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内藤瑛亮監督『先生を流産させる会』その3

2013-05-26 04:35:00 | ノンジャンル
 またまたまた昨日の続きです。
 ミイラ化したコウモリ。笑い合う5人が廃墟のアジトにやって来ると、サワコが座っています。「何でここにいるの?」と言われたサワコは立ち上がり、「先生を流産させる会」の文字の上を順に指差し、「アキナ、シオン、ミヅキ、マオ、ルミコ」と言った後、振り返り、ドスの利いた声で「大人はなめちゃダメだよ」と言って、ルミホの腕を握り、「親には黙っていてあげるから、この遊びはお終いにしなさい」と言って、指輪を回収して回ります。ミヅキの前に来て「あなたは?」と言うサワコに、無言で視線を返すミヅキ。
 ミヅキは仲間と理科室に忍び込み、奪った本を見ながら薬品の瓶を手に入れます。帰り、プールの掃除に誘われて、ミヅキは1人でルミホの家に行きます。ふざけながらプールの掃除をする3人。田んぼの中を歩くミヅキを、彼女を中心にして回りこみながら映し出すカメラ。アリがたかる鳥の残骸を棒で転がして笑顔を見せるミヅキ。ルミホの母は「ルミホは風邪をひいて寝ている」と言います。「嘘ついちゃダメなんだよ」「こないだ、あなたのお母さんだけ来てなかったわね。先生を流産させようが勝手なんだけど、ウチの子、巻き込まないで!」ミヅキが去り、ルミホの脚を母がさすってやっていると、窓の外からミヅキがルミホに手招きをします。サワコに助けを求めるルミホの母。廃墟で薬品を調合するミヅキとルミホ。夜に自転車で現場に急ぐサワコとルミホの母。ガスマスクをつけていたミヅキは、サワコらが近づいて来るのを感じると、ルミホのガスマスクを乱暴に外し、ビーカーの中の液体を地面に注ぎます。沸騰する地面。「何で?」と言うルミホに、ビンを部屋の床に投げ付け、ルミホを部屋に監禁するミヅキ。むせるルミホはやがて白煙に包まれます。ようやくサワコらに助けだされたルミホは、母の人工呼吸で息を吹き返します。ミヅキを探し回るサワコの前に現れたミヅキはサワコを襲います。「どうして流産させたいの?」「気持ち悪いから」「どうして気持ち悪いのよ!」「知らん、チッ」金棒を振り上げようとするミヅキでしたが、サワコと金棒を引っ張り合う形となります。「女は気持ち悪い生き物なの。あたしも気持ち悪いし、ミヅキも気持ち悪いよ。あんたも気付いてるんでしょ! ただ気持ち悪さから逃げようとしている。そんだけ」と言ったサワコはミヅキが押し込んだ金棒に押されて仰向けに倒れされます。腹に金棒を突き立てられ、目を見開くサワコ。ミヅキはくり返しサワコの腹に金棒を突き立て、その度にドスッ、ドスッという音が響きます。やがてサワコの股間から血だまりが広がり始めます。風の音。見下していたミヅキがしゃがみこみ、サワコの腹を触ると、サワコはその腕を掴んで上半身を立ち上げ、ミヅキの指輪を外します。「満足した?」とミヅキを睨み付けるサワコ。指輪が床に落ちる音。ミヅキの顔は少女のそれになっています。ミヅキに襲いかかるルミホの母からミヅキを守るサワコ。ルミホが母を止めると、母はルミホを抱き締め、泣きます。再び仰向けになったサワコを見つめるミヅキ。
 無人の校庭。授業中に私語を止めない生徒たち。家にいてイヤホンで音楽を聞いているルミホに、帰った母はルミホ用に買ったかわいいブラウスを着させようとしますが、ルミホは「自分で買うからいい」と早口で答えます。「胎児は殺人罪の対象の人間には含まれないね。だから殺人罪じゃない。不同意堕胎罪プラス傷害罪かな? 多分」と話す中年女性と、カーテンを開けたり閉じたいしながら聞くミヅキ。建物から出て来たミヅキは、黒衣のサワコに迎えられます。2人で河原を歩き、やがてサワコはしゃがみ込むと、ミヅキも隣にしゃがみ込みます。スコップを渡し「掘って」と言うサワコ。「何で私が?」「親族が掘っちゃダメなの」黒い布を開くと、中から木箱が出てきます。掘り出すミヅキ。穴の底に静かに木箱を置き、土を一すくいずつ上にかけていくサワコ。ミヅキも一緒に土をかけ始めます。できた土墳に多くの風車を飾り、2人がしゃがんだまま手を合わせると、風が起こり、風車が回り始めます。サワコはミヅキを見て「いなかったことになんて、できないの」と言い、宙を見ていたミヅキは、ふと上の方を見上げて、映画は終わります。

