる。
教員も長く同じ部署にいると、特定の保護者などと甘えの関係になる。
警察も同様でしょう。
どんなに立派な人でも、易きに流されるは人の常だから、
精神論でなく、制度でもって不正を防止する狙いですね。

北海道の警察の幹部の異動は、こんな感じだそうです。
1995~2004年の10年間の記録です。銀行員や教員と比べ、どうでしょうか?

 道警本部長 7回
 総務部長 7回
 警務部長 6回
 生活安全部長 6回
 地域部長 8回
 刑事部長 6回
 交通部長 7回
 警備部長 7回
 警察学校長 10回
 方面本部長(函館)8回
 同(旭川)7回
 同(釧路)7回
 同(北見)6回
 主要な警察署の署長(中央警察署)9回
 同(北警察署)8回
 同(苫小牧警察署)6回
 同(函館中央警察署)7回
 同(旭川中央警察署)7回
 同(釧路警察署)6回
 同(帯広警察署)6回

(以下引用、カッコは椿事注)
道警の上層部は1カ所に2年と勤務していない。(中略)これだけ頻繁に異動ということになると、じっくりと仕事を把握し、改善していくヒマなどなくなってくる。となると、どうしても(裏金システムも含め)前例踏襲で、仕事をするほうが無難ということになってくるのだ。(中略)
(なぜ異動が多いか?)タテマエではそれは組織の活性化、人心の一新ということになっている。だが、実情はそんなきれいごとではない。タテマエの裏では泥臭い出世への欲望がうごめいている。(中略)
幹部たちが異動を望む理由のひとつに、次第に地位が上がると異動に伴う臨時収入が得られるというメリットがある。すなわち、税金のかからない収入、餞別のことがあるからだ。(引用終わり)

『警察内部告発者』(原田宏二著)を読みました。著者は、元北海道警察の釧路方面本部長。警察の内部を深く知る立場にあった人が、内部告発した本です。

警察には、裏金システムがある。正規の予算として、情報提供者への謝礼がある。本当は情報提供者なんていないのに、でっち上げ、架空の領収書を作り、その予算を裏金化する。出張してないのに、出張したことにして交通費を裏金化する。こうしてプールされたお金が、幹部の異動の際の餞別、飲み食いやゴルフ、官官接待(東京の警察庁のエラいさんが来道した時の接待)などに使われている。

一方で、情報提供者への謝礼の予算が下りてこない現場では、末端の警察が自腹を切って、エス(スパイの略、情報提供者)と付き合うことになる。このシワ寄せとなったのが、稲葉事件ですね。

それにしても、これだけ異動が多いと「癒着の防止でなく、餞別の回数を増やしたいからか?」とうがった見方をしてしまいます。

同書は、裏金問題を中心に、警察の体質を赤裸々に描写しています。警察の問題は北海道に限らず、ほかの都道府県でも噴出しているし、中央官庁の警察庁にもあるはず。著者は、各地の警察でプールされた金が警察庁へと向かう流れがあるはずだ、と見ています。

解説で、ジャーナリストの大谷昭宏さんが、「Be gentleman」と言っている。警察よ、紳士たれ、です。

(以下、原田さんの文から引用)元来、組織それ自体に良心など存在するはずがないのだ。存在するのは個人の良心の集合体であり、それこそが組織の良心なのである。そして、個人の良心が失われたとき、そこに残るのは、虚ろで亡霊のような形骸化した組織しかないのだ。

異動などの制度として不正を防止する仕組みも、そのベースに個人の良心あってこそですね。紳士たれ、です。

●追記
自衛隊は、ほかの公務員の2倍、自殺が多い。警察官も自殺が多いのではないでしょうか。なにか構造的な問題があるはずです。そん問題をクリアにし、彼らが毅然と堂々と朗らかに働ける社会になるといいですね。

●追記
チェスタートンの「それが設けられた理由が分からないうちは、フェンスを外すな」という言葉があります。裏金も、当初は、それなりの導入理由があったのでしょう。必要悪です。どんな理由だったのか? いまは時代も変わっている。ま、市民(オンブズマン)がよく監視する事が大切ですね。



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1 コメント

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Unknown (会社員(30))
2014-04-17 13:12:46
銀行営業の異動が多いのは融資先とトラブルになった際の責任の所在を曖昧化するためです。
一担当者の甘え関係で融資が決定できるほど単純ではありません。
そもそも異動について民間企業と比較したのでしょうか。

自殺者についても「自衛隊や警察官の自殺が減れば良い社会」のような言い方ですが、自殺者全体での割合を理解していないことがよく分かります。
警察・自衛官 0.98% <==
土木・建築自営 1.46%
専門・技術職 3.11%
販売従事者 2.18%
技能工 4.05%
通信運輸 1.64%
労務作業者 3.93%

いくら良い著書を読んでも、肝心の読み手がこれでは本が泣きますね。
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