すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【サッカー日本代表】ハリルを「土台」にすべきだった

2018-05-09 07:29:29 | サッカー戦術論
長期計画のない日本サッカー協会

 日本サッカー協会には長期的な視点がない。あまりに行き当たりばったり。無謀で短兵急な結果主義だ。例えば田嶋会長は「(ロシアW杯で)1%でも2%でも勝つ確率を上げたい」などといってハリル監督解任という自爆をした。だが、こんなふうには考えられないのだろうか?

 まずロシアW杯はハリルで行き、大会終了後にいったんキッチリ総括する。例えば相手にボールをもたせ、まず守備から入ってカウンターを狙う戦い方はロシアW杯でどこまで通用したか? 日本にこの戦術は向いているか? 日本のデュエルと縦への速さ、裏抜けと裏を狙う長いスルーパスは有効だったか? ハリル起用で日本人の個の弱さはどの程度改善されたか? ロシアW杯では全体として日本のどこが通用し、どこが通用しなかったか? 伸ばすべき日本のストロングポイントと、修正すべき課題はどこか?

 ロシアW杯からこうしたデータを取る。で、ハリルジャパンをいったん総括する(これが重要だ)。そして、それをベースに次のステージへ進むべきだった。例えばハリル時代は粘り強い守備をみっちり積み上げ、それを土台に次はポゼッション系の攻撃的な監督を呼ぶのでもよかった。これにより点差や時間帯、選手の疲労度等に応じてカウンターとポゼッションを使い分けられるようになる。

「いまはカウンターか? それともポゼッションすべきか?」

 戦況による選手個人の判断能力や適応能力、応用力も上がるだろう。

 考え方としてはロシアW杯でまずハリルの指導により守備を7割ガッツリやる。と同時に、相手の戦術に応じた臨機応変なハリルの戦い方を学ぶ。で、その土台の上に次の監督でボールを握るポゼッション・スタイルを積み上げる。そして最終的には、状況に合わせて速攻と遅攻を使い分ける有機的なチームを作る。そういう長期計画でよかったのではないか?

 だが日本サッカー協会にはそんな長期的な視点がない。

 ハリルジャパンについての総括がまったくないまま(現にハリルによるロシアW杯は終わってないから総括のしようがない)、「ロシアW杯で1%でも結果を出さなければ」などと焦り、すべてを台無しにしてしまった。

 もちろんロシアW杯が盛り上がらなければ日本のサッカー熱が冷めてしまうとか、競技人口が減るのでは? とか、広告収入が落ちるとか、グッズの売り上げが、とか、そういう大人の事情はあるだろう。だがそれにしても「ハリル解任」というその場しのぎの対処はあまりに無謀だった。

 付け焼刃の西野ジャパンで、いったいどんな実りあるフィードバック(総括)が得られるのか? そう考えるとあまりに虚しい。

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【ロシアW杯】「日本は攻撃サッカーを」という甘い誘惑

2018-05-06 08:12:59 | サッカー日本代表
国民的な現状認識ができていない

「日本はW杯に正々堂々と攻撃サッカーで臨んでほしい」

 そんな声をよく耳にする。

 これは日本サッカーが世界の中でどの位置にいるか? および弱いチームはどんな戦い方をするのがセオリーなのか? について、国民的な合意ができてないからだ。

 例えば2018年3月に行われたハリルジャパン最後のベルギー遠征について、「ワールドカップに出場できないマリやウクライナにさえ勝てなかった」という意見を聞く。この声は以下の3点で現状認識を欠いている。

 まず第1点として世界には、「ワールドカップに出られなくても日本より強い国はたくさんある」ということ。例えばウクライナは明らかに日本より上だった。W杯には出ないが、ヨーロッパにはああいう強い国がいくらでもある。

 これはひとつには、アジアのレギュレーションが欧州よりはるかに楽だから。ゆえにヨーロッパにはアジアより強豪国がたくさんあるのに、ワールドカップに出られる国はちょっとしかない。そういう規定だということだ。だから「W杯に出られないウクライナにさえ勝てなかった」という比較論はまったく的外れである。

