電車でもネットでも「痴漢の不安」から受験生を守るために
つなげる2023.01.12
小林明子
大学入学共通テストを前に、警視庁や各鉄道会社が痴漢を防ぐ取り組みをはじめています。インターネット上の卑劣な書き込みに受験生が不安を募らせないように。安心して試験会場まで向かえるように。受験生を応援する多くの人たちの連帯が生まれています。
神戸市に住む自営業の山中遥さんは、「関西の鉄道各社の痴漢対策がここ1年で進んだ実感がある」と話します。
「以前は、被害者に寄り添った対応をしているとはいえない会社もありました。今は、温度差はあるものの各社とも痴漢撲滅の啓発活動を進めてくれています」
山中さんは、ジェンダー平等について地域で話し合う「東灘区ジェンダーしゃべり場」の活動として、1年前の2022年の大学入学共通テスト前に、阪急電鉄、阪神電鉄、JR西日本、神戸市交通局、神戸新交通の5社に痴漢対策を申し入れました。
2023年の共通テストに向けて改めて、兵庫県議の喜田結さんや作家のアルテイシアさんらと各社を訪問し、共通テスト当日に対策を強化することや、痴漢の発生に備えた訓練の実施などを申し入れました。
「痴漢祭り」悪質な投稿
大学入学共通テストの日に痴漢対策を求める背景には、Twitterでの悪質な投稿があります。
「試験当日は遅刻できないため、声をあげたり通報したりしづらいだろう」といった理由をあげて、「痴漢し放題」「痴漢祭り」などと犯罪をほのめかすような投稿がここ数年、共通テスト前に増えているからです。
こうした卑劣な投稿に抗議するため、2020年にTwitter上でハッシュタグ「#withyellow」が生まれました。また、実際に黄色の服装や持ち物を身につけて電車に乗り、受験生を見守っていることを表明する動きも広がっています。
山中さんたちも1月14日の朝、黄色の帽子やマフラーを身につけて駅のホームで見守ったり、「痴漢抑止バッジ」を配ったりする活動を実施します。
「巡回や痴漢防止のアナウンスをはじめた鉄道会社もあり、痴漢が犯罪だという認識が広がってきていると感じます」(山中さん)

痴漢を目撃したら
大学入学共通テスト当日の痴漢対策は、全国に広がっています。
東京都交通局は1月11日から、新しい痴漢対策ポスターを都営地下鉄の駅構内や車内に掲示しました。東京都立大学の学生たちの意見を取り入れ、「助ける準備、できていますか?」をキャッチコピーに、車内非常通報器、スマホアプリ、声かけなど、痴漢を目撃した人たちがどのように行動すればよいかをわかりやすく紹介しています。

「痴漢抑止バッジ」を無料配布している一般社団法人痴漢抑止活動センターは、学生に向けた動画「学生に知ってほしい痴漢の真実」を公開しています。
「痴漢が100%悪いのであって、あなたは悪くありません」としたうえで、痴漢から自分を守るための「回避」と「対処」の方法を解説しています。
追試験を申請できる
独立行政法人大学入試センター総務課によると、もしも痴漢の被害に遭って試験に遅刻した場合には、追試験の受験を申請することができます。遅刻の理由を集計していないため、これまで実際に痴漢の被害によって試験に影響があった受験生がいるかどうかは把握していないということです。
痴漢の被害は、追試験の申請対象となる「試験場に向かう途中の事故又はやむを得ない事由」に該当するため、受験票に記載されている「問合わせ大学」にまず連絡します。その日の試験終了時刻までに受験票と「事故又は事由が確認できる証明書等」を「問合わせ大学」に持参して申請し、許可されれば追試験を受けることができます。
著者
小林明子
OTEMOTO創刊編集長 / 元BuzzFeed Japan編集長。新聞、週刊誌の記者を経て、BuzzFeedでダイバーシティやサステナビリティの特集を実施。社会課題とビジネスの接点に関心をもち、2022年4月ハリズリー入社。子育て、教育、ジェンダーを主に取材。
