植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

石印材を整理しはじめた 田黄の謎 (その2)

2023年09月14日 | 篆刻
このブログでは、何度か「印材の王様」田黄石のことを紹介しております。


ここらあたりを参考にしていただければと思います。
重複部分が多々あるかとは思いますが、それほど思いいれが強いとご容赦願います。

田黄石が何故素晴らしいか、それは一番最初の頃、つまり3百年ほど前には印材として、夾雑物が無く彫りやすく、粘りがあって崩れにくい、といった実用面からの評価でありました。しかし、その妖しいまでに飴色・琥珀色の亜透明の石の色つやが中国の書家や富裕層を魅了するようになります。もともと畑の土の中からごくたまに出土する小さな丸石でありました。その表皮を除いて宝石のような地肌が覗くと農家さんや「トレジャーハンター」たちが狂喜し、爆竹を鳴らしたといいます。ある程度の大きさ(多分数十g)ならば今の通貨で100万円くらいしたものもあるのです。その当時、金の同重量の価格と等価とか3倍とかで取引されたと言います。ただし中国は大袈裟に言うお国柄、白髪三千丈なんて平気で書きます。
今回の「福島汚染水」問題もこの国だけが大騒ぎしてますね。

それが、ヤフオクではそれらしく設えた金色に輝く大きな石が沢山出品されています。それがせいぜい10万円、高くて30万円くらいという相場ですね。理由は厳密にいえば「田黄石」とは違う石だからであります。

田黄石の狭義の定義はいくつもあります。まずは、寿山の麓の田坂の上中下の坂にある水田の地中深くから産出した石、というのが大前提です。そして長い歳月で角がとれ丸くなっていて、ほとんどが外皮に覆われています。白や黒・灰色などの石皮ついた不整形の小石です。

その中の石にも条件があって①石格といわれる天然の赤い筋「紅筋」がある ②皮がある。一番特徴的なものを「烏鴉皮(ウヤピー、うわひ)」と呼びます。③蘿蔔紋(らふくもん)、大根を輪切りにした面のような紋様がある。などが最低限のハードルなんだそうです。

そこで昨日のブログで紹介した謎の石。
以前ヤフオクで「烏鴉皮 田黄」などの説明書きがあったものですが、1万円位で落札しました。重量が117gなので只今の金相場1g1万円として、本物ならば117万円の価値という事になります(笑)。
勿論、これは田黄石では無い、とみてヤフオク参加者は大した金額で入札をしなかったのです。底の地色が黄色に白色・赤い色に透明部分も含まれていて、田黄石の均質な石質とは違います。また、石皮や石彫も新しく、安直な雰囲気でありました。しかし、今後、烏鴉皮つき田黄のこれだけの大きな石がワタシの手に入る可能性はほぼ0なので、「似たようなもので良かろう」と思ったわけです。

それで手元に届いたものを子細に眺め、品定めいたしました。一番心配したのが人造石、次に天然石だが、着色していて、皮は吹き付けか塗りものかもしれない、でありました。
実際、表面の細工が中途半端で石皮の部分の方が多いのです。文字とか黒く塗っているし。また本来は印面はまっ平にならして磨き上げるのですが中央部分は凹みがあります。

それでも、紛れもない天然石であります。石皮は元からあったもので、石本体の中の一部にも食い込んでいました。石の種類はおそらく母岩が「杜陵坑」別名都霊坑、ではなかろうかと思います。色が混在しても肌理が細かく艶やかで「巧色」と呼ばれる銘石であります。「佳材は田黄と並ぶ」と呼ばれるのです。
ワタシのあくまで想像ですが、この品物はごく最近、ここ10、20年前後の制作で、その専門家ではなく弟子あたりが刻んだもの、途中で何らかの理由で仕上げないまま、持ち出したとか換金したか、という感じです。それにしても原石が佳石で、皮が残ったおおぶりの細工付きの印材で、「鑑賞石」としても十分な品物とみております。まぁ、自分にとっては掘り出し物と言えます。

さて、本物の「烏鴉皮・田黄」はサンプルレベルでありますが、これであります。
これは、恐らく扁平で細長い田黄石原石の印面を取るために切断した、端材の方でありましょう。小さいながらも9gあります。これとて、数万円してもおかしくない珍石なのです。
コメント
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