旅芸い者放浪記

前沢政次 ブログ

じっと手を握り

2012-06-22 23:49:49 | 診療
人間の幸せとはなんでしょう。

呼吸不全で療養中、大腿骨頸部骨折。救急でお世話になった病院からわがクリニックにもどるとき、リハビリテーションの専門病院に移ることを決めてきたとケアマネジャーが言ってました。

真に受けたぼくは本人に「○○の病院に行くのですね。ここにいてもいいんだけど」と語りかけると本人はびっくり。「聞いてない」と言うのでした。これはぼくの勇み足。

先日は息子さんとケアマネジャー、理学療法士、看護師長とぼくとが協議しました。

自宅で過ごしたある時期は本人も家族もたいへんだったようです。通所を週に2,3日に入れていたらしく、日中は家族も少し楽ができたものの、通所したくない人を送り出すのは苦労だったと思います。

在宅での過ごし方に無理があったように思います。在宅への訪問サービスの組み合わせは不可能だったのでしょうか?

これからリハビリテーション専門病院という段階ではないように思います。

「嘘であっても在宅」としてリハビリテーションというのもどうか。「在宅という夢」を抱いてがよいでしょうか。

きょうは悩みながら回診しました。

このごろ、この患者さんは声も出せません。かすれた細い声で何か言おうとしています。

きょうはもう話すことはやめたようです。

そっとぼくの左手はこの方の右手を包みます。しばらくしてご自分の胸の前にぼくの手を運びます。

彼の左手も胸にやってきます。両手でぼくの手を包みます。

ぼくも両手を添えます。二人が祈る形で手を包みあい、じっと見つめあいます。

しばらくして、互いの目から涙が落ちます。

ことばは必要ありません。


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