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受験生を痴漢から守れ
共産党 政府に対策強化要請
「しんぶん赤旗」2023年1月14日
国会議員団と4都県議員ら(ほか全国都道府県でも)
日本共産党国会議員団と党東京都、千葉、神奈川、埼玉各県議員団は13日、大学入学共通テスト(14、15両日)を前に、政府に対して受験生をねらう痴漢を防ごうと、加害防止と被害者の救済対策強化を申し入れました。田村智子、吉良よし子、山添拓各参院議員と池川友一、福手ゆう子、米倉春奈各都議、みわ由美千葉県議、大山奈々子神奈川県議、前原かづえ、秋山もえ両埼玉県議が参加し、申し入れ書を関係省庁に手渡しました。
申し入れ書は「痴漢は、最も身近な性暴力の一つであり性犯罪」だと強調。本格的な受験シーズンを迎え、すでにSNS上に受験生を標的とした痴漢をあおる投稿が散見され、「大事な入試を控えた受験生には通報されないだろうと見越したものでもあり極めて悪質」と指摘。5項目にわたって政府として全国的な対策強化にとりくむよう主張しています。
参加者は「都議団のネットアンケートで、女性専用車両について『増やしてほしい』『専用車両の趣旨や意義の説明を』などの声が多く寄せられた」(米倉氏)、「共通テスト時にネット上で痴漢行為をあおる投稿があるとの情報を受け、県議団として知事に申し入れを行った」(秋山氏)などのとりくみも交え、痴漢加害防止と被害者救済の強化を求めました。
文部科学省の担当者は「12日付で、大学入試センターのホームページ上で受験を受けられない『やむを得ない事由』に事件や事故とともに、痴漢被害を例示した。追試験を受けられるように対応する」と答えました。
「受験生をねらった痴漢の加害防止と被害救済の強化に関する申し入れ」
痴漢は、もっとも身近な性暴力の一つであり性犯罪です。
本格的な受験シーズンを迎え、すでにSNS上に受験生を標的とした痴漢をあおる投稿が散見されます。卑劣な犯罪である上に、大事な入試を控えた受験生には通報されないだろうと見越したものでもあり極めて悪質です。
日本共産党は、国会及び各地の地方議会で痴漢や盗撮の加害防止と被害救済の対策強化を求めてきました。政府として、この時期に合わせて全国的に対策を強化するよう、下記のとおり申し入れます。
記
1.中学校、高等学校、大学などの受験シーズンに、痴漢加害を起こさせないよう、公共交通機関における対策を普段以上に強化すること。
鉄道事業者を含めて関係機関と連携し、駅係員の増員、電車内の巡回警備、警察官による巡回を強化すること。
2.「痴漢は犯罪」など、痴漢加害防止のためのアナウンス放送や電車内の動画、電光掲示板、SNSでの呼びかけなどを強化するよう鉄道事業者に求めること。
第三者が行動の必要性を具体的に意識できるよう、「アクティブ・バイスタンダー(状況に応じて行動する傍観者)」の考え方を取り入れ、とりくみを行うこと。
3.性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターや警察など痴漢被害に遭った際の相談機関について広報すること。
4.痴漢被害のために大学共通テストに遅刻する場合、救済措置の対象となる旨を周知すること。また、他の入試についても同様の対応となるよう協力を依頼すること。
5.「痴漢ゼロ」に向け、政府が検討中の「痴漢撲滅パッケージ(仮称)」を早急に策定し、加害を防止するという立場を明確にした実効ある対策を行うこと。
共通テスト始まりました。卑劣な輩です。
みなさん!
「助ける準備できてますか?」
もし、同じ時間に電車、バスに乗るときはぜひ見守りお願いいします。
また、黄色のものを身に着けたり、持つことも。