ごまめ~の~いちょかみ・Ⅱ

趣味(落語と本)の話と大好きなうどんを中心に、ごまめになってもいちょかみで幅広くお届け

かたすみさがし~田中ましろ

2018-03-29 05:05:05 | 本の少し
かたすみさがし (新鋭短歌シリーズ8)
クリエーター情報なし
書肆侃侃房

☆☆☆

いいな、才能のある人って、いいな。

何気なく詠われているのに、何か、違う。 いいな。

そんな、歌が、ならぶ、田中ましろ、さんの、歌集です。


気になった歌を・・・・

山あいの町に異物としてふたり歩めば蝉の罵声を浴びる

待ち人は来ましたかって街じゅうの人に問いたい初春の駅

ちぎったらもう戻らないエイヒレを分け合うことも答のひとつ

かつおぶし揺れるリビング 隙のないあなたと冷奴をくずしあう

ポケットに入れた切符は折れ曲がり使えなくなる一歩手前へ

夜に散る桜 誰にも見られずに生きてくほうが難しかった

ストライク投げても受け止めないくせにミットかまえて「恋」なんて言う

いちばんの自分の敵は自分だしあなたは敵というか、 素敵だ

明るめの曲を選んで歩く道 はじめから間違っていた道

嘘ばかりだった口から (つかれたよ) こぼれて落ちたものをあつめる

病室でお帰りと言う 帰るべき場所ではないと知りつつも言う

たくさんの嘘をあなたについたけど大丈夫って嘘は初めて

生きるとは何を残すかではないと父は言う 何も残さないと言う

遠かったでしょう答のない問いをふたりの真ん中あたりに置いて

自由すぎる呼吸ふたつは夕間暮れふたりの距離を測れずにいる

大阪はとてもきれいな夕陽ってメールしかけてやめる指先

コーヒーに溶けるミルクを眺めつつ思いだせない記念日ひとつ

 3階の窓から空に向け飛ばす輪ゴム 神さま僕はここだよ








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