 第2点として、冒頭にあげた「日本は攻撃サッカーをせよ」という意見を言う人は、「日本は世界の中では弱小国だ」との認識がない。そして、そうした弱小国はW杯でどう戦うのがセオリーか? を知らない、ということだ。

 第1点であげた通り、ワールドカップに出られなくても日本より強い国はたくさんある。つまり日本はW杯では弱小国だ。「弱者のサッカー」なる言葉がある通り、弱小国はW杯では「負けないこと」を目指す。まず失点しないことを考えるのがセオリーだ。であれば日本がやるべき戦い方は必然的に決まっている。日本は少なくとも守備から入るべきである。

テストマッチで勝つ必要はない

 さて最後だ。第3点として、日本はマリやウクライナに勝てなかったが、そもそもテストマッチって勝つ必要があるのか? というポイントへ行こう。ワールドカップに突入する前に行われる試合には、勝ちに行く試合とそうでない試合がある。マリ戦とウクライナ戦は明らかに後者だった。つまりテストマッチである。

 テストマッチでは新戦力を試したり、新しい戦術にトライして経過観察が行われる。そして出た結果を本番であるW杯に生かす。そのためのテストが行われる。ゆえに勝敗に特段の意味はない。まずは有意義なテストができること。次にそれを本番に生かすことに意味がある。

 第2に日本サッカー協会は、「マリ戦とウクライナ戦に勝てなければ解任ですよ」とハリルに明示していなかった。であればハリルはこの2試合を、いろんなテスト目的として自由に使えるはずだ。「親善試合であろうとすべて勝ちに行くべきだ」などという意見はまったくのナンセンスである。

 第3にW杯直前のテストマッチは情報戦の場である、ということ。コロンビアなどワールドカップで日本が対戦する国は、当然、マリ戦とウクライナ戦を偵察し分析している。そんな試合で本番さながらのメンバーと戦術をさらけ出してしまえば、日本は本番前に丸裸にされる。

 そして策士のハリルは当然そう考え、隠しておく部分を隠したままあの2試合に臨んだはずだ。つまりそれでは勝てないし、また勝つことが目的の試合ではないからそれでいい。

 結論として、「ワールドカップに出場できないマリやウクライナにさえ勝てなかった」という声はまったくの見当はずれだ、ということ。そして弱者である日本はまずW杯で負けないこと。つまり引き分けて「勝ち点1」を積み上げる。ゆえにまずは失点しないことを目指すべきだ。とすれば、そこであるべき戦い方は必然的に決まってくる。それは少なくとも「攻撃サッカー」ではない。

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【なでしこ】女子W杯2019に向けての現在地

2018-05-05 09:00:19 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
アジア杯で優勝しW杯出場決定へ

 なでしこジャパンは今年4月に行われたアジアカップで強敵・オーストラリアを破って堂々の優勝。2019年6月7日からフランスで開かれる第8回FIFA女子ワールドカップ2019への出場を決めた。そこでW杯を見据え、アジアカップ決勝の模様も振り返りながら女子E-1選手権(2017年12月)から課題がどう修正され、またどんな宿題が残っているのかを見て行こう。

 アジアカップ決勝では強烈なハイプレスをかけてくる豪州に対し、日本はブロックを低く構えて待ち受けた。そしてボールを奪うと早めに縦へロングボールを入れてリスクヘッジ。これで相手のプレスをかわし、速いカウンターを見舞った。研究通りだった。

 守備では随所でカラダを投げ出す強い対応でデュエルし、フィジカルの強い豪州に負けていなかった。あの女子E-1選手権では「ただ見ているだけ」で球際の粘りがなく淡白だったが、まったく別人のような長足の進歩である。

 またピッチを広く使ったウラへの長いスルーパスやダイアゴナルなサイドチェンジも有効で、グラウンダーのショートパスばかりで小さく縮こまっていたE-1選手権時からかなり進歩していた。ムダな横パスやバックパスも減った。ただしボールスピードに関してはまだまだ欲しい。密集地帯でパスを通すには強くて速いボールが必須。現代サッカーのセオリーである。

