日刊ゲンダイDIGITAL 2019/11/02
決して「君子は豹変す」ではない。方針などあてにならない政権の単なる「朝令暮改」。いや、まだ何ひとつ改まってさえいないのだ。
萩生田文科相が1日、大学入学共通テストに導入される英語民間試験の来年度実施の延期を表明。今後は民間試験の活用の有無も含め、抜本的な制度の見直しを行い、2024年度の実施を目指すという。
この日朝、まさに英語民間試験の「共通ID」の受け付けが開始。申込先の大学入試センターには文科省から延期決定の連絡はなく、予定通り報道陣への説明会が行われた。メディアが事前に「延期検討」と報じていたとはいえ、ドタバタした方針急転劇には世紀の破廉恥政権の錯乱と迷走、なりふり構わぬ悪あがきが、くっきり浮かぶ。
英語民間試験を含めた入試改革は、第2次政権発足直後に「教育再生」を掲げた安倍首相の肝いり政策。13年5月に自民党教育再生実行本部がまとめた第2次提言に端を発し、主に英語を話す能力が「現行のセンター試験では測ることができない」との理由が導入のタテマエとなった。
当事者である大学や高校、受験生を議論の片隅に追いやった政治主導による制度設計が、一気に逆風にさらされたのは、萩生田本人の「身の丈」発言がきっかけだ。
英語民間試験は受験年度の4~12月の間に受けた英検やTOEFL、ベネッセコーポレーション実施のGTECなど7種のうち、共通IDを使って受けた最大2回分の成績が大学に通知され、合否に反映される。金銭的余裕があれば事前に何度も試験を受けて慣れることができる。また試験会場は都市部に集中しがち。
地方在住者には交通費や宿泊費など経済的負担が重い上、受験料が1回2万5000円を超える試験もある。
カネを使えば使うほど有利な制度設計には、導入を決めた当初から専門家たちが「住む場所や家庭の経済状況によって不公平が生じる」と指摘してきた.
先月24日夜のBSフジの番組で、この点を聞かれた萩生田はこう言い放ったのだ。。
「『あいつ予備校通っていてずるい』と言うのと同じ。裕福な家庭の子が(民間試験の)回数を受けて、ウオーミングアップできるようなことはあるかもしれないが、そこは自分の身の丈に合わせて2回を選んで勝負してもらえれば」
さらに地方など試験が受けにくい環境については「人生のうち1回や2回は故郷から出て試験を受ける、そういう緊張感も大事」と言及した。格差を容認しながら、根性論で制度の不備をごまかす「受験指導」――。
ただでさえ、家庭の経済力に比例した「教育格差」が問題となって久しいのに、教育機会均等の理念を守り、格差を是正すべき文科大臣の資質を疑う開き直り発言は案の定、大炎上。野党の追及を招いた。
制度見直しは二の次で逃げを打つのが最優先
どこの地域や家庭に生まれるかは選択できないのに、都市部や裕福な家に生まれなかったことすら「自己責任」。萩生田の身の丈発言には安倍政権の冷酷さがにじむが、図らずもこの発言が英語民間試験の構造的欠陥をあぶり出し、ついには導入延期に追い込まれるとは、皮肉な話だ。
今さら萩生田が「自信を持って受験生の皆さんにおすすめできるシステムになっていない」としおらしく語っても、薄気味悪いだけである。今年6月、国会に民間試験導入中止を請願した学者有志のひとり、東大教授の阿部公彦氏(英米文学)が言う。
「延期は当然で遅いくらいです。場当たり的な対策では解決できない欠陥が多々あり、先送りではなく、白紙から制度を改めて欲しい。新たな検討会議を設置し、今後1年をめどに結論を出すとのことですが、反対派も含め、広く人材を募り、議論すべきです。ただ、今回の延期は身の丈発言を取り繕えなくなって、とりあえず逃げを打った印象が強い。本気で制度を改修する気があるのかは疑念が残ります」
文科省の豹変もフザケている。阿部氏らの国会請願後、9月には全国高等学校長会が地域格差や経済格差への対応が不十分などとして文科省に導入延期を要望。いくら欠陥を指摘されても聞く耳を持たなかったクセに、大臣がバカ発言で窮地に立たされた途端、見送りに応じた。
