2007年(アメリカ)原題「THE MIST」125分
★★★★☆←独断と偏見による
<出演>
トーマス・ジェーン(「ディープ・ブルー」「パニッシャー」他)
マーシャ・ゲイ・ハーデン
トビー・ジョーンズ
ウィリアム・サドラー
<感想>
スティーブン・キング原作の映画化という前知識のみで見ました。
従って完全に頭の中は、B級ホラーだと思いこんでいたのですが、
違いました。すいません。m(_ _)m
※ 猛烈にネタバレしてます。未見の方注意。
冒頭に得体の知れない「触手」が出てきた瞬間に
また「ドリーム・キャッチャー」かと一瞬冷や汗だったのですが、
いや、私「ドリーム・キャッチャー」大好きなんですよ(^^;;)。
でも、そのうち怪物のことなんてどうでもよくなってくるんです。
そんなことよりも、ドイツ映画の「es[エス]」
やカナダ映画の「CUBE」
のごとく人間が極限の状態に置かれた時の深層心理を鋭く描いた作品であると気づきます。
それがいかに恐ろしいことなのか・・・。
この作品は原作も素晴らしいようですが、上記2作品と並んで映画的にも
非常に興味深い、雨のち晴れ的には「ど真ん中」な作品となりました。
またラストの救いようのなさが、「クローバーフィールド」の比ではない、
近年まれに見る不幸のどん底に突き落としてくれることでしょう(^_^;)。
そういうの苦手という方は、手を出さない方がいいです。
あんな十字架背負って生きていけるわけありません。
私が今まで見た中でも5本の指に入るキツイ終わり方してました。
B級ホラーのはずなのに、こんな展開になるので「?」と思いましたが、
終わってからフランク・ダラボン監督(←ショーシャンク)だと気づきました。
そうだったのか!そう言えばCMやってたような。
そりゃ、普通のB級ホラーになるはずないですね。
もう怪物よりもス-パーの店内で起こることが社会の縮図のようで、
恐ろしいのです。
狂信的な宗教女が先導していく様、神への貢物として犠牲が必要と言い出し、
無実の青年が刺され、外へ投げ出され
(このシーンはソマリアでの米兵を思い出させます。>「ブラックホーク・ダウン」)、
怪物に無残に殺されてしまいます。
しかも、それが正義であるかのように民衆は簡単にそれに加担するのです。
人間は、最後には殺戮に走るものでしょうか。
だから世界のどこかしらで終わることのない戦争が行われているのでしょうか。
そう思うと非常に恐ろしく悲しいことです。
それから、もう一つのテーマが、自分が正しいと思って行った行動は、
状況が変化すれば、実は間違いであったかもしれないということ。
「絶対にボクを怪物に殺させないで。」と幼い息子にお願いされ、
約束し、実際にそうするのですが・・・。
あの時、車中では残ったピストルの弾は絶望の中では、
唯一の「希望」となっていたわけですが(主人公にとっては「悪夢」)、
直後に霧の中から現れる戦車に「あと少し待っていれば、助かったのか」
「間違いだったのか」と後悔しても、もうどうにもならない。
我が子に行った行為が、ほんの数分のことで間違いになる瞬間の絶望感と言ったら。
この瞬間映画館は、息を呑んだように静まり返ったような気がしました。
って見てる人10人もいなかったですが(爆)。
追い討ちをかけるように、冒頭「子供を置いてきたの。自宅まで送って。」と
お願いをしていた女性が軍のトラックに乗って、主人公を見ている目は、
全てを知り、彼を哀れんでいるように見えました。
このラストの間中かかっているBGMが宗教的雰囲気の音楽でぴったりでした。
サントラは、マーク・アイシャムですが、この宗教っぽい曲は、
何と4ADのDEAD CAN DANCEでした!!!!
ほぼ20年ぶりに耳にするアーティストでびっくりしました。
選曲も、グッジョブ!
怪物の造形などは、「クローバー・フィールド」と似たりよったりなんでアレですが、
全体としての出来ばえは満足で、見終わってからしみじみと考えさせられる作品でした。
観客を選ぶ作品ではあります。