失なわれゆく風景

多摩地区周辺の失われた風景。定点撮影。愚問愚答。

隠れ里 2回目

2009年03月01日 | 隠れ里
 隠れ里伝説の場所を訪ねる2回目は、印旛郡和田村大字下勝田から直弥(現佐倉市下勝田、直弥)のあたりです。

<写真のほぼ中央部が伝説の場所>


 さっそく柳田國男の「隠れ里」から引用します。

(引用開始)
また同じ郡(引用者注:印旛郡を指す)の和田村大字下勝田から同直弥へ行く路の田圃に面した崖の中腹にも、隠れ里と称して道具を村民に貸した窟がある。昔はこの穴の中で夜ふけには米を搗く音がしたという。明治三十四五年の頃の土木工事の時、この付近から錆びた刀剣とニ三の什器と二人分の骸骨とが出た。将門乱の時の落武者だということに決したそうである。  ちくま文庫『柳田國男全集 6』pp.391-392
(引用終わり)


 地図で探すと、下勝田へはJR南酒々井駅が一番近いので、当初ここから歩いてみる計画で家を出ました。
 
<左:JR総武本線 南酒々井駅 右:メタンガス発生のため火気厳禁の看板>

 しかし、もう少し詳しい情報を手に入れたほうがいいのではと電車の車中で考え直し、JR佐倉駅で下車して市立図書館に寄ってみることにしました。図書館へは以前行ったことがあり、駅からの路はだいたい覚えていたのですが、念のため確認しておこう駅前の観光案内所に向かうと、自転車が目にとまりました。出発前にインターネットでレンタサイクルの情報サイトを2、3見てみたのですが、そこには佐倉市内の情報が載っていなかったため、思いがけずレンタサイクル(9:00-16:00 500円)を発見して行動範囲が一気に拡大しうれしい気分です。

 図書館で『佐倉市史 民俗編』(昭和62年)をみると、第八章 口承文芸 第一説 伝説 の中に「隠れ里」という項目があるものの(p.741)、場所については、柳田國男の文章と比べてみて、「南向きの崖」という以上にさらに詳しいことは載っていません。ただ、隣の八木の集落までつながる地下道があるという話も伝わっていたということがわかりました。
 また、佐倉市六崎に「たんたん山」といわれるところがありここにも椀貸し伝説があったとも書いてあります。
『根郷風土記』(佐倉市根郷公民館、昭和56年)にタンタン山の場所を示した地図が付いていました。
 『佐倉市史 民俗編』の記述は、ほぼ同じものが佐倉市キッズページに出ています。http://www.city.sakura.lg.jp/kids/sirabe/old_story/old_story_index.htm

 そこで、『根郷風土記』の地図をたよりに、予定になかった「たんたん山」を探してみました。六崎のあたりを行ったり来たりし、おしいところまでいったようですが結局はわかりませんでした。地元の人に聞いたところ、たぶんあの塚のことではないかということで教えられたのが、下の左の写真です。
 
<左:この塚をたんたん山と言ったのではと教えてもらったが確証はない。
 右:それほど遠くない別の場所の墓地の中にも塚があり上に石仏が置かれている>
 
<周辺を探したが結局わからず>

 あきらめて六崎から本来の目的の下勝田に向かって、高崎、天辺を通って直弥に出ました。

<天辺のあたり>

 直弥から下勝田まで(JR線の下をくぐるトンネルあたりまで)の南向き斜面を注意深く見ながら自転車で走りましたが、残念ながらこちらも見つけることはできませんでした。この日はあきらめて、帰り道は「八木」を通ることにします。

<左:JR線下のトンネルの西側が下勝田-直弥の路。右:八木のあたり>
 
 すると途中、「和田ふるさと館」があって、歴史民俗資料室http://www.city.sakura.lg.jp/wadafuru/siryousitu/index.htmの文字が目に止まったので寄ってみました。展示には隠れ里伝説が取り上げられており、だいたいの場所もわかりました。展示をゆっくり見る時間がなかったので、『和田の伝承』という冊子を購入したところ、ふるさと館の人が隠れ里伝説の穴の場所を教えてくれました。 伝説の場所は「下勝田西横穴墓群」という古墳時代後期の横穴墓だそうです。『和田の伝承』には、「下勝田西横穴墓」内部の写真が載っています。
 この日は、時間切れで、「下勝田西横穴墓群」まで引き返して見る余裕がなかったので、翌週もう一度来てみることにしました。
 
<右:翌週ようやく「下勝田西横穴墓群」にたどりつく。説明板は特になく、穴はシダに隠されてよく見えません。左:同所を西側から>
 
 以上で下勝田の隠れ里伝説の探訪は終わりです。しかし、このあたり谷地田の風景が広がっていて、1日やそこらで探訪を終わりにしてしまうには惜しい場所です。どこまでもたんぼ道をたどってみたい気分です。
 
<直弥の浅間神社のあたり>
 そこで、この写真の先の谷津田の一つを、丘にあがって回り込む形で谷頭までたどってみましたのでこれは次回に紹介してみます。
コメント
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