 デジカメによるズームや荒々しい画質が特徴的でした。小林香織の世を呪っているかのような顔も印象的だったと思います。内藤監督、今後とも要チェックです。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

内藤瑛亮監督『先生を流産させる会』その2

2013-05-25 05:15:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 「次、どうする?」笑い合う4人と、しょぼんとするルミホ。「だってまだ終わってないじゃん」とミヅキ。プール前の体操をしているミヅキと目が合うサワコ。体操直後にミヅキは初潮を迎え、それを見たサワコは「シオン、マオ、保健室に連れてってあげなさい」と言いますが、ミヅキは1人で去ります。屋上に佇むルミホ。近づいてきたサワコは「岩瀬さん、クビにしようかな~。後任はアキラにしてあげる」「えっ、何で?」「滝本先生、カッコいいもんねぇ」とルミホの顔を覗き込むサワコは、ルミホに身を寄せると「先生、教えてほしいことがあるの」と言います。サワコの方に顔を向けるルミホ。
 教室でザワつく生徒たちにサワコは怒り、名簿を机に叩きつけます。静かになった生徒たちに紙を配りながら「先生が吐いたのはつわりではありません。先生が飲んだスープには、何か入れられていました」「何でそんな話、するんですか?」「何でだと思う?」教壇を両手で持ち「先生を困らせたいって気持ちは、きっとあると思う。先生も中学生だった頃あるから分かる。ただ、やって許されないことがあるのは分かるよね? 心当たりがある人は、先生に手紙を書いて下さい」 
 サワコの前に立たされる5人。「うちらじゃないですけど」「あなたたちがやったんじゃないかって手紙があったの」「そいつが嘘ついてるかもじゃん」「そうね、決定的な証拠じゃないね」「釈放しろよ」とミヅキ。サワコは立ち上がり「先生が今から質問するわ。それに答えたら帰っていいよ」 後ろの棚からマトリョーシカ人形を取って机に置き、「あなたたちに赤ちゃんができたとします。大事な大事な赤ちゃんです。産まれてくるのをとても楽しみにしています。しかし、ある人のいたずらで大事な赤ちゃんが死んでしまいました」小さな人形をマトリョーシカ人形にぶつけて床に落とします。「さて、あなたちならどうする?」床の大小のマトリョーシカ人形を拾って元に戻します。「アキは?」「訴える?」「ふ~ん、シオン」「「同じでもいいですか? 訴える」「マオ」「私も」「ルミホ」「分かりません」「ミヅキ」「いなかったことにする」「は?」「産まれる前に死んだんでしょ? いなかったのと同じじゃん」厳しい目でミヅキを見つめるサワコ。「サワコ先生はどうするんですか?」とミヅキ。「殺すよ」「ふうん」「赤ちゃんを殺した人間は殺す」「先生が殺すとか、言っちゃダメなんじゃないかな」「先生である前に私は女なの。あんたたちも生徒である前に女よ。イタズラだろうが何だろうが、女は子供を傷つける人間を絶対に許さない」そこへルミホの母が入ってきます。「ウチの子、返して」と言ってルミホを連れていこうとする母。「お母さん!」とサワコ。「ルミホを犯人と決めつけるなんて、担任として恥ずかしくないの?」「落ち着いてくれます?」「どうせ、ただのつわりでしょ? それを子供のせいにするなんて、最低の教師ね。ルミホが自殺したら、どう責任とるつもり?」「廊下で話しましょう」廊下で対面する2人。「匿名で私にイタズラした人を紙に書いてもらったんです。これ、ルミホさんの字ですね?」母は紙を取り上げて「ルミホは心の優しい子よ。担任のあんたが分かってないことが問題なの」とクシャクシャにした紙をサワコの顔にぶつけます。
 サワコの椅子に細工する5人は、さっきのルミホの母の発言をマネして笑います。椅子のネジを外しながら「犯人ですか?」「犯人です」と言い合う5人。教室で椅子に座るサワコを見て、教科書で顔を隠して笑い合う5人。部品が落ち、背もたれに体重をかけたサワコのイスは壊れ、サワコは背中から床に落ちます。沸き上がる笑い声。立ち上がったサワコは床に転がっていたネジを床に叩きつけ、5人に平手打ちを加えます。「笑った人も全員同罪よ」とサワコ。
 熱心な指導が行き過ぎたと4人の母に謝り、頭を下げる校長たち。ただ1人頭を下げないサワコを睨むルミホの母はキレて「あなたが辞めない限り、ルミホは登校させない」と叫びます。「体罰をする学校と思われると困る」と言う校長は、サワコに始末書を書かせますが、同僚が「あの人こそ20年前にはバリバリの暴力教師だった」と言うと、サワコは「バカばかっり。バカがバカを産んで、それがまたバカを産む。教師はバカをバカのまま野放しにして、おだててればいい」と言います。(またまた明日へ続きます‥‥)

