旅芸い者放浪記

前沢政次 ブログ

中川米造先生の遺言

2013-01-14 23:44:06 | 医療制度
遺言とは大げさかもしれませんが、ぼくが大学2年のときからご指導をいただいた中川米造先生の言葉をかみしめています。

さて、昨日の続きはプライマリ-ケア導入の戦略です。

導入にはまず「必然性を考えよ」と教えてくれます。

・・・生活と環境の重視、予防と治療の一貫性、総合性、そして地域での組織化、とくに地域住民の保健医療への主体的関与などを、真剣に考慮しなければならない時期すでにきているという切実感・・・

・・・医療的介入が病人を増やした・・・

・・・(病人を減らす)環境整備を放置しておいて、早期発見、早期治療が予防の原則だという神話をはやしたてて、問題を部分的な医療の世界にもちこもうとする・・・

戦略には

・・・(プライマリ-ケア導入に否定的な医師たちに)責任の自覚と利益を重ねるようにする・・・

・・・生活を含めて関心の対象とするとなると当然地域は特定されるであろう。その地域はできるだけ小さいほうがよい・・・

具体的戦略は

・・・健康とは自らが自らの心身の支配者になることであり、そのことを自覚するためには、地域における生活・環境条件を自分たちで統制できなければならない。そのような自主的な行動による参加を通じて、人々は認識の基本的姿勢を変える。単なる説教や説得では人間は変わらない・・・

・・・とくに地域における保健計画の立案過程に参加することによって、真の健康とはどんなものであり、それがいかにして獲得できるものであるか、もっとも効果的な医療資源の利用のしかたは、どのようなものであるかを、個人としてではなく地域のすべての人々の立場で考え、さんかするようになる・・・

・・・その過程で、健康に及ぼす社会経済的な要因、文化的、心理的、行動科学的要因についての
関心もたかまり、医学においても、単に病気の臓器のみを視野に入れた狭視野の専門性重視、個人の医療施設の採算性のみを考慮した医療からの脱却が可能になるであろう・・・

・・・本当に国民の健康という大きな前提から展開されるのであれば、当然プライマリ-ケアの方向を取らなければならないことは明らかである。ただ放置しておく場合、それへの移行が随分と遠回りをして、無駄を重ね、摩擦も大きいだけのことである・・・

米造先生ありがとうございます。もう一度再出発いたします。この文章が世に出されたのは1983年1月8日の『厚生福祉』という雑誌です。ちょうど30年前になります。