佐世保便り

2008年7月に佐世保に移住。
海あり山あり基地あり。そしてダム問題あり。
感動や素朴な疑問など誰かに伝えたくて…

石木ダム

2009-03-17 | 石木ダム



鮮やかな黄色の菜の花、その向こうに広がる緑の棚田。
想像以上に美しい日本の原風景・・・ここが石木川流域です。
長崎県や佐世保市が、いま総力をあげてダム建設を始めようとしている現場です。

私は佐世保市に越してきてまだ9か月足らず。
市民の多くが苦労したという大渇水の経験はもちろんありません。
市や水道局は渇水の年でなくても、佐世保市は慢性的な水不足で苦労していると言います。

しかし、だからといって、他の自治体である川棚町の住民の皆さんに犠牲を強いてまでダムを造る
のはおかしいと思っています。
水不足を喧伝する一方で漏水率は高く、節水コマや雨水利用などの具体的な施策も遅れている、
そんな佐世保市のやりかたに疑問を感じます。
また、人工のダムは仮に利水効果があったとしても一時的なもの。自然を壊し、結果的にはさらなる水不足を生む。雨水をしっかり蓄える森=緑のダムを作り育てることこそが、根本的な対策になると信じているから、私はダムの建設には反対です。

昨年11月末、佐世保市に「水問題を考える市民の会」ができました。
佐世保市の水事情の実態はどうなのか?
将来の水資源対策はどうなっているのか?
ダム以外に対策はとれないのか?
などなど学習会を開いて勉強しているところです。

そして、3月15日、仲間の皆さんと石木を訪れました。


これが石木川
思い描いていたより、うんと小さい川でした。
まさに春の小川、せせらぎといった感じの清流でした。


ここは「石木ダム建設絶対反対同盟」の団結小屋。
30年に及ぶ苦渋の歴史が詰まっているようです。。


赤い文字が、その言葉の意味を深く突き付けてきます。

いま現在、水没予定地域(川原地区)の中で反対しているのは13世帯ですが、その上にある木場地区にも絶対反対同盟の仲間が30世帯以上いらっしゃるようです。

1962年(ということは47年も前ですね)、県がいきなりダム建設を目的とした調査・測量に来てから、ずっと長い長い闘いが続いています。
町に裏切られ、住民同士の分裂や対立も生まれ、その中で耐え抜いてきた人々。
それはただ自分が生まれ育った自然を守りたい、ここで暮らしたいという、素朴で正当な道理と
信念なのだろうと思います。
その皆さんの30回目の団結大会に参加させていただきました。


開始30分前には、すでに多くの人々が集まっていました。
カメラマンや取材記者などマスコミ関係者もかなり・・・。


開会宣言に続いて、全員で歌った「石木ダム絶対反対の歌」
なかなかいい歌詩ですね。


代表挨拶を述べる岩下さん。
こみあげてくる思いに何度も言葉を詰まらせて・・・その姿を拝見しただけで、これまでの、そしてこれからも続く苦しい道のりが伝わってきました。

続いて、川棚町議や「清流の会」、また一般市民など、反対同盟を支えている地元の方々の
活動報告やスピーチがあり、どれも熱くて真剣な思いのこもったものでした。

中でも印象的だったのは、一人でいろいろ調べているというMさんのお話。
私は2年前まで賛成していたんですよ。何も知らなかったから。佐世保市がそんなに水に困っているんならダムを作ってあげればいいじゃないかとね。でも、春・夏2回の説明会をきいて、なんかおかしいと思った。何がおかしいのかよくわからないんだけど、ダムの後ろに化け物がいるような気がした。石木ダムは川棚川総合開発事業の一環だというので、とにかく川を歩き回った。そうしたらね、川棚川って案外水量が豊富なんですよね。佐世保に水を送るのは川棚川からでしょ。それで、役所の人に聞いたんですよ。川棚川の水量をね。そうしたら日平均278,000t だって言われてね。じゃあ、佐世保が欲しがってる55,000t くらいダムを作らなくてもあげられるんじゃないですか?って言ったんですよ。そうしたら、その数字を128,000t に変えてきたんですよ
この方は、とにかく真実を知ることで川棚町民の意識も変わるはずと信じて、今後も自分なりに調査を続けたいとおっしゃっていました。

また、どなたの発言か忘れましたが、
水は誰のものかってきいたんですよ。そしたら県のもの、国のものって言われたんですね。おかしいでしょう?水は地域住民のものです。地域に住むすべての生き物のものです」という言葉も心に残りました。

