技術は正直・・真実は変えられないのだが 会社と言う組織に入るとそんな幼稚な考えは通用しなくなる。若い時は分からないが、今の政治と同じで一般常識とか習慣には 階層があり その世界では判断は別の基準で決められることが多いようだ。
民間からのモータの大量受注の用途が枕元に置かれるデジタル・クロックだと知ったのは1969年の頃で主任職30歳の頃だ。納入開始から数か月後に 米国通販で売られたクロックの騒音がクレームで原因はモータに騒音の出る物が混在している理由だった。返品対象の物も別に異常音と言うレベルではないのに組付本体は機密とかで渡されず原因棚上げで 納入は止められず 営業も仕方なく顧客が言う基準を厳しい値で選別納入するしかないと私にも理解不明の事件だった。
1ドル360円の時代に、海外現地修理が必要だと私と顧客側2名の3名で羽田から出発したのが冬の2月、北海道より緯度の高いニューヨークはとんでもない寒さだった。ウエアハウス倉庫に 30名ほどの作業員を揃えた場所で解体・修理することになった。当初1か月の予定が、結局4月半ばまでニューヨーク・ロサンゼルス・カナダを回り 同じ様な場所で対策作業をして回った。
現地の作業で私のギヤ部にオイル注入しギヤ音を消す作業の傍らで 他は自社のクロックの桁上げバネを弱める作業をしていたのに驚いて聞いても再調整と言う理由だった。直ぐに分かったのは 顧客側では 騒音原因は本体(桁上バネ負荷)が原因と分かっていて納入先に責任転嫁したと確信したので 直ぐ手紙で日本に連絡したが 何故かあまり問題にされず会議結論は納入側責任となり 毎日の選別納入が重なり 外された保留在庫の山になると納得できない様な報告内容だった。
結局 その顧客は営業にとって他の制御部品の大型顧客で モータ比較から 全てのの注文を失うより 非を認めた方が得策だと言う経営決断だったようだ。このことは、その後自分が設計した製品でクレームを起こし ・・上司からもその結果の説明もなかったが、そんな事なら説明も出来ず悔しい思いだったのだろう。
働く正直者がバカを見る話しは 童話でも司法判断でも、現実に平和の為に戦争も起こるし 原因と結果は正直な筈の技術にも、経営判断で原因を転嫁する 筋の通らない事例はこの世の中には多いのだ、自分の未熟から起きたクレームも 実は許可した側にも責任の一端はある筈で原因が納得できれば相互に非は認め早急な修復こそが信頼になる事を学びリピート客も増えた、損害賠償に至る処理でも商品代替えで実害減らす営業テクニックを見て 企業社会も まるで抜きつ抜かれつのゲームの様な世界だった。
しかし一般が海外に行くことが夢の時代、30歳で米国中心部で過ごした経験はその後の自分に決して無駄なんかではなかった。サラリーマン仕事も、与えられた仕事を積極的に取組む姿勢さえあれば 他に変えられないポジションが確保できる 決して捨てたものでもないのだと。
自分と違う世界に気をつけないと !
経験は