生活の中で使われる"コスパが良い"と使われている略語は安いから買う・・意味はあまり好きじゃない。物の価値にアートな部分とか信用ブランドなどが欠けた商品など意味があるのか・・と 更にタイム・パフォーマンス・・タイパ の良い行動様式、つまり時間を効果的にと言うのも 旅行会社の中身の希薄なツアーの様で 実行しても何かが欠けて満足感のない行動とか。損得を考える前に「それが必要か、目指す目的は何か」を見定めなければ 現代人は忙しくて無駄が多くなるばかりだと思うのだ。
そんな現代行動に欠けたものを見直してみようと 司馬遼太郎の本を読み返して見た。有名な作品は 昔にドラマで見たり本も読んでいるが ブックオフ店で探すと 未だ他に読んでなかった作品も多く 特に雑誌連載のエッセイの文庫本は知らなかった、全巻必要な播磨灘物語は通販に手配し 店頭で見つけた「この国のかたち」「以下無用なことながら」など短編集で文字の小さくない文庫本を9冊購入した。中にあった「以下、無用のことながら・・古本の町」 古本屋を愛した作者によると 明治・大正時代は本屋さんと言えば 古い本が常識で紙幣と同じ様に人から人に流通していたのだと言う、多分、今の ブックオフが町中にあり庶民が安い価格で高価な書物も自由に購入出来たのだろう。
作品の「人・地方・地名・宗教・幕末・文化・歴史」など 改めてその知識の多彩さと膨大さに驚くが、大正生まれで外語大学で蒙古語学を専攻したと言うから 若くから桁が外れた人物だったらしい。かつて私も 坂の上の雲、竜馬が行く、菜の花、同じ時代小説で吉川英治の新書太閤記など 一時期夢中で読んだ記憶があるが 日本は五島が連なった島国で孤絶した地理的な環境に生きてきた国なのだと思い知らされる、欧州大陸は多言語と国毎に違う文化と社会体制を持ちほぼ均一性があるが彼らは庶民でも他国に渡り親戚も多く自国と比較することが簡単で 政治外交と言っても地理的な現実の利害関係で結ばれる政治技術が常識なのだ。
我が国にそんな経験も知恵も無いのも当然で 大陸からは東方末端の島の一つだと思われる歴史も仕方がないが今はグローバル化になり半世紀経ってもそれが克服できないでいる。日本国内も地域性が多様にありそれは 米の1/26の面積でも東西南北3000Km、沖縄・北海道の距離は3300Kmの横長だからだ、農業の国だったので 変化を好まず「一生(所)懸命」と言う様な みんなで命を懸ける・・行動習性は昔も今も変わらない。歴史も世界知らずで失敗した戦争も 偶々成功した経済成長の原因も全てそこにあるようだ。作家が江戸時代と戦前戦後を調べ尽くして作られた作品と 作家は貴重な存在で調査によるとこの作家の再読率は78%と言う高率で常に本屋さんにも並んでいるのも納得できるが もっと現代に生きる人々はこの国の世界の座標位置を見直す為にも 参考になる筈だ。
面倒だと安直な商業主義の映画・漫画化は読む編集者の能力とか 売るための作品になり タイパは良いが 作者の伝えたい内容は1/100程度しか伝わらないだろう。昭和恐慌の子供時代のコラムには「倒産・夜逃げはざらで失業した人は故郷に帰る旅費もなく野宿して歩いた」とあり、戦争で学徒出陣になり幹部候補生で戦車隊に配属されたらしいが絶えず笑顔の軍人らしくない好人物だった様だ。阪神淡路大震災の翌年に73歳で亡くなり、数年前に生誕100歳だったらしい。もし、ご存命だったら今の世の中は何を言われるのだろうか。
暫くは読書の秋だ・・