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碧い山・青い海

趣味の山登りとか、技術とネット情報を照合し個人メモに・・

1310-産業自動化も時間制御から

2013-10-30 | hobby
 先に、家庭の自動化は炊飯器に組み入れた「サーモ・スタット」とタイムスイッチからだろう・・と書いた。タイムスイッチには小さな東芝製・交流モーターが原動機として使われ、これは周波数は完全同期しているので停電以外はとても正確。私はひょんな事から、このモーターを開発生産を担当することになった1965年頃の話だが、これには米GE社のPATが切れたので何処でも作れる様になった背景がある。発明者はワーレンと言うドイツ人科学者の名前をとって「ワーレン型モーター」と呼ばれたと当時の文献には書かれていた。現在は、理化学辞書にもWEBにも出てこないので忘れ去られてしまつたらしい。ヒシテリシス特性と言う磁性に対して軟鉄・鋼鉄の中間性質を持つ材質で座金を作り、それを簡単な二極固定子の交流磁界に入れると3600rpmで回転する・・と言う原理なので構造は難しいものではなかった。

 当初、東芝と同じ ロータ素材はスェーデンのコバルト含有特殊鋼、歯車もドイツ製の歯切り盤で生産していたが、2年後にはロータは炭素を含有した3倍性能で価格は1/5の素材を三菱製鋼と協力して開発、歯切り盤も国産になり超合金ホブカッターを専門業者とタイアップし歯車加工コストが数分の一になった。改めて国内技術者の底力と執念、歯車設計・プレス技術・精密成形技術など沢山の事を学ばせて頂いた。そんな協力を得られた事でこの小さなモーターの商品力が一挙に高まり、民間用途でもいろいろな方面からも引き合いがあった。主用途は、工業用制御タイマーだったが、当然市場からも高評価も得られ コンピュータ・デジタル時代の到来まで 産業自動化の重要部品になっていった。メカニカル技術は、精密好きで追求し極める事が得意な日本人に合っていたのだろう。

日本人の技術力が発揮出来ないのは、目に見えない分野 例えば「電波・電子・宇宙」には弱いと思う。21世紀のデジタル時代になり、家電大手が世界に負け続けて経済も低調で先が読めない。スマホなどの技術創造力は外国企業には追い抜かれ、取り残された雰囲気もあるのだが、コンピュータの最後にはモーターがあり 操作も結局のところメカニカルか残されているので まだまだ勝敗は判らない。

 精密な歯車で減速し、オイル封印した構造だが後半には低速シリーズも追加され 用途は主に、限時継電器と呼ばれた制御用タイマーとなりセンサーもコンピューターも無い時代、設定された時間に電気をオン・オフするだけの機能なのだが、プラグイン式の使い良さもあり「温度管理・圧力管理・容量管理・距離の設定」など生産・流通・サービスのあらゆる分野に使われた。想定していなかった洗車機・農業の米乾燥機など用途の広がりもありユーザーの知恵も加わった。メカニンル時代の小さなパーツで、寿命と言う弱点を持つこの「ワーレン・モーター」が縁の下で活躍していた歴史があった。


 この写真は、後半の改良品の解体。歯車の大半は樹脂化されたが耐久性は3万時間音もなく回転する。生産は全て自動化され低価格・高品質な同期モーターだった。

1307-炊飯器は自動化の始まり

2013-07-11 | hobby
 昔話になるが、現代の何でもがコンピュータで制御され構成されている以前に家庭でより便利に・・」・とタイム・スイッチ考えられた電気時計があったのを覚えているだろうか。1958年工業高校を卒業し東京大田区の家電機器を製造する中企業(社員300人規模)を学校から薦められたままに応募し入社する事になった。東芝の下請けで当時人気の「電気炊飯器」の生産が主力だったが、私は別棟の「トースター」組立ラインでドライバーを使う工程を担当させられた。次々とベルトで送られる発熱体の付いた本体にクロームメッキのカバーを取付ける担当だが1分に一台、一日に約4千台のトースターが最終工程に積み上げられる様にも驚いたが、翌日の手のひらは豆だらけになった。





   これは「東芝トースター形TT-6」でなく欧州製の類似品・・GE製を国内向けにしたポップアップ式トースター

 2年間現場経験の後、技術部に配置転換となったが家電産業の盛況で技術陣強化の方向に沿ったものらしい。図面が得意だと言うと最初はトースターの設計補助をさせられた。なかなか興味ある仕事だったが、完了すると、次は国内で初と言う「自動トースター」設計・試作・試験・認定試験認可までを担当する事になる。毎日、食パンを10斤焼いてデータを取る日も続き、やがて「形TT-18 東芝トースター」として市場の店頭に並べる事が出来た。
 炊飯器に繋ぐと「朝起きれば御飯が出来る」と言うテレビコマーシャルで「タイムスイッチ」と言う物が宣伝されていた。置時計にスイッチを付けた商品だが時計企業からの提携品を東芝製としてこの企業で品質管理され出荷されていた。
 次の開発テーマはダイアル・ツマミで設定するこの「小形タイムスイッチ」。未経験の時計技術だったが時計会社から出向して来た先輩技術者から歯車の初歩をいろいろ教えて頂き学びながら何度も商品設計のやり直しをしたのを記憶している。時計と言っても動力は交流モータであり、減速部分だけを完成できれば難しくは無かったが、大電流の15アンペアのコンセントの設計も初めてでこの開閉試験には苦労した。ここは電気科で学んだ電力知識が少しは役立ったので学校の知識も無駄ではなかったと初めて思ったのだが、次の法律課題には困ってしまった。
 これは新分野商品で製造発売には「電気用品規格」の工場認可が必要で工場敷地・所有設備を各部署に調べ申請書類を法律書を読みながらまとめた。そんな不得意な苦労までさせられたが、何とか一年後の秋の新商品として「形TWM-701タイムスイッチ」が東芝から発売された時は、とても嬉しく誇らしくも思った物だ。




 御飯の炊上がり温度を検知して電源を切る炊飯器も、焼き上がり温度で自動でポップアップするトースターも仕組みは「サーモスタット」と言う温度スイッチを使った簡易な自動化だが、タイマーで決められた時間に電源を「入・切」出来るサーモスタットを使う簡単な自動化は、家庭での最初の省力化だつた気がする。