ロシア人監督が北朝鮮管理社会の現実に迫ったドキュメンタリー。とはいえそこは舞台が北朝鮮、普通のドキュメンタリーではない。朝鮮少年団に入団する8歳の少女、ジンミに一年間密着して撮影をしたが、撮影シーンは北朝鮮当局の演出が入り、撮ったフィルムは全て検閲される管理っぷり。真実を伝えるべくロシア人スタッフたちは、カメラのスイッチを常にONにして隠し撮りを行い、検閲前のフィルムを秘密裏に持ち出して映画を完成させた。
当局は工場勤務者の方が受けがいいと考えたのか、ジンミの父親の職業は新聞記者から縫製工場のエンジニアに、母親は食堂勤めから乳製品工場の従業員に、設定が変更される。工場では、ジンミの父も母も架空の生産性向上などで職場の皆から表彰されて花束を受け取る。その成果がどんなに素晴らしいか、皆の前で演説する役割の班長たちはまだしも、普通に座っているだけの本来の作業者は拍手こそ大きくするものの、どことなく白けた顔。そして当局者の演出によりテイクが重ねられる。
ジンミの家の食卓にはたくさんの種類のおかずが並び、そこでの話題はおかずの栄養価!そしてカットがかかるとそそくさとおかずが並んだ机は下げられる。当然撮影シーンの会話は台本があり、ジンミや父母が練習する姿も。ジンミの少年団の1人がダンスの練習中に怪我をして入院し、先生と仲間がお見舞いに訪れるシーンも、そこで交わされる会話は台本どおりのもの。何かの祝賀行事なのか市内で大勢が躍る様子もあるが、音楽が終わり解散するときには「○○地区の人は今から帰ってください」という放送の指示で順番に解散し普段からマスゲームをしてるんだなあと。学校では行進の練習がまるで運動会の前のように繰り返し行われていて、ああいう団体行動がきっと身体にすりこまれているんだろうなあ。
学校の授業では、戦争中に日本軍がどれだけひどいことをしたのか教えていました。他にも退役した元軍人のおじいさんのお話を皆で聞いたりしますが、子供は正直で授業中もお話を聞いているときも、つまらなそうな顔や飽きた顔をしていたり、中には眠そうにあくびをする子も。おじいさんも同じ話を何回もするものだから、どっちもどっちでしょうか。バスが停まったのを乗客が皆降りて慣れた様子で押し始めるのは、いつものことような感じがありました。燃料切れなのか故障なのか。
一番背筋が寒くなったのは、ラストでジンミが涙を流した後。泣き始めたジンミにスタッフが「好きな歌を歌ってごらん」と言って演出なしで歌い始めたのが、将軍様を賛美する歌!独裁国家の個人崇拝に空恐ろしさを覚えました。
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1/29 シネマート新宿
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