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ごまめ~の~いちょかみ・Ⅱ

趣味(落語と本)の話と大好きなうどんを中心に、ごまめになってもいちょかみで幅広くお届け

八月のフルート奏者~笹井弘之

2017-08-08 05:05:05 | 本の少し
八月のフルート奏者 (新鋭短歌シリーズ4)
クリエーター情報なし
書肆侃侃房

☆☆☆

続けさまに、また短歌集。

この前お伺いした、虫武一俊さんの「羽虫群」の批評会で、
隣に座られた東京から来られたお嬢さんに、本の後ろにあった
新鋭短歌シリーズのお知らせの中で、お奨めの作家さんはと尋ねると
お教え頂いたのが、この笹井宏之さんのこの本。

穂村さん以外の歌集としては、二冊目か。

歌集を見て思ったのは、その人となりが自叙伝のごとく語られていることです。

小説のフィクションと違って、短歌ってノンフィクションの世界。
歌人自身の私生活までが、あからさまになるんですね。

インターネットを中心に幅広く若者に愛された笹井さんの作品。


またしても、・・・・・ごまめが気にとめた歌を。

君が差すオレンジ色の傘を伝うたった一粒の雨になりたし

気兼ねなく好きだと言えるその人の手は僕よりも少し冷たく

他愛無い質問「好きな色は何?」答える「今日は水色でした」

味付きの海苔が好きとか嫌いとかそんな話の出来る食卓

携帯のカメラでは上手く撮れぬからメールに書いた「夜空を見なよ」

わたしくは運命という者ですが実はわたくしも頭痛持ちです

追い風に追い越されては追い付いてバトンを渡す春の真ん中

想うとは夏の動詞か汗と汗の間にいよよ強くなりたる

混沌を絡めて口へ放り込む パスタの白きああ白きスープ

呼び合える名があることの嬉しさにコーラの缶の露光る夏

マフラーのほつれにゆびを這わせつつうつつのわれにふるるゆめのわれ

告白のはじめの言葉はらはらと落ちるゆきやなぎの散歩道

わがうちに散る桜あり 君の名を呼ぶとき君はきらきらと風

涙にも温度があるということを頬のあたりに記憶してゐる

わがうではもうすぐみずに変はるゆゑそれまでぢつと抱かれてゐよ

かなしみがほうれん草にごまをふる音のなかよりあらはれいでぬ

前の世に出逢ひてゐたるあかしかと思ひぬ なにか君が懐かし

あすひらく花の名前を簡潔に未来と呼べばふくらむ蕾

ひとときの出会ひのために購ひし切符をゆるく握りしめたり

線香も花も持ちあはせてゐないからこの歌を代はりにどうぞ

ゆつくりと下から順にひび割れてオン・ザ・ロックの氷さやけし

親子丼親子でたのむゆふぐれはただ訳もなく笑ひあふなり

悲しみが痛みへ変はる瞬間の途切れさうなる我が蝉の声

西瓜のかは白磁の皿に乾かせて真夏真昼の夢に入りゆく

最後に

八月のフルート奏者きらきらと独り真昼の野を歩みをり


殆どの歌人は、新仮名、旧仮名いずれかで作歌するものらしいが、
ここにあるように、新旧二つの仮名使いを使い分けしながらの
笹井宏之さんは、稀らしい。

でも、旧仮名使いって難しいものですな・・・・。

ますます、色んな人の短歌、読みたくなりましたな。










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