今回のFOMCは、政策金利の据え置きと資産縮小の10月からの実施はすでに織り込み済み。市場の関心は、6月の会合以降も続いた物価上昇の鈍さからメンバーの利上げ見通しが変化し、下方修正されたのではという点にあった。参加者全員が(匿名で)提出した見通しからは、年内利上げについてメンバー16名中(現在空席3名)12名が支持となり、これは6月から変化なし。来年の3回利上げ見通しについても同じ。先週発表された、8月のCPI(消費者物価指数)が久々に高めに出たことがあるのかもしれないが、市場が思った以上に利上げ指向の強さを感じさせるものとなった。
というよりも、FRBは利上げして政策余地を確保したいのだろう。つまりイエレン議長は足元の株高もあって、利上げするべきだと思っているのではないか。
いずれにしても、この結果を受け長期金利はさらに上昇し、ドル高に反応、金は一時1300ドル割れに。イエレン発言を受ける前にドットチャートの時点で、このロングの手仕舞い売りが出て金は1300ドル割れを試すことになった。
ではイエレン議長がインフレに対してどんな見方を示したのかというと、質疑応答で「過去においては労働市場のひずみがあったことで2%を何年も下回ったが、現在は労働市場のひずみがほとんどなくなった。エネルギー価格の下落やドル高で2014年以降の輸入価格が下がったが、今年はそうした要因もない。現在2%を下回っているのは不思議だ」とした。
最後の、「不思議だ(ミステリー)」とした部分が、メディアでは取り上げられていたが、その後に議長は 「FOMCメンバーは来年にはインフレ率が2%に近づくと予想している。インフレ率の低下は一時的なものだと判断している」と、依然として「一時的」としていた。引き続き今後のインフレ関連データに市場が反応することになる。
今回のFOMCは、イエレン議長の任期が来年2月に迫っており、その去就が不透明な中でのこと。来月13日には、フィッシャー副議長が辞任する予定で、そうなるとFRBも(クォールズ副議長が承認されるとして)当面3名の空席を抱えたままでの運営となることから、先行きトランプ大統領による指名人事の内容如何では方向性が変わることもあるだろう。金融政策に“断層”が生まれることはないと思うが、影響は避けられないだろう。
金については、本日のNYの内容がどの程度の下げになるのか注目となる。FOMCの翌日に改めて買われたり、売られたりするのがパターン。今回は後者でどれだけ売られるか。ロングの整理にむしろ歓迎すべき下げとなる。