ムジカの写真帳

世界はキラキラおもちゃ箱・写真館
写真に俳句や短歌を添えてつづります。

花のうれひ

2017-10-29 04:21:36 | 短歌





あめつちの かひにあれにし ちよろづの 花のうれひは 去らずとも咲く





*「かひ」は「峡」、山と山の間のせまいところを表わします。ようするに、「あめつちのかひ」というのは天と地の間という意味ですね。

前にかのじょが、天と地を、二枚の貝にたとえていたのにならっています。旧ブログでやっていたものか、記憶があいまいなのですが、どこかで、月を、天と地の二枚の貝ではぐくまれた真珠のようだ、などと言っていた覚えがある。

そういう風に考えると、実に月が美しいものだと思えますね。

ですからこの「かひ」には「貝」もあります。

天と地の二枚の貝のような間に、あらわれてきた、千万というほどたくさんの花々は、悲しみが去らなくても、咲くのだ。

生きるということは、悲しみを抜きにして考えることはできません。自分の思い通りになることなど、ほとんどない。常に何かを受け入れる苦しさに耐えていなければならない。

心から愛していても、その心が伝わることは、たぶんほとんどない。愛してもかえってきはしない、長い年月を、さみしさや悲しみに染めながらも、人は生きざるを得ない。なぜなのか。なぜこんなにもつらいのに、生きたいと思うのか。

それは何かが、どこかにあることを、知っているからだ。

愛しても伝わらなかった愛が、どこか不思議な世界で、もっと美しい形で再開するだろう、永遠の約束が、わたしの知らないところに書かれているからだ。

だから、花は、生きることが悲しくても、咲くのです。

咲いてくれるからこそ、この世界は美しくなる。生きることがうれしくなる。悲しみが去らないのはなぜなのか。それはおそらく、自分以外にこの自分はいないという悲しさに違いない。だがそれこそが幸福なのだと。

花はわかっているのです。






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