ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

キース・ジャレット・スタンダーズ・ケルン・コンサート/オール・オブ・ユー

2007年10月27日 | 名盤

 
  このアルバムは、1989年10月15日に、旧西ドイツのケルン・フィルハーモニーで録音された、キース・ジャレット・トリオ(スタンダーズ)のライヴの模様が2枚組CDに収められています。
 全部で12曲が収録されていますが、キースのオリジナル2曲を除く10曲は、偉大なジャズの先達へのトリビュートとなっています。


     
     キース・ジャレット


 いずれもがそれぞれの楽器のバーチュオーゾとも言えるスタンダーズ。その3人が、ピアノ・トリオというフォーマットの真髄を極めたかのような、奥深い演奏が繰り広げられています。このトリオという編成は、一見オーソドックスながら、よく聴いてみると、3人とも実に個性的な演奏をしているのが分かります。センス、音楽性の深さ、大きさには圧倒されてしまいます。


     
     ゲイリー・ピーコック


 2枚組のジャズ・ライヴ・アルバムといえば、結構なヴォリュームがあって、いわゆる「お腹いっぱい」状態になると思っていたのですが、全篇を聴くと心地良い疲れに体が包まれているのが分かります。まだもう少し聴いていたいような、余韻にも浸っていたいような、そんな心境になるんです。


     
     ジャック・ディジョネット


 演奏は、よく言う「三者が対等に対峙」している状態です。余すところなくそれぞれが個性を発揮しているのですが、決してひとりよがりな演奏に陥ったりしません。三者が一心同体となって、高みに昇りつめてゆくような、そんな印象を受けます。そしてそれぞれがそれぞれをインスパイアしている、そんなやりとりも聴いていて楽しいところです。また、バラードにおける優しいアプローチにも胸が締め付けられる思いがするんです。


 聴衆の温かい反応も音楽の一部となっているかのようです。しばらくは鳴り止まない、温かい拍手の波も、聴いているぼくを感動へと導いていってくれているみたいです。


     
 
 
 とくにDisc2・5曲目のオール・ザ・シングス・ユー・アー。冒頭からのピアノ・ソロはまるで息詰まるかのような緊張感に包まれています。疾走するキース。固唾を呑んでそれを見守る聴衆。まるで金縛りにでもあったかのように身じろぎもしていないのでしょう。キースの奏でる音からはスピリチュアルな雰囲気さえ漂ってきます。やがてゲイリーとジャックが合流してテーマの演奏を始めた時、ホールを埋め尽くした聴衆は感動のあまりほとんど悲鳴にも似た大歓声をあげ、嵐のような拍手を送ります。この1シーンが聴けただけでも、このCDを手に入れた甲斐があったと思っています。


 スタンダーズは、数多あるスタンダード曲をキースならではの解釈の元に再構築し、曲に新しい息吹を与え続けています。結成以来20年以上が経ちましたが、今でも活動を続け、現代のジャズ界に君臨しています。



◆キース・ジャレット・スタンダーズ・ケルン・コンサート~オール・オブ・ユー/Tribute
  ■演奏
    キース・ジャレット・スタンダーズ/Keith Jarrett Standards
  ■プロデュース
    マンフレート・アイヒャー/Manfred Eicher
  ■リリース
    1990年
  ■録音
    1989年10月15日 ドイツ ケルン市 ケルン・フィルハーモニー
  ■録音メンバー
    キース・ジャレット/Keith Jarrett (piano)
    ゲイリー・ピーコック/Gary Peacock (bass)
    ジャック・ディジョネット/Jack DeJohnette (drums)
  ■収録曲
   [Disc-1]
    ① ラヴァー・マン/Lover Man (James Davis, Roger Ramirez, James Sherman)
    ② アイ・ヒア・ア・ラプソディ/I Hear A Rhapsody (George Fragos, Jack Baker, Dick Gasparre, Richard Bard)
    ③ リトル・ガール・ブルー/Little Girl Blue (Richard Rodgers, Lorenz Hart)
    ④ ソーラー/Solar (Miles Davis)
    ⑤ サン・プレイヤー/Sun Prayer (Keith Jarrett)
   [Disc-2]
    ① ジャスト・イン・タイム/Just In Time (Adolph Green, Betty Comden, Jule Styne)
    ② 煙が目にしみる/Smoke Gets In Your Eyes (Otto Harbach, Jerome Kern)
    ③ オール・オブ・ユー/All Of You (Cole Porter)
    ④ バラッド・オブ・ザ・サッド・ヤング・メン/Ballad Of The Sad Young Men (Thomas Wolf, Frances Landesman)
    ⑤ オール・ザ・シングス・ユー・アー/All The Things You Are (Jerome Kern, Oscar Hammerstein)
    ⑥ イッツ・イージー・トゥ・リメンバー/It's Easy To Remember (Richard Rodgers, Lorenz Hart)
    ⑦ U ダンス/U Dance (Keith Jarrett)  




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2 コメント

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はろ~♪ (Nob)
2007-10-28 13:11:36
むむ、出だしを聴いて 「こ、これは南海系・・・」と思ったら大丈夫でした(笑)
わりと気軽に楽しく聴けそう♪
彼のアルバムは時に複雑怪奇モノ?が あるらしいですよね。
それにしても、手元も見ずにあんなに笑顔で弾けるとは・・・
私は発表会の時は必死の形相でした(笑)
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Nobさん (MINAGI)
2007-10-28 14:38:29
グッド・イブニング!

はい~、そうですね、キースのピアノ・トリオ「スタンダーズ」のものはあまり構えなくても聴くことができると思いますよ(^^)
ぼくもその「複雑怪奇」モノは、まだ聴いたことがないんです。でも興味あるな~
キースのライヴDVDを見ていると、目をつぶって弾いてたりしますよね。楽器を体の一部として扱っているような感じがします。

>必死の形相
 Nobさんがピアノを弾く時は、まずはキースの顔マネから入ってみてはいかがでしょう。ついでにあのクネクネした動きも。効果があるかもよ~(・∀・)
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