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NHK内部が激変し、劇的にドラマが面白くなった「最大の理由」…前会長時代は月に20人以上のペースで職員が辞めていった

2024年08月13日 | 社会・経済

YAHOOニュース8/13(火)

 NHK連続テレビ小説「虎に翼」が好評なのは知られている通り。同局「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(火曜午後10時)も評判高い。この放送枠の前作「燕は戻ってこない」も話題になった。今、ドラマ界はNHKを中心にまわっていると言っても過言ではないくらい。同局で何が起きているのか。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

 

「虎に翼」は佐田寅子(伊藤沙莉)を主人公とするリーガルドラマ。ほとんどのリーガルドラマは現実と懸け離れているため、法曹関係者は冷ややかに観るものだが、この作品は違う。

 元東京高裁部総括判事の弁護士・木谷明氏(86)は筆者の取材に対し、作品のリアリティに太鼓判を押し、内容についても「素晴らしい」と絶賛した。リーガルドラマが現実から逸れるのは、そうしないと面白くならないからだが、「虎に翼」は事実に沿っていても面白い。

 思想家で神戸女学院大名誉教授の内田樹氏はこの作品の腹の括り方を評価する。7月30日放送第87回で、関東大震災後に起きた朝鮮人虐殺に触れると、同日のX(旧ツイッター)に「日本社会の朝鮮人差別を正面から描くという製作陣の覚悟を感じる」と投稿した。

 多くの研究者が事実と認定し、東京都が出版した『東京100年史』(1972年)にも記載があるが、小池百合子・東京都知事(72)が歴代知事の続けてきた犠牲者追悼式への追悼文送付を止めた。このため、事なきを得ようとする制作者なら触れないだろう。

 民放は「虎に翼」の放送自体が無理に違いない。民放が避けて通りがちな男女差別や民族差別の問題に奥深く踏み込んでいるからである。この作品の人気の一因は「民放では観られない内容」だからではないか。

 河合優実(23)が主演している「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」も評判が高い。約1年前にBSプレミアムで放送された作品が地上波に移行されたもので、BS放送時はギャラクシー賞奨励賞やATP賞テレビグランプリのドラマ部門奨励賞などを得た。

 新しいタイプのホームドラマで、河合は兵庫県神戸市の高校3年生・岸本七実に扮している。地頭が良くて明るく、ユーモアのセンスが抜群の女性だ。

 七実の父親・耕助(錦戸亮)は5年前に急性心筋梗塞で他界した。母親・ひとみ(坂井真紀)は整体院で働き、七実とその弟・草太(吉田葵)との生活を支えている。朗らかな女性だ。中学2年生の草太も明るい性格であるものの、ダウン症であり、やっと1人でバスに乗れるようになったばかりだった。

民放とは障がいの捉え方が異なる

 ひとり親家庭で、ハンデのある草太がいるため、周囲には岸本家に同情する向きもあった。もっとも、当の岸本家にはお門違い。仲良く幸せに暮らしていた。幸不幸は他人が決めることではない。幸せを決める物差しも存在しない。それをこのドラマは教えてくれる。

 ひとみはその後、大動脈解離で倒れ、車椅子での生活になる。その後ある時、 母娘で慟哭した。七実がひとみの車椅子を押して街に出た際、目的地だったカフェの入口に段差があったために入れず、道行く人も冷淡だったからだ。

 七実はしゃくり上げながら「ママ、一緒に死のうか」と言った。しかし、こう付け加えた。「ちょっと時間頂戴。ママが生きていたいと思うようにするから」。

 ひとみが将来に希望を持てるようにするには、どうすればいいのか。七実はそれまで興味のなかった大学進学を決意する。選んだ学部は人間福祉学部だった。

「やさしい社会にして、あのカフェの入口の段差、ぶっ潰す!」(七実)

 七実は草太を疎んじる人間も許さない。家族と自分が切り離せないのである。

 やはり民放ではつくれそうにない作品だ。民放作品に障がい者が登場する場合、どうしてもお涙頂戴にしてしまうからである。この作品は違う。障がいは不自由ではあるものの、不幸ではないという考え方が根底にある。障がいを悲劇にしてしまいがちな民放作品とは土台から異なる。原作が若手作家・岸田奈美氏(33)の自伝的エッセーなのが大きい。

 この作品が放送されている火曜日午後10時台の前作は「燕は戻ってこない」。やはり好評だった。 この作品も民放ではつくれなかっただろう。第1に代理出産がテーマだったからである。民放では前例がないに等しい。

 作家・桐野夏生氏(72)の同名小説が原作。非正規労働者として働く29歳の貧しき独身女性が、裕福で子供のいない夫婦の依頼で代理母となる。3人にとって当初はビジネス感覚だったものの、どんどん脱線していく。

 代理母となる大石理紀(石橋静河)は病院職員としてフルタイムで働いているが、非正規なので手取りは月約14万円。男女ともに20代前半でお洒落なマンションに住んでいる民放作品の登場人物とは異なる。

