ムジカの写真帳

世界はキラキラおもちゃ箱・写真館
写真に俳句や短歌を添えてつづります。

たましひ

2017-10-31 04:20:18 | 短歌





愛しなどしない おまへはわたしの ものなのだ たましひなどは 与えてやらぬ





*破調というべきですね。頭が八文字だ。だが軽いので、これでなんとなくかたに収まっている感もあります。

これはある人形作家の人形に送った歌です。人形作りというのは、かなりきつい工芸だ。どれもみな夢のように美しく作る。すばらしくきれいな衣服を着せるか、何も着せないで、そそるような白い肢体を見せる。

瞳は虚ろで、唇は決して笑わない。

そういうのが多い。

実にこれは、自己愛の表現なのです。人形作家というものは、繰り返し、自分を作っているのですよ。

それは美しく、完璧な美貌の自分を作るのです。こういう美貌の少年少女になりたい。それで浮気などし放題の、奔放な人格を与える。

逆らいたくても、美しさゆえに逆らえない。そのような、暴虐的な美貌が欲しい。

そういう痛い自己愛の表現が、人形というものなのだ。だからどんなに美しくとも、邪臭がするのです。

だから人形作家というものは、人形に魂を与えません。それは自分だからです。魂など持ってもらっては困るのだ。そんなものがあれば、自分にできなくなる。全くの他者になってしまう。

自分より美しい存在がほかにできてしまう。それはまずい。

だから人形は、永遠に空っぽでなければならない。

果たしてそれは幸福なのか。

美しいだけの、魔ではないか。幻の方がまだましだ。

作り手が飽きれば、人形は簡単に打ち捨てられてしまうだろう。人間の形をしたものが、どこかに打ち捨てられている。ごみのように汚れ崩れていく。

それは悲惨などというものではない。

自己愛が作ったゴミなど、誰も見たくはない。






  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする