やへがきの ふときかひなは なえはてて 匙をもつにも 重きとぞいふ
*これも賢治への返歌からとりました。返歌をさしあげた歌は、たしかこれでしたね。
ますらをのおほきつとめは忘れはてやすけからんとつとむるものよ 宮沢賢治
「やへがき(八重垣)」は須佐之男命の歌から来ていますね。有名な歌ですから省きますが、要するに須佐之男命が、妻を守るために八重の垣を築こう、という歌でした。
垣を作るなどというのは男の仕事だ。外敵から仲間を守るための防壁を作るなどということは、大昔から男がやってきたことでした。
太い腕を使い、木材や石を運び、頑丈な垣を作ってきた。丈は高く、多少の衝撃にはびくともしない。泥棒が容易に侵入できないような罠のようなものさえ仕掛けてある。
みんなを助けるために、知恵と力を集めて、男が作ってきたものなのです。
しかしその太い腕ももはや腐っている。これ見よがしに筋肉などついていますがね、それはもはや、女性の目を引くためだけのものでしかない。しかしその女性も冷ややかに見ている。使わない筋肉など、美しくもなんともないからです。
たくましい男の腕が美しいのは、みなのために痛い労働をしているからだということが、わかっていない男が多くいるようだ。腹筋の割れた肉体を自慢げに見せる芸能人とかボディビルダーとかが、本当は女性にどう思われているかを、一度聞いてみたらどうでしょう。
「匙」は「さじ」でもいいが、古語的に「かひ」と言ったほうが響きがいいですね。「腕(かひな)」と「なえはてて」の「な」と、「匙(かひ)」が響きあう。面白い感じになります。
八重垣を作るほどの太い男の腕も、萎え果ててしまって、小さな匙一本でさえ、持つのが重いというよ。
実際馬鹿男がやっていることは、匙を持つよりも軽い仕事で、うまく人を操ってうまい汁を吸おうとしているようなことだ。本気で自分の男をためすようなことは、絶対にしようとしない。
男性には、他人事でなく、我が身を振り返って、考えて欲しいですね。