ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

サテンの夜 (Nights In White Satin)

2007年10月22日 | 名曲


 
 「サテンの夜」は、いわゆるオールディーズもののコンピレイション・アルバムに収録されることが多いので、ご存知の方もたくさんいらっしゃると思います。
 このムーディー・ブルースというバンドは1964年にデビュー、同年末から翌年にかけて「ゴー・ナウ」の大ヒットを放つなど、初期はR&Bをベースにしたロック・グループとして活躍していました。
 その後メンバー・チェンジを行い、1966年にヘイワード、ピンダー、ロッジ、エッジ、トーマスの5人編成となりました。このメンバー・チェンジ以前と以後では全く別のバンドに生まれ変わったと言えます。ちなみに、この時脱退したのが、のちウィングスのメンバーとなるデニー・レインです。「ゴー・ナウ」はウィングスでもレパートリーに取り上げられました。


     


 ちょうどその頃、英国デッカ・レコードは音響的に広がりのある「デラミック・サウンド」を完成させ、これを大々的に広めるという目的で、実験的レコードを発表させるためのバンドを探していました。そんな時に、プロデューサーのトニー・クラークがたまたまヘイワードの作った曲を聴き、オーケストラとロックが融合したアルバムを作ることを思いつきます。こうして生まれたのが「デイズ・オブ・フューチャー・パスト」です。


     
     『デイズ・オブ・フューチャー・パスト』(1967年)


 「サテンの夜」は「デイズ・オブ~」の中に収録されています。この曲は日本やイギリスで注目されたものの、アメリカでは曲が長すぎる、という理由で「チューズデイ・アフタヌーン」がシングルとしてリリースされました。
 「サテンの夜」が生まれてから5年後の1972年、アメリカ西海岸のあるラジオ局でオンエアされたことから火がつき、この曲は徐々にチャートを上昇、最終的には全米2位となる大ヒットを記録しました。


 「サテンの夜」は8分の12拍子で、テンポはミディアム・スロー。導入部から柔らかなストリングスが鳴っています。オーケストラとメロトロン、コーラスが曲にクラシカルなカラーをもたらしていて、まさに「夜」の雰囲気を醸し出しています。中間部はアコースティック・ギターとメロトロンをバックにしたフルートのソロ。ブリティッシュ・ロック特有のほの暗い雰囲気が漂います。
 アコースティックなその曲調によく映えるヘイワードのクリアーなヴォーカルが、雰囲気をよりいっそう高めています。


     


 「デイズ・オブ~」はある日の朝から夜までの「人の一日」を歌詞と音にして表したコンセプト・アルバムです。共演しているのはロンドン・フェスティヴァル・オーケストラで、編曲・指揮はピーター・ナイトによるものです。
 「サテンの夜」は、ドボルザークの「新世界」のロック・ヴァージョンを意識して作られました。こういった構想は、再出発をきったムーディー・ブルース自身の発想だということです。歌詞は、ジャスティン・ヘイワードが、贈られた白いサテンのシーツからインスピレーションを得て書き上げたものだそうです。少々難解な歌詞ですが、この頃はサイケデリックの全盛期であり、抽象的でトリップ気味の詞は当時の空気を表していると言えるでしょう。


     


 ムーディー・ブルースは、アルバム全体をひとつの作品として提示するという方法論をいち早く指向したことで、プログレッシヴ・ロックの先鞭をつけたバンドのひとつとも言えます。「デイズ・オブ~」こそ、そうした彼らの出発点であると言っていいでしょう。


[歌 詞]
[大 意] 
夜は白いサテンに包まれて 決して終わることはなく
幾度も書いた手紙は 決して送られることはない
美しいものを私はいつも見過ごしていた。 この目がその前にあるというのに
真実とは何か 私はもはや言うことはできない。

なぜなら 愛しているから そうなんだ 愛しているんだ
ああ なんてあなたを愛していることか...

人々に目をやる 手をとりあっているのもいる
私が今経験していることを あの人達ならわかってくれる
私に言おうとするものもいる 擁護できない考えを言おうとしている
あなたはなりたいものに 帰するところ なるものなのだ

そして 私は愛している そうなんだ 愛しているんだ
ああ なんてあなたを愛していることか...
ああ なんてあなたを愛していることか...



サテンの夜/Nights In White Satin
■歌・演奏
  ムーディ・ブルース/Moody Blues
■シングル・リリース
  1967年11月10日
■作詞・作曲
  ジャスティン・ヘイワード/Justin Hayward
■プロデュース
  トニー・クラーク/Tony Clarke
■録音メンバー
  ムーディー・ブルース
   ☆ジャスティン・ヘイワード (acoustic-guitar, lead-vocals)
   ☆マイク・ピンダー/Mike Pinder (mellotron, backing-vocals, gong, narration)
   ☆ジョン・ロッジ/John Lodge (bass, backing-vocals)
   ☆グレアム・エッジ/Graeme Edge (drums, percussion, backing-vocals)
   ☆レイ・トーマス/Ray Thomas (flute, backing-vocals)
  ピーター・ナイト&ロンドン・フェスティヴァル・オーケストラ
■チャート最高位
  1967年週間チャート  アメリカ(ビルボード)103位、イギリス19位 
  1972年週間チャート  アメリカ(ビルボード)2位、アメリカ(キャッシュボックス)1位、イギリス9位
  1972年年間チャート  アメリカ(ビルボード)32位、アメリカ(キャッシュボックス)82位


『サテンの夜』ムーディー・ブルース(ライブ)



コメント (21)
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