 代理母を依頼するのは元世界的バレエダンサー・草桶基(稲垣吾郎)とイラストレーターの妻・悠子(内田有紀)。悠子が不妊症だった。報酬は計1000万円。理紀の子供は出産後にすぐ夫妻に引き渡すことになっている。

 ほかにも条件があった。アルコールは口にしないこと、遠出はしないこと、ほかの男性とは関係を結ばないことなどである。理紀はこれらの条件を承諾した。あくまでビジネス感覚だった。

 ところが理紀は条件をことごとく破ってしまう。遠出をして、酒を飲み、ほかの男性2人と相次いで関係した。直後に妊娠したため、父親が分からなくなってしまった。

生活保護もドラマ化

 一方で悠子は理紀の行動を大目に見る。寛容なわけではない。基との暮らしを守るため、代理母プロジェクトを失敗させたかったのだ。一方、基の子供が欲しい理由は自分の遺伝子を残したいから。悠子の気持ちは二の次。エゴイストだった。

 リアリティに満ちた作品だったものの、登場人物の誰にも共感しにくかった。この点でも民放での作品化は難しかったはず。民放作品はほぼ例外なく共感を求める。ちなみに欧米ドラマは登場人物に共感できないものが多い。ドラマは共感できなくても面白くなるのである。

 5月6日に放送されたスペシャルドラマ「むこう岸」も大きな反響を呼んだが、やはり民放で放送するのは無理だったはず。生活保護家庭で暮らすヤングケアラーを中心に物語が進むからである。世間には生活保護を批判する向きもある。そういったテーマを民放は避けることが多い。

 主人公は生活保護家庭で暮らし、母親の介護をする中学3年生の佐野樹希(石田莉子)。やがて家庭の内情がクラスの男子にバレてしまい、酷い嫌がらせを受け、意気消沈する。看護師になる夢も捨てた。

 これに対し、元ケースワーカーは「生活保護は未来への投資なんだよ」と励まし、看護学校に進学できることを教える。その過程で行政の怠慢や生活保護批判の愚かさも描いた。やはりNHKでしかつくれなかった。

 どうしてNHKドラマは腹が据わっているのか。まずドラマの制作を担当するメディア総局第3制作センターは独立心が旺盛で、それぞれのドラマの制作統括は社内外から干渉を受けない伝統があるからだ。

 連続テレビ小説と大河ドラマはNHKドラマの生命線として高視聴率を求められるが、ほかの作品は質が良かったら文句を言われない。その分、文化庁芸術祭など大きなドラマ賞を最も受賞しているのはNHKである。国内のみならず世界中でドラマ賞を獲っている。

 例外だったのは元みずほフィナンシャルグループ社長・会長の前田晃伸氏(79)が会長だった2020年1月~23年1月。NHKドラマは失速気味だった。

 前田氏は故・安倍晋三元首相を囲む経済人の集まり「四季の会」の元メンバー。その縁で会長になると、若者の視聴者を強く意識し、2022年度から平日午後10時45分から同11時台を若年層ターゲットゾーンとした。まるで中高年の視聴者の斬り捨てだった。

 事実、高視聴率だった中高年向け健康情報番組「ガッテン!」は2022年2月に打ち切ってしまった。また、ドラマも含めた番組の合理化を進め、外部スタッフを増やした。これでは制作陣がやる気をなくす。前田会長時代には月20人以上のペースで職員が辞めていった。

 前田氏の在任中に生まれた朝ドラが、黒島結菜(27)主演の「ちむどんどん」(2022年度前期)である。沖縄の本土復帰40周年を記念した作品でありながら、政治に翻弄され続けてきた事実が全く描かれなかった。自民党への気遣いだったのか。タブーに斬り込んでいる「虎に翼」とは大違いである。

 外部からの会長はプロパー理事の意見を聞くことが常態化してきたが、前田氏はワンマンだった。

 一方、日銀出身の現会長・稲葉延雄氏(73)は以前と同じくプロパー理事の声を参考にすることで知られる。常識人だ。前田色の一掃がNHKドラマの好調につながっている。

デイリー新潮編集部

 

高堀冬彦(たかほりふゆひこ)

放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。


なるほど、そんな事情があったのですね。
わたしはテレビをまったく見ないのでドラマの良しあしは他人の評価を参考にするしかない。
テレビを見なくなったきっかけは、テレビデジタル化の時を2年ほど過ぎたころ。
デジタル化によって、ベランダに備え付けられていたアンテナではだめでコンクリート「電柱」を家から5.6メートル離れたところに埋め、地上11メータにアンテナを設置したのである。
ここは豪雪地帯。
日頃のメンテナンスが欠かせない。
しかし「電柱」には何の足場、階段もついていない。
「契約書」を読むと、設置後のメンテナンスはすべて自分でやらなければならない。
雪でアンテナの向きが変わるごとに「高所作業車」を借りてか!
アホらしくなってそのままアンテナはあっちの方向を向いたままである。
もちろん、「受信契約」は破棄、おカネは返してもらった。
今はネットで大方のものは見れるので不便さはあまり感じていない。