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内藤瑛亮監督『先生を流産させる会』その1

2013-05-24 05:28:00 | ノンジャンル
 山根貞男さんが朝日新聞で絶賛していた、内藤瑛亮監督・脚本の'11年作品『先生を流産させる会』をWOWOWシネマで見ました。
 「死んでんじゃないの?」「ヒクヒクしてる」「グロ~い」 公園のウサギ小屋を覗く女学生たち。背後には蝉の声(これは映画が終わるまで終始聞こえています)。ミヅキ(小林香織)がそれを小屋から持ち出し、小高い丘に登ると、そこからそれを放り投げます。グチャっという音。笑い出す残りの4人。「何が面白いの!」とすさんだ顔のミヅキ。タイトル。
 高架が背後に走る田んぼを左へ1列で歩いていく5人。ヒマワリ畑。中学教師のサワコ(宮田亜記)は同僚と成績の分布を黒板に書いていくと、オールCの子がいるのに気付き、その子の親が書いた自由意見の欄には「授業参観の時、子供のの写真を撮ろうとして担任に叱られた。子供の写真を撮って何が悪い。子供を育てたことのない人間には分からないのですか?」と書いてありました。サワコはその親が授業中に子供を正面から撮ろうとしたことを同僚に教えると、同僚はゴジラ級のモンスター・ペアレントだと言います。妊娠中のサワコは、自分の子が成長して生徒のようになったらと不安に思います。
 ショッピングカートを若い母と幼い子の方へ走らせ、さざめきあって逃げ去るる5人。図書館では近づいてきた滝本先生に「タッキーはチーちゃんと結婚しないの?」と言い、「俺の彼女をあだなで呼ぶなよ」と先生が言うと、「授業中に先生が自分で言ってた」と生徒は答えます。そこへやって来たサワコは2人の生徒に「図書館から出ていって。理由を考えるのが宿題」と言います。嫌々図書館を後にする2人。滝本は1人でいるミヅキのところへ行き、彼女のことを誉めますが、ミヅキは「すごく邪魔!」と言います。他の生徒に質問されると「先生、勉強苦手。先ずは自分で解いてみろ」と言う滝本。カゴを持って階段をサワコが登っていると、同僚がカゴを代わりに持ってくれます。それを上から見る5人(逆行で表情は分からない)。「お腹に子供いるの?」と聞かれ、一瞬遅れて「いるよ」と答えるサワコ。
 授業中、札を振りながら「イェー」と言う生徒たちに「ホームルームを始めます」とサワコが言うと教室は静まります。「月途中で産休取るなんて何考えてんの?」と電話でサワコに文句を言い続ける母親に聞こえるように、同僚は「教科部会が始まるわよ」と言って、サワコが電話を切るきっかけを作ってくれます。同僚は「保護者に理不尽な理由で訴えられた時、弁護士費用を保証する月500円の保険がある」と教えてくれますが、サワコは釈然としません。
