「マエストロ」という映画を観てきました。
久しぶりに音楽映画を堪能しました。
マエストロの意味も、クラシックの良さも何も知らなかった私が、
演奏の凄さに酔いしれました。
「この世で一番美しいものは音楽でしょ」という台詞に初めは反感を持ったけれど、
コンサートシーンでは、そうかもしれない…と思ってしまうほど。。
そんな音楽の素晴らしさと力を確信している人々が現実の世界にもいるのですね~
イラクの指揮者のカリム・ワスフィさんとイラク国立交響楽団の団員の皆さんたち。
一昨日の朝日新聞の記事で知りました。
こちらは、映画「マエストロ」よりもずっとずっと過酷な現実。
テロの脅威を乗り越えて、瓦礫の中から演奏を始めました。
「不屈のタクト」の意味とは・・・
ぜひお読みください。
朝日新聞デジタル版 2月14日05:44 の記事
イラク、不屈のタクト 演奏続ける国立交響楽団
過激派組織「イスラム国」が勢力を広げ、混乱が続くイラクで、国立交響楽団が「音楽による連帯」をめざして活動を続けている。テロの脅威を乗り越え、1月に開いた定期演奏会には、1千人を超える聴衆が集まった。
1月9日、バグダッドの国立劇場。登壇した指揮者のカリム・ワスフィさん(42)がイラク国旗を掲げた。通路まで埋まった超満員の観客は、会場が震えるほどの拍手で迎えた。
マーラーの交響曲第一番「巨人」。技術的に高度な曲だ。10~70代の団員は、みな運転手や教師など別の仕事を掛け持ちする。練習時間は十分ではない。ハープやバスクラリネットなど足りない楽器もある。
「それでも、挑戦して乗り越える必要があった」とワスフィさんはいう。
イスラム教スンニ派やシーア派、キリスト教、クルド人。様々な背景を持つ団員の奏でる音色が、ひとつの指揮棒の下で共鳴した。
1940年代に設立された楽団は、苦難の道を歩んできた。当初は欧州出身者が過半数を占めたが、イランとの戦争が続いた80年代に国を離れた。91年の湾岸戦争とその後の経済制裁、2003年に始まったイラク戦争。そのたびに、多くの団員が国を離れた。
09年12月には「イスラム国」の前身組織が起こした首都での同時多発テロで、楽団の拠点だった国立芸術院が被害を受けた。
これに立ち向かったのがワスフィさんだ。テロ事件の2日後、窓が割れ、がれきが散乱したままの芸術院で演奏会を企画した。ほとんど聴衆のいないホールで十数人の団員とともに演奏会を決行した。暴力に対する自分なりの抗議だった。
人々は宗派ごとに分かれて暮らすようになった。楽団の存続も危ぶまれた。
ワスフィさんは学生たちを訪ねて個別に指導し、楽団に誘った。団員は、音楽全てを「禁忌」とみなす過激派の攻撃を避けるため、楽器をスポーツバッグに入れて運んだ。練習や公演の日時は団員のみに伝えるようにした。
米国などを拠点にしていたワスフィさんが祖国に戻ったのは04年。06年に50人だった団員は今、150人に増えた。「ようやくここまできた」
長びく戦争で、イラクの文化振興は停滞している。楽団を所管する文化相は、昨年まで防衛相と兼務。予算が足りず、楽器の修繕も間に合わない。
それでもワスフィさんが祖国で活動を続けるのは、「前向きなエネルギーは暴力に必ず勝てる」と信じるからだ。「過激派の青年たちと話せるなら、15分で彼らの銃を楽器に持ち替えさせてみせる」。国難を、指揮棒1本で戦い抜く覚悟を決めている。(バグダッド=渡辺淳基)