植物園「 槐松亭 」

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田黄石 印材の王者は素晴らしい!! らしい

2023年03月04日 | 篆刻
以前このブログで紹介した「田黄石」の記事は、まだ印材蒐集の初期の頃で、読み返すといくつか曖昧で不勉強に思います。今更書き直しても仕方ないのであえてその編集はせずにおいております。これですが、なんと私のブログの中ではベスト5に入る人気記事であります。分からんものです

本日はその改訂版というか、田黄石の魅力と今を赤裸々に紹介したい(笑)と思うのです。

ざっと田黄についておさらいすると、印材として名石を数多く生み出した一大産地である寿山系の寿山郷に「田黄坂 」という農村があります。数百年前からそこの畑などの土中から見つかる小型の丸石で、表面を削ると琥珀色に輝くばかりの半透明で美しい石、これが印材として適したヨウロウ石であります。

それは、露天掘りや山坑・採石場といった大量に採取できる通常の印材用の原石に比べ①大変数が少なく希少である ②混じりけが少なく黄色系の半透明な大層美しい石 ③彫りやすく夾雑物が少なくしかも粘りがあって壊れにくい といった理由から石の「王様」と言われます。遠くからこの石を求めて多くの人がこの「田黄坂」に集まり、一個でも発見すればそれだけでひと財産になった反面、運悪く巡り合えないまま破産するような一家も数多くいたそうです。いわば、中国版ゴールドラッシュでありますな。

それほどの希少で高価な印材なので、まがい物の数量も半端ないのです。先日このブログでお見せした「人造石」は論外、天然石でも、偽物・類似品の方がはるかに多いのです。その一つが、同じ山系から産出される似たような色合いの石であります。もともと「田黄石」の故郷は寿山の山の中でそこから長い歳月を経てがけが崩れて落ちた原石が流れる川を辿って麓の坂に辿り着いたものであります。

従って田黄は土の中に長い事眠っていたものの、もっと大昔、その大元は山の中や崖にあったのです。近在の上流の山に母岩が眠っているので、成分や材質にはさほど違いがありません。そんな石を切り出して、外観がよく似た石を自然石様に整形し「田黄」として扱い、「新田黄」と呼ばれることもあります。

田黄石の厳格な定義は①田黄坂で採取された皮付きの自然石 ②温・潤・細・結・凝・膩という「六徳」 あるいは「柔・潔・美」などを加えて「八徳」が備わっている ③「蘿蔔紋(らふくもん)」が不可欠 ④真っすぐで緻密な 紅筋が走る などなど多くの条件が備わっていることだそうです。蘿蔔紋は大根を建てに割った時に現れる筋状の模様です。

田黄石は、山隗から離脱した後、川に流され堆積した土中に留まり、また地表に露出したりと様々な環境の変化の過程で微妙に変質していったのです。また、昔から農民が焼き畑などで高熱で加熱した結果原石が焼けて変化したりもしているのです。結果、田白や田黒といったおおまかな区分けから、黄色の色合いや色つやで、橘皮・栗子・黄金・枇杷・桐油といった細分類をされています。

専門家は、そんな定義に合致して初めて「本物」と鑑定するらしいのですが、前述のように、母岩が上流の山の中に岩塊として存在するし、本当に田黄坂で採取したかの証明はほぼ不可能です。一見して金色・飴色・琥珀色に輝く艶があって均質緻密な自然石形の石から、上記の特徴があるかを総合的に判断するのでしょうね。

また、目方で取引される大変貴重なものなので原石のまま、あるいは表面の皮を薄く削った状態で取引されることも多いのです。印材としてなら、削って彫りだす持ち手の飾りの「紐」も、もったいなくて彫りません。その代わりに最低限の重量減で済む表面に薄く浮き彫りする「薄意」を精巧に刻むことが多いのです。ワタシは入札する時、貴重で高価な印材を使った証が、芸術的で優雅な薄意である、という法則を判断材料の一つにしております。
 愛読書の一つ、「墨スペシャル 石印材の楽しみ」からの転載です。これが本物なんですね。


そんな多くの人たちが血眼になって探し、これを尊んで欲しがる大金持ち、篆刻家や骨董美術家が無数にいた訳なので、昔は真正ならば同じ重さの黄金の値段で取引されたそうです。それから今は品物の状態によって3倍から10倍となると言われています。今現在、金の値段は小売価格【9000円】(1g)程度です。ワタシ達が用いる印材は、通常最低でも5g、実用的には10gは必要です。すると、例えば10gの田黄石が本物ならば、金の価格の3倍として27万円という計算になりますね。

さて、ワタシがヤフオクでこつこつ落札してきた「田黄石」ぽいものは、すでに20数個あります。一個当たりの落札額は「不明」であります。いちいち控えているわけでもなく、複数の出品物の中に混じっているのも幾つかありますから。しかしはっきり言えるのは、ヤフオク出品者の謳い文句、説明書きはともかく、「真正」の田黄の相場で入手したものは皆無であります。なので、その価格も最高で2万円位?、平均せいぜい1万円と言うところかもしれません。ヤフオクは言うまでもなく「玉石混淆」、新品も使用済みも、本物も偽物も一緒くた、写真のみで判断するので、それを承知の上で概ね割安で落札出来ます。滅多にない事ですが、ガラクタ同然の中にも、お宝が隠れていることもあるから「やめられない」のです。

ワタシの蒐集品で、田黄石にちょっと似た石であります。黄色ぽい透明感がある、という最低限の共通点しかありません。断言しますが一つも本物はありません。

鹿目格・高山凍・連江黄・杜陵坑・等々 類似した紛らわしい黄色の石が多いのです。中には稀に田黄を凌ぐような美石もあるらしいので、区別するのがなかなか厄介なのだと聞きます。

こちらは、ワタシの乏しい経験から、もしかしたら「田黄石」に近似したものかもしれない。田黄石でも最も下等に位置される石の可能性があると期待しているものです。
ハッキリ言って、様々な「亀裂・夾雑物・色むら」などがあって、高価で上質の田黄石とはかけ離れているのは確かなのですが、どれも大事にされてきたような、あるいは高級石としての風格や美しさを感じさせる要素があるのです。例えば左下の角石は、少なくとも3人の方が「側款」を入れており、某銀行の頭取の姓名印であります。これが、そこらに転がっている「駄石」であろうはずがないのです。

悲しいかな、これが「田黄石」の本物という実物を手に取って見たことがありません。何が田黄石か知らずに集めているのですから、いつまでたっても確証はありません。

ワタシが、本気で本物の田黄石の蒐集に向かったら、恐らくその先は遠からず「資金枯渇」、生活破綻でありましょう。鑑定書が付くような田黄石ならば軽く100万円を超えるそうであります。上記の写真の一番大きな石は300gほどの重量です。これが田黄ならば、300g×3×9000円=810万円となります(笑)

それでもこんな調子で、あと50個位田黄石まがいの落札を続けていたら、もしかしてひょっとすると本物に巡り合えるかもしれませんね。それくらいならば、ワタシも財産を失って生活困窮者にならずに済みますね。

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