月 夏と秋の差
令和3年7月26日(月)
夏の月
ごゆより出て
赤坂や
夏の日は、御油宿を出て、
次の赤坂宿に入ったのか。
実にあっけない短夜の月だ、
の意。
延宝四年(1676)の作。
帰郷する途次の作。
「ごゆ」は、東海道の御油宿。
「赤坂」は次の赤坂宿。
その間は十六町(約1.7キロ)ほどと
五十三次中最短。
◎ 夏のこの作品には、別句がある。
別句は、芭蕉の名前を記し、
この句は、桃青という芭蕉初期の名前を
使っている。
夏の月
御油より出て
赤坂か
この句だと意味がはっきりしているが、
赤坂かとはっきり言ってしまうと、
まるで地図のようで面白くない。
そこで、成案の「ごゆ」と
いう曖昧な表現が面白いと
読めてくる。
短い夏の夜は、御油と赤坂が近いので、
いつの間にか夜が明けて
月もうっすらとして消えてしまう。
秋の月のようにはっきりとして、
趣向が面白い月との差である。