道彦の散歩道

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11/05 売れ筋最前線⑰

2014年11月05日 | インポート

【初音ミク】

8月28日、大阪市郊外のコンサート会場は観客約五千人の熱気であふれていた。黄緑色の長髪を二つに束ねた少女がギターを肩に登場すると、割れんばかりの拍手と歓声が起こった。

「ミク最高」
主役はCGで描かれたバーチャル歌手、「初音ミク」、16歳。プロジェクターで映し出されたミクと仲間のバーチャル歌手が生バンドの演奏で、ポップスなど25曲を熱唱した。

曲は全てネットで発表されたアマチュア作家などの作品。「ミク」を開発した「クリプトン・フューチャー・メディア」社長の伊藤さんは「日本人は昔から一般の人が和歌を作って楽しんできた。創作好きのアマチュアリズムの層の厚さがミクを育ててきた」と感慨深げに語る。

「未来から来た初めての音」を意味する「初音ミク」は「歌うソフトウェアだ」。パソコンで旋律や速さ、歌詞を入力すると、女の子の声で各音節を滑らかにつにぎ合わせて歌を作り出す。伴奏も付けられた「アイドル歌手をプロデュースしているような感覚」(クリプトン)を味わえる。

「クリプトン」はパソコンで制作する音楽「デスクトップミュージック(DTM)」向けに、欧米などから仕入れた楽器の音や効果音など「音の素材」を販売する会社だった。数十万程度のDTM作家向けの狭い市場から抜け出そうと、2001年に一般向けに携帯電話の着信メロディー配信を始めた。当時、着メロ開発で交流のあった楽器販売のヤマハから開発中かの「ポーカロイド」を紹介さたのが契機となった。

ポーカロイドはパソコンを使って、人の声を合成して曲を作る技術。それまで楽器の音は再現できても、人の声を滑らかにつなげるのは難しかった。
ポーカロイドもまだ「人であり、人でないような歌声」だった。だが、伊藤さんはその不完全さにかえって魅力を感じた。

新製品の開発に着手し、04年11月、ミクの前身の歌声合成ソフト「MEIKO」を発売した。パッケージにアニメキャラクターのようなイラストを添えたところ、千本売れるヒットと言われる業界で、初年度だけで3千本と異例の売れ行きだった。

「もっと幅広い人が楽しめる商品が作れないか」。06年末、より人間らしく滑らかに歌声を作れるポーカロイド改良版ができたのを機に、「ミク」開発プロジェクトか始まった。

「MEIKO」は東京などでライブ活動している女性歌手の声を素材に使った。しかし、伊藤さんは「プロの歌手のパワフルな声より、かわいらしい16歳の声の方が幅広い共感を得られる」と、声優の声に着目した。机の上でほこりをかぶっていた声優名鑑をめくった。
500人以上の声のサンプルを取り寄せ、「素直で遠くまで通り、機械的になりにくい声」を探し出した。
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作りにも凝った。「16歳、158センチ、42キロ」とプロフィルを設定した。キャラクターはネットで出会った千歳市出身のイラストレーター、KEI(ケイ)さんに依頼した。

そして、07年8月のデビュー。折しもユーチューブなど動画投稿サイトが普及し始めたころだ。発売数日後には自作の「ミク」の歌をネットで発表する人が相次いだ。ネット上には瞬く間に、踊りながら歌う「ミク」のCG動画やイラストがあふれた。
伊藤さんにも「音楽以外の創作活動に広がるのは予想外の展開」だった。さらに創作を活発にしたい、とクリプトンは非営利活動に限ってキャラクターの著作権を解放した。

ソフトの販売本数は11万本超だが、動画やイラストのネットへの投稿数はそれぞれ100万件単位。「ミク」の名付け親で開発責任者の佐々木さんは「ソフト購入者だけでなく、ネット文化全体でミクを盛り上げた」と強調する。

今年5月、「ミク」は米国の人気歌手レディー・ガガの世界公演の前座として登場したほか、ジャカルタのコンサートにも出演し、英語やインドネシア語で歌った。「ネット上に存在するミクに国境はない」と伊藤さん。ミクの世界はどこまでも広がる。

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