植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

日展 とりあえず出品用作品を作ることにした

2023年07月08日 | 篆刻
昨日、うれしい知らせが届きました。

ワタシは、2年半前に「サロン槐松亭」という個人的なグループlineを始めました。書道チャットに、「ワタシが下手な篆刻印をタダで提供するから、欲しい人は彫らせてください」と呼び掛けて応じてくれて、実際に印を彫って差し上げて人だけで構成されています。(勿論全員ではなくて、余裕がある方が参加してるので、およそ全体の7割くらい、総勢16名です)

その中で最年少高校生のS君が、「高野山競書大会 」の学生の部で特別賞「高野山書道協会賞 」を受賞したのだそうです。本大会には、数年前にワタシの行っている書道教室の先生に出しなさい、と言われて半切を出品しましたが、入選程度の末席レベルくらいだったか、大した結果ではなくて、忘れていました(´;ω;`)。

彼は、わずか数年の書道歴で、大変な努力家・研究心旺盛で、篆刻を含めて才能のある若者と見ていました。微力ながら、篆刻に関してはここ2年、いくらか指導めいたこともいたしておりますが・・・・

いずれにせよ、個人出品で、こうした特別賞が取れるというのは大したものなのです。ワタシは、高野山以外に、一度だけ公募展に出品したことがありました。日本武道館 書写書道大展覧会というものでした。その時「特別賞」を除き、上位約1~9%までの中に該当する「日本武道館賞」というのを貰ったのです。これは一般賞なので、大したことはありませんが、それでも書道を本格的に取り組んで始めた出品した作品が、認められたので大変うれしかったのを覚えております。

奇しくも先日のブログで書いたように「日展」の申込書が(軽い気持ちで、取り寄せたことすら忘れていたのに)届きました。それは日展に本気で出品したいとは思っておりませんし、目標でも目的でも手段でもなかったのです。しかし、出品できなくても構わないが、そうした最高レベルの展覧会へ出品するための「作品制作」には価値がある、と思い始めたのです。

で、さっそくサクッと粗彫りしました。わずか1日ですから、作品展に出すにはあまりにも雑で簡単すぎ(笑)ですね。普段彫っている2㎝角程度の小印ではなく、ごまかしがきかない大型印であります。

いわば試しに掘ってみて、調子が出たら4.5個を制作し、師匠に見せてGoサインが出たら、14千円を払って出品する、という一応の計画であります。
そうでなくても、毎日彫っているので、人に頼まれた印や摸刻印ではなく、創作印・作品作りというプロセスを通じて一段の経験値が上がればそれでよし、と考えております。

で、ふと思い出したのが半年くらい前に彫った印の事です。
これにはいわくがありまして、例によってヤフオクで落札した印材に「中島藍川」先生の側款がある大型印がありました。中島先生は、全日本篆刻連盟 元会長で5年前に他界されています。ヤフオクでここ1年ほどチェックしていますが、私蔵されていた印材・篆刻印がここにきて遺族の方から一部が処分されているように見受けられます。
 石の種類は斜めに透明の層が走る寿山石で、落札額は5千円位でした。通常なら「藍川先生」の真正の自作印(出品歴があるような大型印)はヤフオクでだいたい5万円以上で落札されています。それがなぜ安かったかと言えば、肝心の印面に彫が無い「未刻印」であったからです。側款には「墨子兼愛 摩頂放踵利天下為之 」と彫る(つもり)でご自身の雅号まで彫ったが、何かの事情で、刻字に着手しなかったものと思われるのです。これはコレクターさんからしたら、価値の低いものですね。実際彫るために石の角を成形した形跡もあります。

こうした手の込んだものを贋作として売ろうとすれば、100%印面に彫りますよね。つまり先生が持っていたものと断定していいが、その価値は大したことは無い、という印材なのです。
これを入手したワタシ、この石を手に取ってしばらく考えていたのですが。「先生の遺志を継いで、篆刻印を完成させよう」と、思ったのです。

ここで、誤解のないように言っておきたいのは「先生の側款が本物で、それに即した文字の印が実際に彫られたら、本物の印だ」と誤認させて、高く売りつけよう、などと邪な気持ちは毛頭ありません。それは犯罪であります。先生が実際に彫ったらどんなものをを彫るか、も考えません。中島先生の特徴的な字法・章法を真似たら、やはり模倣印・贋作印に近づいてしまいます。

それで、自分が好きなように彫ったのがこれでありました。
藍川風の印の特徴は一切考慮しておりません。ただ、先生が彫ろうとして整えた印に、気持ちと自分の技術の限りを込めて彫ろうとしたのです。

そのせいか、今見ても割合よく彫れている、と「自画自賛」しております。これにもう少し手を加え、彫ミスはアロンアルフアで埋めて補刻したら、もしかしていい印になるかもしれないのです。

出品には、所定の印箋に捺す「印影」だけで、石そのものは提出不要であります。これは、中古品の印材で、たまたま側款があったもの、印稿も字刻もワタシのオリジナルですから、出品するにはなんの問題もないはずです。

あと二つほどをこの一か月で彫ってみて、どれか良さそうなものを出してみよう、というとても現実的で実現可能なプランが目の前に現れてきました(笑)
繰り返しますが、入選などは考えてもいないのです。なんの団体や社中にも属さないでしかも初めて「個人出品」する全く無名の素人の作品なんですよ。篆刻部門では、5~6百点に及ぶ出品があるそうです。実質やり始めて3年足らず、67歳で篆刻家見習いのおじいが、気鋭の若手やら名人の篆刻家のお弟子さんに伍していけるはずもありませんね。だからお気楽で、好きなように気負わずに彫ればよかろう、と思えますね。

ワタシはかなり前から「有言実行」を旨としております。何か計画しても黙っていれば、やらなくても恥をかいたり馬鹿にされたりしませんね。それを公言し「一丁やったるか」と多くの人に伝えることによって、自分を追い込む、逃げ場をなくして最後までどうにか終わらせるのです。自分のやれる領域を広げ、新たな世界や経験を積むというためには、このやりかたが性に合っているのです。
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