日中越境EC雑感

2008年に上海でたおばおに店を作るところから始めて、早もうすぐ10年。余りの変化に驚きの連続

シャボン玉石鹸 撤退の分析

2009-11-06 | 日本・日系企業
何故失敗したか?

2. 価格
日本小売価格  中国価格      中国仕入価格
浴用石鹸        115円     20元(260円)     182円
ベビ-石鹸       267円     47元(611円)    428円
ハンドド-プ     428円      74元(962円)      673円 
ベビ-粉石けん1Kg  892円     155元(2,015円)   1,411円 

 驚かれるかもしれませんが、一部商品の価格は上記のようになっています。他の商品についてもほぼ同じで、小売価格は日本の2.2倍。我々が小売として仕入れる価格が日本の小売価格の1.6倍になっています。

 淘宝で販売されている商品は、通常日本の小売価格の1.3-1.5倍です(輸送費と小売の利益を入れた上で)ので、中国で仕入れて販売すること事態にインセンティブが無い価格設定になっています。

 理由は関税と、商品品質検査費用がかかること。中国での販促費を含む運営費用がかかることにあります。それに、販売管理費を賄うコストとセールスボリュームの兼ね合いがあったでしょう。いずれにしろ、もしS社の商品の販売が好調であれば、日本の小売から仕入れた商品が、淘宝で販売されるはずですが、僕ら以外に販売しているのは、A社と、その後を引き継いだ大連の会社、そして僕らの競合のベビ-関連を販売しているサイトの4つしかありません。

 ちなみに、A社の淘宝店では1年強で160個程度販売。僕らは4ヶ月で64個、大連は始めたばかりで4つ売れた実績があります(一人の纏め買いですので多分身内の買い)。以前、日系ス-パ-でも月間10個程度しか売れていないと聞いていましたので、まぁこんなものかなともいます。百貨店にでてからは、特定アイテムについて結構な量がさばけていると聞きましたので、販売量は一番多いかもしれません。B2Cのサイトでの購入者は日本人が多かったようですが量は不明です。

 ベビ-フ-ド関係も同じなんですけど、日本製品を中国に輸出販売するには、この関税、許認可費用、品質検査費用等がかなりネックになり、量を裁けるかどうか、価格設定をどうするか、その辺のトレ-ドオフを考える必要があります。

 基本的に、薬品、健康食品、食品、シャンプ-等のスキンケア、化粧品といったあたりは、日本からの輸出には結構なハ-ドルがあります。それなりに売上がたつまでの運転資金や、広告宣伝費も含めた投資のできる大企業の商品以外は、大半が中国での販売の可能性は容易ではありません。しかしながら、気軽に考える企業を多く見かけるのも事実です。

 一方、実際に中国の大手小売業で販売されている食品関係について言えば、中国側の全てのプロセスを経ている物ばかりではなく、70%は関税などを納めない形態で国内に持ち込まれたものになっているのが実態です。そういうことをして、利益を確保しながら小売への納入価格を落とすというのが中国企業の戦略で、コンプライアンスの厳しい日本企業は同じ真似はできず、同一商品を中国企業が扱うと、小売向けの現場では価格競争で負けてしまう実態があります。日本企業の場合は、一般の税務調査も中国系企業より厳しく行われますので、こういう手段は取りずらいでしょう。

 まぁ、これも中国では中国企業と不公平競争を強いられる多くの例の一つです。

 結局の所、巨額の投資を行い、数年赤字でも耐えていける大手企業以外の会社の商品は、中国側で中国式の対応ができる代理店などと組まないと、勝利は難しい。

 健康食品関連に関しては、色々と輸出、B2Cのサイトでの販売、淘宝での出店依頼が多い分野のようですが、テスト段階はともかく、その後の本格的な輸出段階まで進むには許認可取得が容易ではないようです(知名度の無いブランドはそのテスト段階で知ると思いますけど)。
 
 日中間で同じ商品の価格が極端に変わる商品は幾つかあります。粉ミルクやベビーフードもその例です。こういう商品は、淘宝のようなサイトで非正規輸入品が販売されておりますが、実は多くの中国企業がリアルの分野でも非正規輸入で商品を中国に持ち込み小売に卸しています。でも、メーカーとしては売上が日本で立つか中国で立つかだけの問題に過ぎません。そういう意味で中国企業だけ見ていると全然儲かっていないようですが、日本で販売され中国市場に流れている物を含めると利益が出ていた、という物もあるはずです。尚、メーカーは規制をかけてもい、卸や小売からも相当に流れています。

 そういう意味では、中国での最終小売価格の設定は、単純にコストオンではなく、競合商品等を見据えた上での価格設定をして、その価格でも目標販売量と、流通の形態などを考える必要があります。

 もう一つはブランディングですね。S社のこの価格設定って、上記の実情もそうですが、かなり自社の力を勘違いしていたと思います。A社はS社に対して広告と価格の下げを依頼したが、S社が受け入れなかったと聞きました。そして、現在後を引き継いだ大連の企業も同じ価格でサイトで販売している。ということはS社の意向のようですね。

 よくいるんです。資生堂が幾つかの商品について、日本では中級ブランド(日本の資生堂の評価は決してトップブランドではない)で販売している物を、中国ではトップブランドとして販売しています。それに習いたいのでしょう。確かに価格帯的には日本の中流の所得レベルの中国人は中国では上位に属します。

 でもね。

 可処分所得ベースでの日本の平均レベルの所得者の数は、確かに中国の上位10%程度だが、絶対数は日本並みになっている。世界中のトップブランドが必死に中国市場に入っている。日本のブランドで世界トップの物は実は一つも無い。結局の所一時的な情報格差で日本企業がトップブランドになっても、時間の経過と共に日本と同じいちずけに収束されていく。

 いずれにしろ、ナショナルブランド以外の日本ブランドは、中国でトップブランドを構築するのは、基本難しいです。相当な広告投資をして作るしか無いでしょう。それもどれだけ続くかは不明。消費者はまだ成熟しておらず、有名なブランド品を求める段階で、オリジナルブランドを求める段階ではない。

 
続く
コメント
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