 一方、5人は御殿のような廃墟を目指して田んぼの中を歩いていきます。ピンクのキャンデーを持ち、廃墟に入っていく5人。ミヅキが「そうか、セックスしたのかな?」と言うと、他の子が「そりゃしてるっしょ。子供できたんだから」と答え、ミヅキは「想像してよ。サワコ、セックスしたんだよ。気持ち悪くない?」と言い、4人は黙ります。「何か分かる。何か、キモイね」と言う1人。
 宝石店で指輪を強奪した5人は、ろうそくの灯る中、指輪をお互いの左手の薬指に付け合います。壁には“先生を流産させる会”の文字。
 サワコはミヅキの母と連絡を取ろうとしますが、電話は既に使えなくなっています。理科の実験で急いで薬品を隠す5人。給食の配膳でミヅキはサワコのスープに薬品を入れ、他の生徒はそれを黙ってみつめています。給食を食べ始めたサワコは、スープを飲むと咳き込み、もどします。「汚~い」と言う生徒たち。
 保健室にやって来た5人。「サワコ先生はつわり?」と聞く生徒に「う~ん、とうだろうね」と答える保健室の先生。ベッドで眠るサワコの腹に触るミヅキ。「何ヶ月から人間になるんですか?」「え? そ~う、妊娠8週間から胎児って言われてるけど」「もう、人間ですか?」「うん、4ヶ月だから、手足を動かし始める時期だよ」 ミヅキの手を握り、上半身を起き上がらせたサワコは、ミヅキを睨み「今日のホームルーム、席替え、中止ね」と言います。(明日へ続きます‥‥)

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

マーカス・デュ・ソートイ『数字の国のミステリー』

2013-05-23 06:06:00 | ノンジャンル
 先日「ジェーン・バーキン・ライブ・イン・ジャパン」をWOWOWライブで見ました。日本の東日本大震災の復興支援を目的としたワールドツアー「Jane Birkin sings Serge Gainsbourg “VIA JAPAN”」の最終公演となった東京オペラシティでの公演を放送したものでしたが、曲と曲の間に満面の笑みを浮かべる彼女の姿が印象的でした。公演の前には、大震災の現地を訪れ、花を捧げ、高台では階段で遊ぶ子供たちを見て、彼らの未来を信じ、またミニコンサートで地元の人との交流を行い、そこで、大震災直後に出会った少女のことを歌った曲“少女(Une Petite Fille)”を歌って、観客とともに自らも涙する様子が描かれていました。オペラシティの公演では、人となりまでを語るメンバー紹介が素晴らしく、私は不覚にも涙してしまいました。また、ニューヨークで喝采を得たことが一番感動的だったと彼女が語ったことも印象的でした。