この政権につきまとう忖度臭がプンプン漂うが、前出の阿部公彦氏は「文科省が強行突破を諦めたのはこれ以上、追及が強まることで隠したがっていた制度の闇の部分がつまびらかになることを恐れたのではないか」と指摘する。
実際、英語民間試験の導入を決めた文科省の有識者会議の傘下に設置された協議会には、ベネッセの高校事業部GTEC事業推進課長や日本英語検定協会の制作部研究開発主任らが名を連ねていた。有識者会議で明海大外国語学部教授の大津由紀雄氏が「明らかに利害の絡む人が協議会メンバーなのはおかしい」と声を上げても、文科省は知らんぷりだった。
民間試験導入には入試をビジネスチャンスと捉えたロコツな利益誘導の疑いが横たわるのだ。
■やましさがあるから辞任ドミノに怯える
ましてや、9月の内閣改造から1カ月半で先週の菅原前経産相に続き、1週間足らずで河井法相も辞任。「週刊文春」が発売されるたび、重要閣僚のクビが飛ぶ異常事態に加え、閣内には国会質問流出の「責任撤回」答弁の北村地方創生相や、揃ってヤクザ絡みの疑惑を抱える武田国家公安委員長、竹本IT担当相、田中復興相が控える。
その上、萩生田まで野党の追及で火だるまとなり、辞任に追い込まれたら政権には大打撃。それゆえ、ボロ儲けを企んだ民間試験の事業者や予行演習として何度も英検を受けていた受験生を振り回そうが、お構いなし。
この政権は辞任ドミノを恐れるあまり、サッサと英語民間試験問題の幕引きを図り、延期を決めたのに過ぎないのである。
現場の混乱など顧みず、とことん我が身大事の権力亡者の無責任と、いい加減さには業者も受験生ももう唖然だろう。政治評論家の森田実氏はこう言った。
「結局、安倍政権の入試改革は教育さえビジネスの手段にした利益誘導に過ぎないのではないか。バレたら内閣が吹っ飛びかねない醜悪な事態を隠している感じがします。国民に説明できないことをやっているとしか思えません。菅原、河井両大臣に詰め腹を切らせたのも、国会の委員会出席の当日。国民に説明できないから、早めに逃がしてしまう。政権維持のためにトカゲの尻尾を切り続け、今や胴体まで刻んでいる印象です。週刊誌任せの新聞社もだらしないですが、やましさがあるから腐敗政権は辞任ドミノに怯える。富士川の戦いで水鳥の羽音を敵の襲来と勘違いして逃走した平家の心境でしょう」
かくなる上は国民が追及の攻勢を強め、おごれる政権を壇ノ浦まで追い込み、滅亡させるしかない。
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英語民間試験延期 高校生が政治を動かす
「しんぶん赤旗」2019年11月3日
「今までは声をあげても何も変わらないと思っていたけれど、声をあげる人がいるから変わるんだと思えた」―。大学入試共通テストへの英語民間試験の導入が延期となったことを受け、国会を訪れた高校1年の女子生徒が喜びを語りました。この問題で、延期決定までの道のりを先導したのは当事者である高校生の声と運動でした。
若者の間で「どうせ変わらない」「権力者は寄り添ってくれない」といった“政治不信”が広がる中、この問題を機に、全国の多くの高校生が立ちあがりました。国会前での抗議や野党合同ヒアリングで現場の声を強く訴えたり、1週間で4万を超えるネット署名を集めるなど、高校生の勇気ある行動は、国会での追及や延期法案提出などの野党の動きの原動力となりました。
一貫して運動に参加してきた高校2年の男子生徒は「これまで声をあげてきたことが初めて実った経験をした。おかしいと声をあげたことに応援・賛同してくださる方が増えて、こうして改悪を止める第一歩を踏みだせた」と述べました。
この運動は、若者たちの中に政治は自分たちのためにあるという意識を芽生えさせました。声をあげ続ければ必ず政治は変えられる―。そう語る高校生に心を揺さぶられました。(み)
とうとう雪マーク出現です。
今日、屋根のペンキ塗り終わらせました。
もう少し手を入れたいところですが、まだ足の具合が完璧ではないので、やめました。納屋もやりたいのだが・・・・・