道彦の散歩道

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11/04 売れ筋最前線⑯

2014年11月04日 | 日記

【ホテル・ラビスタ函館の朝食】

ビュッフェ台の上で宝石のように輝く山盛りのイクラ。1,2,3,4回-。お玉で遠慮なしにすくい上げ、丼をオレンジに染め上げる。イカとサーモンの刺身をトッピング。自分の好みを100%反映した海鮮丼に、新婚旅行中の奈良県の久保さんは「朝からこんな海鮮が食べられるなんて」と興奮を隠さない。

函館の観光スポット、ベイエリアの赤レンガ倉庫群にある「ホテル・ラビスタ函館ベイ」の朝食は、世界最大の旅行口コミサイト、トリップアドバイザーの「朝食の美味しいホテル」で2011年から2年連続日本一に輝き、昨年と今年も2位を維持する。

2階の朝食専用会場では毎朝、会場30分前の午前6時には数十人かん列をなし、同10時の終了まで1日平均約600人の宿泊客でにぎわう。

約60種類のバイキングメニューは、7年前の開業当時から基本は変わっていない。目玉は「函館の食」の代表として全国に知られる海鮮丼。イクラとイカ、甘えびの刺し身、生タラコを常に用意し、サーモンとマグロの刺し身も日替わりそで登場する。これらの具材すべてが盛り放題で、自由にアレンジできる。ご飯で刺し身が温まるのが嫌なら、海鮮を別盛りにして刺し身定食にしても良い。

イカはもちろん函館産を使う。1日に25~35キロ使用するイクラも道内産で、川に遡上する前の鮭から取れたものを仕入れる。遡上後に比べ値段は2割ほど高いが、仕入れ前に必ず試食するという酒井料理長は「皮が柔らかくて美味しい」と妥協しない。

海鮮丼以外も例えば、道内産牛肉の大きめの角切りをゴロッと煮込んだビーフシチューは人気の的。焼きたての「炙り焼き」に使う野菜など、食材の大半が道内産や国内産だ。

クロワッサンなどのパン類は、季節ごとに柔軟に種類の変更に対応してもらうため、あえて個人店に注文を出している。ゆっくり味わってもらおうと、わざと入り口の狭い瓶に入れたプリンなど、「遊び心を出したメニュー」も少なくない。

こんな拘りの結果、料理の原価率は「普通のホテルでは考えられない高さ」だが、そうまでするのは、朝食がホテルの価値を決めるーと考えるからだ。
宿泊客にとって朝食は、ホテルでの最後の大イベント。朝食の印象が、ホテルそのものの印象として記憶に残る。鈴木総支配人は「お客様が気持ちよく1日をスタートしてくれればいい。朝食で儲けるつもりは一切ない」と言い切る。

とはいえ、こうした戦略は宿泊客の増加になかなかつながらず、年間稼働率は開業した08年が46.8%、09年も54.6%と低迷が続いた。日によって客数の変動が大きく、見込みで仕入れた食材を廃棄し、損失が膨らむ悪循環に陥った。

それでも、ホイルを運営する「共立メンテナンス」の石塚会長だけは「絶対大丈夫だ」と言い続け、この朝食のスタイルを変えさせなかった。

石塚氏は社長だった05年、自ら函館のホテル用地を視察し、建設にゴーサインを出した。土地を見た瞬間、朝食のメニューを含むホテル全てのイメージが出来上がっていたという。海鮮の街・函館を体現した朝食こそが、宿泊客に道外では体験できない驚きを与え、やがて心をつかむと確信していたのだ。

その確信は見事に結実する。朝食の評判が口コミで広がり、朝食を楽しみに宿泊先に選ぶ人が増えた。年間稼働率は毎年10ポイントずつ上昇、13年には市内ホテルの平均を約10ポイント上回る90.1%に達した。
観光シーズンの夏はほぼ満室状態。今年8月の稼働率は天候に恵まれなかったにもかかわらず99.5%に達した。
朝食の待ち時間が長くなるという別の問題が起きたが、昨年4月にビュッフェ台を1列から2列に増やして解決した。そのビュッフェ台を常時3人で管理する40~50代の女性パートスタッフも大きな戦力。料理の補充や台の清掃を手際よくこなしながら、利用客の要望をキャッチする。海鮮丼用に小さな丼が加わったのは、彼女たちの発案だ。

「1位を目的にすることは今までもこれからもない」。考えるのは顧客の満足だけ。結果は後からついてくる。

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