 さて、朝日新聞で紹介されていた、マーカス・デュ・ソートイの'10年作品『数字の国のミステリー』を読みました。数学の5つの分野に関して紹介され、それぞれの章の最後に100万ドルの賞金のかかった難問が掲載されています。
 第一章では素数が扱われ、素数の出現が規則正しく減少していく証明が難問として出されます。第二章では立体とフラクタル図形が扱われ、すべての立体が3種類に分類されることの証明が難問として出されます。第三章ではゲームの必勝法が扱われ、効率のよい色分けの方法の証明が難問として、第四章では暗号が扱われ、楕円曲線に無数の分数点があるかどうか判別する手段の有無が難問として、第五章では未来の予想が扱われ、カオスを表す方程式を解く方法が難問として出されています。
 読んでいて興味深いと思ったのは、花びらの枚数の多くがフィボナッチ数列になっていて、他にも成長に関係する場面ならどこにでもフィボナッチ数列が出現すること、カタツムリの殻もフィボナッチ数列に従って90度ずつ作られていく結果、美しい渦巻きを形作ること、8世紀インドの著作家ヴィラハンカは、与えられた拍数に対して短音と長音を使って何種類のリズムが作れるかを調べ、拍数が増えるにつれて作れるリズムのパターン数がフィボナッチ数列を形作っているのに気付いたこと、今でも新たなメルセンヌ素数が見つかるたびに、3000ドルの賞金が与えられることになっていて、1億桁突破には15万ドル、10億桁突破には20万ドルの賞金がかけられていること、最初に完全な球形を作り出そうとした配管工ウィリアム・ワッツは、6階建ての最上階から液体状の鉛を垂らし、落下するまでにそれが球体状で固まるのを待ったこと、球よりエネルギーが少なくてすむ形が存在しないことが証明されたのは1884年まで待たねばならなかったこと、卓球の球はセルロイドでできた2枚の半球を溶かしつけて作られますが、完全な球体を作るには、このやり方はあまり効率的ではなく、できあがった球の95パーセント以上が廃棄されること、英国でティーバッグを使うようになったのは1950年代に入ってからだったこと、正四面体のティーバッグを作るには、円筒形の底を閉じ、上はそれと垂直方向に閉じるとできること、ウィルスは20面体構造であること、10のマイナス34乗メートルより短い距離を測ろうとすると、決まってブラックホールが生じ、計測機器が吸い込まれてしまうこと、フラクタル図形は自然物では当たり前に存在すること、キャンパスに不規則に絵の具を滴らせて描いているように見えるポロックの作品は、フラクタル次元が1.72にも及び、容易にマネできるものではないこと、ジャンケンポンはカリフォルニアではロー・シャム・ブー、韓国ではカウィ・バウィ・ボ、南アフリカではチン・チョン・チャとして存在していること、人間はランダムな列を作るのが苦手なこと、人生での必勝法は全体の3分の1が終わるまでは様子を見て、それ以降はそれまでで一番いいものが出てきたら選ぶこと、などなどでした。
 素数の部分などは今まで読んできた数学の本のどれよりも分かりやすく書かれていましたが、それでもやはり読んでいてよく分からない部分もあり、そうした部分は飛ばし読みしてしまいました。しかし“人生での必勝法”など、すぐに役立つ知識も多々あったように思います。単に数学的な読み物としてだけでなく、そうした部分でも評価できる本だと思いました。

