植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

偽物にご用心 田黄石は半分本物カナ?

2023年07月19日 | 篆刻
世の中は偽物と本物のどちらかで出来ております。

昨日ワタシが留守をして仕事場で篆刻をしたり、印材の整理(というより、混ぜて散らかしている)をしている時間に、母屋の家電に「平塚市役所」から電話があったそうです。
電話に出た家内によると
・保健課の「高橋」と名乗る若い男の声
・以前送付した書類の返信が無いので、どうなっているのでしょう?との問い合わせ
・緊急連絡先(携帯電話番号)を教えて
などと言い、向こうの指定する電話番号に連絡するよう依頼したそうです。

不審に思って、市役所の代表電話に電話して確認を取ると、保険課には高橋という人物はおらず、「還付金詐欺」で同様の事例が起きているということでした。真っ赤な偽物で、個人の電話番号や名前を聞き出すという典型的な詐欺電話でありました。警察には家内からこれこれの偽電話がありました、と連絡したそうですが、警察ではこの手の話が毎日でうんざりの様子であったとか。

昨日の朝は、実は警察官2名お隣を訪問していて、こちらは本物でした。どうやらお隣で、不審死かなにかがあって調書を作成のために来ていたようですが、個人情報ゆえ詳しいことはっきりしたことは教えてくれなかったのです。

さて、ワタシは印材など篆刻用品を中心にヤフオクでいろんなものを落札しております。だいたい1週間で2、3件というところでしょうか。ヤフオクは経験的に偽物と本物が交錯し混在し、悪意と善意のはざまでリスクを承知で入札するのです。先日届いた印材まとめて12本は、印箱付きで8千円で落札しました。布製の印箱はだいたい一個4~500円です。これにそれなりの未刻印が付いているのでまぁ相場というところでしょう。一個だけ箱に入ってない鶏血石ぽい印が混じっていたのです。写真を見る限り明らかな作り物でしたが、これを数のうちに入れなくても損はしない、と思いました。

で、届いたものはやっぱり偽物(笑)、普通の寿山石に赤い塗料を塗りつけたもので、鶏血などと言える代物ではありません。ネット上でも鶏血は偽物・類似品が多いことで知られています。赤い角のところを削ると中は地の色になっています。


それはともかく、数日前に、珍しく一晩で3件の落札が実現しました。例によって9時過ぎには布団に入ります。ヤフオクがヒートアップして入札期限を過ぎて分刻みで高値更新する「勝負」の時間帯にはスマホを観ないのです。寝る前にそれなりの金額を入れて、そこを上回る入札があったらジエンド、という風に考えて無駄な競争に巻き込まれないようにしているのです。実際、吊り上げ行為と思われる入札も散見し、むきになって入札していると思いもよらぬ高値でつかまされる心配もあります。

なのでほとんどの出品には落札に至らず、朝を迎えるのですが、その日だけはワタシの入札額を上回る金額が入らなかったのです。
その落札品は以下の通りです。
①大観印泥(未使用)「珍品」2両装(60g) 10,000円
②田黄石彫刻印材2点            10,750円
③石印材纏め売り(約50本)         4,400円

①は国内で唯一と言っていい国産印泥の高級品「大観印泥」で、珍品というのは、高級なものから「貢品」「珍品」「精品」以下箭鏃(せんぞく)、 美麗、 光明の順で2番目に高い高品質のもので、定価が27,500円なのです。印泥コレクターでもあるワタシは、この大観印泥だけは持っていなかったので、定価の1/3に近い1万円は安い投資でありました。

②の「田黄」は、正直なところ「嘘っぽい」大きな石と、小さな小さな石の二つセットで、前者は大きさから言って、もし田黄ならば、最低でも5~6万円でもおかしくないサイズでした。田黄石にしてはやや色が暗いのと、印面に「福寿」という飾り文字(逆さ文字ではない)があるのが気になりましたが、人造石では無かろうと感じたのです。

小さな方は10gに満たない石ですが、こちらは小さいなりに色つやが良く、薄意(表面の浮彫)も田黄石に共通する特徴がありました。まぁ、これは誰かが落とすだろう、と気にも留めず、12千円位の札を入れて就寝したのです。ところが、起きたら「おめでとうございます!」とメッセージがありました。
小さな欠片の石が本物の田黄としても、せいぜい3~5千円でしょうか。すると大きいほうが(今までも再三騙された)偽物・人工石ならば8千円ほどの損になりますね。

最高級の田黄ならば、金と同じ価格で取引されたと言います。現在の金は1gで約9500円。10gの最高レベルの田黄は10万円という計算になりますね。

そして、昨日現物が届きました。プチプチにざっとくるまれた様子や、手に取った瞬間の印象からは「うわ、またやられたか」と思ったのです。しかし、よく手に取ってみるとずっしりと重いのです。ありゃ、これは本物の石ぽい、と思って迷わず印の底に篆刻刀で削りました。樹脂製ならば、削りカスはつながって薄く丸まります。火をつけると燃えます。ところがこれは、普通のさらさらの石粉が出てくるのです。さらに、かるく1000番の細かいサンドペーパーでこすって、セーム皮で磨いてみました。独特の艶がでて間違いなく自然石でありました。重さをはかると200g、小さな田黄は6gでした。


恐らく、正統な田黄石ではなく、その母岩の一つと言われる杜陵坑の凍石の一種「黄杜陵」ではなかろうかと思います。専門家でも田黄と誤認するものも多く、近年の輸入印材では「田黄」という名目で売られていたといいます。つまり田黄石かは判然としないが、本物の自然石の佳品でありました。杜陵坑は別に「都霊坑」ともいわれる山坑で、「高山」「坑頭」と並んで優材・良石を産出するので有名であります。
小林徳太郎先生著の「石印材」には「だいたいは褐黄色微透明で罅裂(せきれ=ひびわれ)多く白点・砂店を含む堅めの石」という記述があります。しかし、中には田黄を凌ぐほどの通霊純浄のものもあり、上質なものは亜半透明でしっとりとうるおい、いかなる細刻にも適する絶妙の石とされています。
白点とひび割れがありますね。間違いありません。しかも少し刃を入れた感触はいかにも彫りやすく砂など入っていません。
ではこれはいかほどの価値になるか?・・それは大した問題ではありません。人に売りつけるでなし。自分の石印材の鑑定のスキルが上がり、自分のコレクションが増え、たまに手に取って愛玩掌玩する楽しみが増えただけで満足でありましょう。
小さいほうの石はこれ。二つの石のうち下のものです。上の石はちょっと前に5千円ほどで入手した「田黄」であります。

いずれの石もはっきりとした「薄意」が施されていて「貴重・希少」な石として扱われていたことは明白なのです。田黄でなくても十分な美石で、納得の落札品でありました。

因みに田黄石の偽物・人造石はこれです。持った時やや軽く、古いものに似せている分汚らしいものであります。1円の価値もありませんが、これをネットに再流出させてはならない、がワタシの信念であります。

③はまだ届いておりません。50個も印材があれば、一つ一つ紙やプチプチで梱包するだけで手間と時間かかるでしょう。1個90円程度の落札価格なので、どんな石が来てもなんてことはありませんが、どれも実際に落款用に彫られ使用されていた印材達なので、「本物」の石印材であることは間違いないのです。
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