その後、同じダム問題で闘っている熊本の人々が、それぞれの活動を説明しながら力強い応援メッセージを語ってくれました。


まずはじめは石木と同じ、いま現在ダム建設に反対している路木ダムの住民の会の方のお話。
県はダムの必要性を説くために、1982年の洪水で下流の宅地約100棟が床上浸水したと明記してるんですが、そんな事実はないし、第一ここには70棟しか家がないんですよ」と。
いずこも同じですね。まずダムありき。ダムを造ろう。そのための理由づけを考えよう。
理由がなければ理由を作ろう。と、こういうふうになっていくのでしょう。



次に話して下さったのは、荒瀬ダムの撤去を求めている住民の方。
荒瀬ダムは半世紀も前に完成。
当時、私は賛成してましたよ。だって良いこと尽くめだって言うでしょ。ダムができたら水害はなくなる、電気代は半分になる、ダムを見にくる観光客が増えるって。冗談じゃないですよ。ダムができて洪水はひどくなりました。以前は自然な増水だったけど、ダムから水があふれるときは一気です。ひどいものです。以前はきれいな川でアユ漁が盛ん、釣具店や船大工、旅館などたくさんあったが今はゼロ。町はすっかり疲弊した。20000人いた人口も今では5000人。ダム湖にたまるヘドロの悪臭はひどく、その撤去に毎年10億円もかかっているんですよ」と、それはそれは恐ろしい現実でした。


川辺川ダムが白紙撤回されたのは、つい最近、画期的な決断として日本中に知れ渡ったけれど、川辺川が注ぎ込む球磨川流域にはすでにいくつものダムがあり、それが漁民にとってどんなに甚大な被害をもたらしたか、球磨川漁協の方は声を大にして訴えられました。






そして、この地図上に明記されたダムの一つ一つを示しながら、「このダムを請け負ったのは誰ですか?西松建設です。このダムは?西松建設です。このダムは?・・・」と、全部が西松建設でした。
そういうことだったんですね・・・



こちらは、京都大名誉教授の今本博健教授。
治水の専門家であり、その立場からみて石木ダムの治水意義は全くないと断言された。
のみならず、現在日本中に900もの治水ダムがある、さらに150を造ろうとしているが、これまでダムが水害を防いだ例は皆無だと言ってよいだろうとまでおっしゃったのは驚きでした。

また、「これからの人口減少を考えると水需要は明らかに減る。不必要なダムを造れば、それは水道料金に跳ね返り、困るのは佐世保市民自身だろう」とも。ですよねぇ。


最後に、「石木ダム建設計画白紙撤回」決議文を採択し「ガンバロー!」の大声が響き渡りました。

その後会場は急いで変身。たくさんのテーブルが出され、次々にご馳走が並べられました。
美味しそうでしょ?本当に美味しかったですよ。地元の野菜や山菜の煮物、イノシシ汁等々。
反対同盟の方々はまさに家族一丸となって闘っていらっしゃるんだな・・・と、
心のこもった手料理を味わいながらしみじみと感じました。




今本教授の左隣に座っていらっしゃるのは、映画「水になった村」の大西暢夫監督。
埼玉の友人のおかげで、つい最近、監督のことを知ることができ、この日初めてお会いし、
少しだけお話をさせていただきました。想像通りの、いえ、それ以上に温かい感じの方でした。
日本最大のダム徳山ダムに村が沈むまで、そこで暮らし続けたジジババたちを16年間追い続けた監督、日本中のダムを知り尽くしている監督が、石木ダムのことを一生懸命応援して下さっていることを知り、とても嬉しくなりました。


このブログを読んで下さった佐世保市民の皆さん、
3月25日夕方6時から、戸尾町の「させぼ市民活動交流プラザ」で水問題の学習会を行います。
前回に引き続き、水道局水源対策室の方にお話を伺います。
疑問や意見をどんどんぶつけて、いっしょに学んでみませんか?
水は命の源です。21世紀は水戦争が起きるだろうとさえ言われています。
その大切な水について、役人任せにしないで、いっしょに考えてみませんか?

佐世保市以外にお住まいで読んで下さった方々、
もし機会があったら川棚町の石木川流域を訪ねてみてください。
昔の人々が丁寧に石を積み上げて作った棚田がそこかしこに点在する、とても美しい風景に出会えます。
そして、その景色を水底に沈めたくないと思ってくださったら・・・

コメント (40)
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