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ティム・バートン監督『ダーク・シャドウ』その4

2013-05-22 05:19:00 | ノンジャンル
 またまた昨日の続きです。
 町中の人々が火災現場に集まると、そこへやって来たアンジェリークは、コリンズ家が殺人犯を匿っている証拠品だと言って、「確かに自分がホフマンも作業員も若者たちも殺した」とバーナバスが話しているテープを再生し、彼女から「火をつけたのはあの男だ」と名指しされたウィリーは、あわてて車で逃げ出します。屋敷に戻ったウィリーは暴徒や警察が追ってくると言って逃げだし、そこへアンジェリークの車とパトカー数台がやって来ます。保安官は全員署に来てくれと言いますが、リズは「自分たち一族が作った町から受ける仕打ちがこれか?」と言います。そこへバーナバスが現れ、「家族には手を出すな」と言い、保安官に催眠術をかけ、キャロリンはバーナバスを外に残して屋敷の扉を閉めます。バーナバスはアンジェリークに「お前も怪物だ。2人とも滅ぶべきだ」と語り、彼女の首に手をかけ、保安官に撃たれますが、彼は倒れず、アンジェリークの肩に噛みつきます。アンジェリークが彼を突き飛ばすと、扉を壊して向こうの壁まで飛ばされます。前に進みながら、斧を持つウィリーを尋常でない力で投げ飛ばすアンジェリーク。保安官は野次馬を帰し、緑色の液体を大量に口から吐き出したアンジェリークは一回目はバーナバスに避けられますが、2回目は正面から浴びせることに成功します。彼女の首を持ち、上に投げ飛ばすと、天井を突き抜け、2階のキャロリンの部屋まで行くアンジェリーク。空中をゆっくり降りてきたアンジェリークを、リズは「私の家から出てけ」と言いながらライフルで数発撃ちます。ロボットのように立ち上がったアンジェリークが「あなたの家?」と言うと、代々の肖像画が笑いだし、ヘビの彫刻が動き出して、リズのライフルを飲み込もうとします。リズが撃つと粉々になるヘビ。殴り合うバーナバスとアンジェリーク。「心血を注いだ家なら血で満たしてやる」とアンジェリークが言うと、彼女が視線を走らせる度に、肖像画から血が流れ出し、花も萎みます。壁や床に亀裂が走り、暖炉の火が床を燃やし始め、バーナバスは背後の彫刻に抱きすくめられます。2階から落ちて来て、唸りながら「去れ」と言うキャロリンは実はオオカミ人間でした。アンジェリークに噛みつき、投げ飛ばされて倒れるキャロリン。アンジェリークは彼女が赤ん坊の時、オオカミ人間に噛ませたのだと言い放ちます。炎が一気に燃え盛り、「デヴィッドが孤児同然になったのも、ママを魚のお茶会に自分が送ったからだ」と言うアンジェリーク。「身分が違うなんて認めない、私たちは結ばれる運命なのだ」とバーナバスに迫る彼女に、デヴィッドは「おじさんを離せ」と言い、「ママが相手だ」と言うと、デヴィッドの母の幽霊が奥から現れ、アンジェリークをシャンデリアに吹き飛ばすと、アンジェリークはシャンデリアごと落ちて動かなくなります。彫刻もバーナバスを放し、リズはキャロリンを抱き上げて逃げ出し、ウィリーも外へ逃れます。「お前の望みは愛ではなく所有だった」と語るバーナバスに、アンジェリークは自分の胸から鼓動を続ける心臓を手に取って差し出し「受け取って」と言いますが、やがて心臓は手の中で砕け散ってしまい、アンジェリークは死にます。「ヴィッキーはやもめ岬だ」とデヴィッドが言い、岬の突端で後ろからヴィッキーの両肩を掴み、彼女を振り返らせて抱き合ったバーナバスでしたが、ヴィッキーは「私は光の中だけど、あなたは闇の中。私は死ぬけど、あなたは永遠。方法は1つよ」と言って、微笑みながら後ろへ倒れていきます。落ちていくヴィッキーを追うバーナバスは空中で彼女を抱きとめ、彼女の血を吸います。下に落ちた後、ヴァンパイアのジョゼットとして蘇生したヴィッキーはバーナバスとキスし合います。「“血は水より濃い”という言葉がある。血が人を意味づけ、結びつけ、呪うのだ。私の名はバーナバス・コリンズ。我が呪いはついに解けた」のナレーション。岩場で荒波を受ける2人からカメラは後退移動し、やがて海中に潜り、イワシの大群を通過した後、ホフマンの顔の正面に来ると、彼女は目をパッチリと開けて、映画は終わります。

 これをゴシック・ロマンと言わずして何と言うのでしょうか? すべての“ショット”がフェルメールの絵を見ているようでした。バーナバスとアンジェリークの戦いのCGに、様々なギャグとラストのデヴィッドのママの姿、『レベッカ』を思わせるラストの館の炎上など、様々な要素が映画を豊かにしていました。

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