about him

俳優・勝地涼くんのこと。

『少しは恩返しができたかな』(1)(注・ややネタバレしてます)

2007-07-17 01:19:11 | 他作品
2006年3月22日にTBSで放映。
ユーイング肉腫という難病と戦いながら東大に合格を果たしたものの、大学には一日通ったきりで19歳の生涯を閉じた北原和憲さんの、発病から死までの一年十ヶ月をお母様の美貴子さんが綴った同名のノンフィクションを映像化。

ドラマに先立って原作を読んでみて、一番驚かされたのは先生と友達の一種献身的なサポート。
現代にこんな麗しい師弟愛や友情がなお存在していたことに心がじんとなりました。

ジャニーズの中でも演技派の呼び声が高い「嵐」の二宮和也くんを主役に迎え、周囲も地味だが演技派のキャストで固めた。
この「周囲のキャスト」については演技力以外に二宮くんとの演技の相性も考慮されたのか、彼と共演経験があって個人的にも親しい人が少なくない。
母親役の大竹しのぶさん、榊先生役の勝村政信さん、卓球部の友達(キャプテン)役の郭智博くん、そして親友・牧内拓巳役の勝地くん
(キャストの仲良しぶり、現場の和気藹々とした雰囲気が当時の勝地くんの事務所メッセージや二宮くんのブログ「ゲームニッキ」からうかがえました)。

キャスティング以外でも、番宣が控えめだったこと、変にエモーショナルに走らない抑えた演出に、製作スタッフの「本気」を見た気がしました。

勝地くんの演じた牧内拓巳という少年ですが、結構ヒドい子だな、と思います。
こう書くと語弊がありますが、要はストレス耐性が低い、精神的に弱いがゆえに時に周囲を傷つけてしまう男の子という印象でした。

受験のために一人早く卓球部をやめ、懸命に勉強しても思うように成績が上がらない。
一見クールに装っているものの内心の不安を上手くコントロールできず、それがカズくんや卓球部の友達に対する突っかかるような態度となって表れてしまう。
病気による肉体的精神的苦痛をこらえて明るく笑いつづけるカズくんとはまさに好対照。

受験が終わってストレスから解放された後は明るく男気のある少年へと変化し(むしろ本来の姿に戻ったというのが正しいのでしょう)卓球部のメンバーとも仲直りしていますが、カズくんから珍しく弱気なメールをもらったと言って、カズくんのお母さんの前でボロボロ泣くあたりは相変わらず。
面会謝絶になるほどカズくんの病状が悪化している状況で最も辛い思いをしているのは普通に考えれば身内であろう。
その身内であるお母さんにむかって、さらに辛さを増幅させるだろうメールを見せて「カズの病気は治るんだよね?そうだよね?」と訴えてしまう。
親友が死んでしまうかもしれない、その不安感を胸の内に抱えきれず、一番適切でない相手に感情をぶつけてしまう。
嫌味な態度に出るか感情をストレートに出すかの違いはあれど、不安や動揺を表に出さず内に止めておくことができないのは高校の頃と変わらない。

ただまだ二十歳に満たない彼の若さと、その動揺が親友を案じるゆえのものなのを思えば、十分に同情の余地はある。
放映から間もない頃、このドラマの感想を検索していたら、やはりカズくんのお母さんの前で泣いてしまう拓巳の無神経さに言及していた方がいて、「年齢を思えば無理もない」とフォローしつつ「そうした拓巳の性格を勝地涼は上手く表現していたと思う」(概要)と評してらしたのを読んで、我が意を得たりと思ったものでした。

原作には拓巳にあたる人物は存在せず、「医者志望」とか「卓球部を抜けた」とかの設定のみ実在の人物から少しずつ借りて、性格面は全くオリジナルに作り上げられたキャラになっています。
回りの皆がカズくんを気遣い彼に味方する中で、親友でありながら一人突っ張った態度を取る拓巳は物語のスパイス的役割を担っていますが、同時にカズくんと対になる、カズくんの影というべき存在でもあったように思われます。
外見も話し方も大人しそうなのに人一倍強靭な精神力を持つカズくん。外見も態度も強気なのに精神的には存外脆い拓巳。
全く対照的な二人を並べて描くことで、カズくんの強さ、優しさを視聴者に対してより強く打ち出そうと狙ったのではないでしょうか。
そうした製作側の意図に勝地くんはしっかり応えていたんじゃないかと思います。

考えてみればこのドラマの撮影前後(2006年2月)に『幸福な食卓』を撮影してるんですよね。
そちらで演じた大浦勉学はヒロインに対する細やかな気遣いと大らかさを合わせ持ったキャパシティの大きな男の子だった。
ほぼ同時期に正反対と言っていい「普通の少年」を演じているわけですね。

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