ジャクソンホールでの注目のイエレンFRB議長の講演。リーマン・ショック後の停滞から「米経済は著しく改善した」と指摘し、「労働市場は予想より早く改善している」との判断を示した。現地時間の11時に始まった講演内容が伝わった金市場の反応は、初動は下げだった。しかしすぐさま反発となった。というのも、それでも「労働市場の回復はまだ完全ではないとして」、正常化へのステップとなる利上げの判断には慎重さが必要と強調したことによる。ただし、議長は雇用の改善と物価上昇がこのまま続いた場合に「利上げが想定より早まる可能性がある」というこれまで通りの考え方も表明している。
結局、総じてとらえると金融政策の方向性を示すものではなかったということになる。議長は「利上げが想定より早くなるかもしれない」とする一方で、「想定より緩和的になるかもしれない」ともしたことから、判断の難しさを正直に認めたことが今回の特徴との指摘もある。
結局、金市場の方はこの発言を受けて反発をしたものの上値は1283.90ドルまでで限られたものとなった。通常取引の終値は前日比4.80ドル高の1280.20ドルとなったが、その後の時間外電子取引でも目立って水準を切り上げる動きは見られなかった。金市場の反応という点では、議長発言よりもFOMC議事録要旨に反応した下げに対する自律的な反発という側面と、やや売られ過ぎというテクニカルな反発といったところだろう。
9月中旬に予定されているFOMCに向けて、一定の方向性を示す可能性を期待した市場だが、結局、立場の違い、受け止め方によっては如何様にもという発言内容はまさに言質を取らせないもので 予断なく次のFOMCの結果を待ちなさいということか。それは判断に迷うFRB自体の現状を示しているともいえよう。
内部で議論の割れていること、さらに昨年5月のバーナンキ発言による長期金利の上昇がもたらした住宅市場への影響などもあり、中立にならざるを得ないということもあろう。
利上げは、これほど微妙で難しい。当然ながら、FRBの金融政策は後手に回るという論評も出ることになる。実際、過去の引き締め策は後手に回ってきた。