”ばっきん”のブログ

日常生活中心のブログです。
平成28年9月から妻と息子、母の4人で暮らしています。

函館市の重度身体障害者等タクシー料金助成について考える

2016年11月12日 07時23分40秒 | 福祉政策
 

  函館市では、重度の身体障害のある人、知的障害のある人にタクシーの基本料金を年間36回分まで助成している。

対象となる障害を持つ人は、同市で実施している障害者等外出支援事業における電車・バス等の乗車カードなどの交付対象より範囲が狭い。

肢体障害は、下肢・体幹障害1~3級に、視覚障害は、1~2級、心臓・腎臓などの内部障害は1級のみ、知的障害は療育手帳A判定の人という電車・バスなどによる移動が困難な人に限られ、決してバラマキの大盤振る舞いではないと筆者は考える。

 

 詳しくはこちら→

 http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2014031100019/

 

 今回、この事業をとりまく状況について考えてみたいと思ったのは、今年4月に、障害者差別解消法が施行されたこと、相模原市の施設で障害者殺傷事件が起こったこと、リオパラリンピックで函館にゆかりのある選手が大活躍をしたことなど、障害を持つ人に対する社会の関心の高まりを感じたからであり、かつて函館市の事業仕分けで「見直しが必要」と判断されたこのタクシー料金助成の制度について、思いをはせたためである。

 

 見直しが必要とされた市の考え方は、「対象者の就労の有無や日常の移動手段、介護者の有無など生活状況等について調査を行い、その結果を踏まえながら他の類似事業との給付の調整など、より効率的に、効果的な運用に向け、制度の見直しを検討する」というもので、これが筆者としては、ダメだなあと思う点である。

 

詳しくはこちら→

 http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2014031700394/files/kangae11.pdf

 

 なぜ、こんな考え方に至ったのかは、当時の会議録での委員とのやり取りで浮かび上がってくる。かいつまんで、福祉的なものの見方を逸脱している点があるので、一部引用しながら筆者の考え方を述べたい。

 

 当時の会議録はこちら↓

  http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2014031700394/files/1028gaiyou1.pdf

 

1 対象者の家族状況・生活状況等でサービスに差をつけるというのは、そもそも障害者支援の精神からかけ離れている。

 ある委員は、「一人でいるにはいい制度だと思います。ただ、同居している方がいて、その方の収入が高いものまで同じにするのはいかがなものかと思う。財政的な面もありますし、収入の高い人は、これを受けなくてもそういう人たちのサポートができると私は思います。同居している方の所得制限については考える必要があると思います。」と述べている。

 

 この考え方、極めて上から目線、健常者ならではの感覚だ。そもそも、一人でいようが、家族と一緒だろうが、障がいを持つ人にとっては関係がない。むしろ、家族は障がい者が家族にいるだけでも心理的・経済的負担は大きいのだ。収入の多寡によって、サービスが制限されるのは、いわゆる合理的配慮に欠ける状態である。障がいサービスは、収入に関係なく、障がいの程度によって判断されるべきものである。障害者総合支援法におけるサービスは、本人負担は、所得による応分負担になっているが、サービス自体は所得とは関係ないものとなっている。

 

2 よりより効率的、効果的な運用をこころがけるのは、障がい者本人であり、行政側がきめることではない。

 

 市の考え方にある「他の類似事業との給付の調整」とは、電車・バス等の外出支援事業にとの選択制を念頭に置いたものと考えるが、そもそもこの両者を類似事業と考えることに無理がある。

 

 電車・バス等の助成事業は、障がい者の社会参加を促進するものであり、一方、タクシー助成は、通院など障がい者特有の必要経費を、重度障害のある人に支援するものである。おのずから目的が違うのに、タクシーを利用する人は、電車・バスを利用できない人だと決め付けてしまう感覚が透けて見える。

 

 健常者であろうが、障がい者であろうが、時と場合、利便性、そのときの体調に合わせて交通手段を選ぶではないか。それを障がい者に対しては、「あなたはこの交通手段しか選べません」としてしまうところにある種の傲慢さを感ぜずにはいられない。

 

 普通の感覚の持ち主ではあれば、「今日は体調もよいし、道路状況も悪くないから電車をりようしよう。」とか、「今日は寒くて、体調もよくないからタクシーで病院に行こう。」というように使い分けるのが普通だ。自家用車を持っている人だって、タクシーを利用することは、健常者でもあり得ることなのだ。

 

  先ほどと別の委員は、「身体障害者手帳1級の方で、普通に車を買って、普通の仕事をされている方もいます。それでこのサービスを受けている姿も見ていますので、決して不正受給とはいいませんが、それを見ている健常者からすると、おかしいと見えてしまいます。」と述べていることが印象的である。

 

 このタクシー助成事業、聞くところによると、対象障がい者の半分くらいしか申請しておらず、さらに年間36枚を使い切ってしまう人が決して多数ではないといわれている。それは当然だ。この制度を利用すれば、ほとんどの場合自己負担額が生ずる。決して無駄遣いはしない、できないものであるからだ。

 

 本来であれば、さらに使いやすい制度にするには、どうしたらいいかと検討するのが、行政の努めであろうと筆者はいいたい。

 

 事業仕分けから4年が経過したが、昨今の人口減少からも、函館市でも制度対象の障がい者は減少しているとのこと、真の共生社会を目指すというなら、この制度を縮小するような検討はされるべきではないと思うものである。