短歌ください (ダ・ヴィンチブックス) | |
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☆☆☆
この本は、「ダ・ヴィンチ」に2008年5月号から2010年10月号まで掲載された
「短歌ください」をまとめたものとか、読者の投稿による短歌に、穂村弘が選び、
多少の選評を加えたもの。
投稿作品でありながら、あまりの、読者の切り口の斬新さに驚く。
短歌を読み、穂村さんの選評を読み、最後に作者の性別と年齢を見る。
納得する時もあれば、えぇと想像していた人物との差異に、もう一度読み直すこともたびたび。
短歌の中に、含まれる情景、心情、を想像摺るのは、落語の世界に相通じるものがある。
気に入ったというか、解りやすかった、作品を紹介。(あえて、作者、性別、年齢も列挙)
[恋愛]
銀行で暗証番号入れるたびに隣の君にゴメンと思う (編集部S・女・30代)
ごめんなさい。絶対告白しないから、どうか近くに置いて下さい (百舌・男・18歳)
もし俺が宇宙人でもとりあえずいい人止まりで終わるだろうな (木下侑介・男・22歳)
[数]
「日本野鳥の会」にいたという人よ 私をかぞえたことありますか (やすたけまり・女・47歳)
四十肩 三段腹に 二十あご 一重まぶたで ツンツルあたま (水野川順平・男・32歳)
おにぎりを三個持たせる母が言う余れば誰かに差し上げなさい (ヒポユキ・男・44歳)
[音]
最後だし「う」まできちんと発音するね ありがとう さようなら (ゆず・女・18歳)
[眠り]
つむってもひかりが入ってくるのです。うすい瞼はお嫌いですか? (いさご・女・19歳)
[家族]
野菜ならどんな物でも漬け物にすると宣言父の信念 (晴家・男・26歳)
靴たちのそれはそれは美しく並ぶ玄関にいる (陣埼草子・女・31歳)
[機械]
ケータイの電池の値段ケータイで調べてるうちに電池が切れる (ヒポユキ・男・44歳)
考えることはあっても想うことのないロボットに僕はなりたい (まつもとよういち・男・33歳)
[匂い]
どの道を帰ってきたの全身に悲しみの匂いこびりついてる (西野明日香・女・47歳)
君は君の匂いをさせて眠ってる同じシャンプー使った夜も (ひろ・女・19歳)
[乗物]
午後28時の人と隣り合い電車に揺られている午前4時 (亜にま・女・20歳)
[時間]
奈良の鹿虚空を見つめ動かないそこだけ時間が止まっているのか (ゆり・女・18歳)
一秒でもいいから早く帰ってきて わかめがすごいことなの (伊藤真也・男・35歳)
[音]
CDを手にしただけで音楽を聴けたら良いな天使みたいに (麻花・女・26歳)
ヴォリームをゼロに落としたラジオから一番好きな歌が聴こえた (わだたかし・男)
[飲食]
もう二度と人の食べ物を笑わない一番低いところから落ちる (あんぷ・女・25歳)
白玉の歯にしみとおる秋の酒はしづかに飲むべかりけり (若山牧水)牧水でした。
ちょっとまてそのタイミングじゃないでしょう八宝菜のうずらのたまご (チヲ・女・25歳)
[お金]
百均でこれはいくらと訊いてしまう青空よあの街まで届け (虫武一俊・男・28歳)
[薬]
透明になれる薬を飲んだあと誰もわたしを探していない (岡本雅哉・男・36歳)
ねぇ、あしたふたりで下剤飲もうかと日射しのなかできみは笑った (イマイ・女・31歳)
[癖]
じゃんけんでいつも最初にパー出すの知っているからわたしもパーで (須田千秋・女・)
[日本]
“一日の翌日二日は日曜日”素人泣かせのしかくな記号 (やかず・男・23歳)
(ついたちのよくじつふつかはにちようび)四角と四画。
手触りで自分国を知っている例えば蜜柑、お茶椀、たわし (鯨井五香・女・25歳)
[トイレ]
あと一歩前へ トイレの貼紙をホームの端で思い出してる (岡本雅哉・男・36歳)
[記憶]
「いつまでも変わらない味」と書かれているくせに僕には変わった気がする (カエル目隠し・男・22歳)
[虫]
大きければ縮小され小さければ拡大されて虫は図鑑に (古屋賢一・男・31歳)
[宝物]
のうみそのいちばんちかいところまでとどくきみのくれたみみかき (こゆり・女・26歳)
[自由]
総務課の田中は夢をつかみ次第戻る予定となっております(辻井竜一・男・29歳)
夕闇の光かすかに反射して老人が老人に譲る車内 (鳩山豆子・女・26歳)
「髪切った?}じゃなく「髪切ったんだね」と自信をもって言えばいいのに (はりぼ・男・19歳)
目の前を電車がとおりすぎる度泣き出しそうな顔をする、あなた (ちゃいろ・女・21歳)
四年間使い続けたケータイの機種変更はすぐに終わった (月下燕・男・37歳)
寝返りをうったら君も少し起き僕を見つけてまたねむる ゆめ (空山くも太郎・男・33歳)
するすると赤いリボンが落ちてゆくりんごの香り終わらない夜 (シラソ・女・24歳)
ヒポユキさんが、二度登場するなんて、私の好みにはやはり一定の基準がありそう。
でも、選んだ中に、牧水が入っていたなんて、結構、自己満足でおます。
今月号の「ダ・ヴィンチ」を買って、最新の「短歌」を読まなければ、
そして、一度投稿してみたくなった穂村弘さんの「短歌ください」でおました。
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