読書感想文3

2006-08-30 23:29:39 | 
読書覚書第3弾。
僕が“重厚なミステリーが読みたいなぁ”と思うときにこの人の本を物色する高村薫氏の『マークスの山』です。言わずと知れた直木賞受賞作品。マークスとはリチャード・マークスではありませんし、近所のマークンでもありません。なんやそれ。
ジャンルとしては刑事小説と言って誤りではないと思います。合田雄一郎という強行犯係の刑事が殺人犯を追いかけるという設定です。とにかく高村作品は筆致が綿密で文章が硬質で、読むのに疲れます。面白くてどんどん読み進んでいる気持ちになるのですが、実は思ったほど進んでなかったりするのです。それだけ読み進めるのが大変だということなのです。でも、使った労力に見合う楽しみが得られます。高村氏の作品にはマニアックなファンが多く、というか作品に虜にされてマニアになってしまうのでしょうが、インターネットで検索してみても数多くのファンサイトがあります。中には合田雄一郎に魅せられて、小説で合田が訪れた地をデータベース化している方とかほんとに好きな人はとことんまでハマるという感じです。僕の場合、本の最初の一行を読み始める前に、よっしゃ、読むぞ。と気合を入れて読み始めます。
僕は個人的にマークスの山の殺人犯に大変な思い入れをしています。気の毒なのです。犯人の人物像を切なく、悲しく、ある意味美しいものにしてある(これがまた巧妙なんですよね)がゆえ、他の刑事小説では味わうことのない犯人へのシンパシーを抱いてしまうのです。もちろん合田も鋭く、かっこよく切れます。この2人のコントラストもひとつの見所ではないでしょうか。
ところでこの作品の冒頭で、山小屋に住む男が夢と現実の区別がつかないままに何者かをスコップでめった打ちにしますが、一体だれ(人間でない可能性あり)をめった打ちにしたのかが最後まで明かされません。本筋とはまったく関係のない話で、事件が明らかになっていくきっかけを作るためだけのものかも知れないですが、気になってしようがありません。ご存知の方いらっしゃいますか?
この小説は同名で映画化されています。合田の役には中井貴一さんが扮しています。うーん、この配役が微妙なんですよね。線が細い気がしてなりません。では他に誰がハマリ役かと言えばわからないのですが。
では。