メンタルがグンと強くなった

 最大の収穫はメンタルだ。E-1では非常に消極的で弱々しく、すべてのプレイが中途半端になっていた。だがアジアカップ決勝では、フィジカルが強くて速い豪州に一歩も引かなかった。「彼女たちはいったいどこまで伸びるんだろう?」。そう思わせるサッカーIQの高さだった。男子とちがい、女子の修正能力には目を見張る。

 ただひとつ気をつけたいのは全体をコンパクトに保つことだ。アジアカップ決勝では相手が前からプレスをかけてくることもあってか、ラインが下がりブロックが間延びするケースが散見された。

 もうひとつはサイドチェンジの工夫である。例えば右サイドで前が詰まってボールが最終ラインにバックパスされたとき、DFがまた再度わざわざ混んでいる同サイド(右サイド)に縦パスを入れたりしていた。前が詰まってボールが戻ってきたら、必ず空いている逆サイドを見ること。この場合は左サイドへサイドチェンジすれば攻めがスムーズになる。

若い選手の伸びが著しい

 選手別ではCBでキャプテンの熊谷やボランチの阪口、宇津木、中島、鮫島ら中心選手に加え、若い選手の台頭も目立った。女子E-1とアルガルベ杯ではベテランと若手をうまく配合し、失敗しながら我慢強くテストを繰り返した高倉監督の手腕が光った。なかでも特にタイミングのいいオーバーラップが積極的な右SBの若い清水は、スピードと運動量、運動能力が際立つ。

 また視野が広く気の利いたサイドチェンジが目を引くボランチの隅田はサッカーセンスが抜けているし、ガッツと粘りのある守備が頼もしいCBの市瀬も楽しみな存在だ。アジアカップ決勝でファインセーブを繰り返したGKの山下や、隅田と並びサッカーIQが高いSHの長谷川もパスセンスがすばらしい(ただし長谷川は「必ずパスで終わる」のでなく、チャンスがあれば自分でシュートを打つことも意識してほしい。そうすれば一皮も二皮もむけて相手にとってイヤな選手になれる)。

 そして特筆すべきは圧倒的な決定力を誇るFW陣だ。岩渕や横山、田中、菅澤、川澄ら。彼女たちの高い得点力と個の強さを見ていると、「やっぱりサッカーは点を取ってナンボだなぁ」とあらためて思い知らされる。今後もこの強烈な攻撃陣を軸に、女子W杯で世界を驚かせてほしい。

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【サッカー日本代表】日本人にとって「組織サッカー」とは何か?

2018-05-04 06:49:48 | サッカー戦術論
誰も責任を取らなくてすむ無責任体制

 日本人は「組織サッカー」なる言葉が大好きだ。いったいなぜか? たとえば負けても「組織で戦いました」と言えば、たちまち鵺のように責任の所在があいまいになる。つまり組織で戦えば個人の責任が問われなくなるわけだ。

 例えば1人の選手が決然とシュートを打てば、入るにしろ外れるにしろ個人が責任を引き受けることになる。外せば「あいつが悪い!」と激しくなじられる。日本人は極力それを避けたがる。そして自分でシュートを打てる場面でも、責任回避して他人にパスを出したがる。

 いかにもサッカーの目的が「点を取って勝つこと」ではなく、「パスをつなぐこと」に陥りがちな日本人らしい。ストライカーでなく10番タイプの選手が脚光を浴びる日本的なパス至上主義である。

 そこで何が起こるかといえば、いつまでたってもパスを回し続けることが自己目的化するのだ。誰も責任を取ってシュートを打たない無責任体制が出来上がる。まるでゴールそのものが存在しないボールキープゲームのようなサッカーである。組織によるパスサッカーでポゼッションを志向したジーコジャパンや、悪い時のザックジャパンはそれが顕著だった。

 個人が白黒ハッキリつけたがらない、日本ならではのあいまい文化。日本人特有の「忖度」や「空気を読む」という行動も、根は組織サッカーを祭り上げる無責任体制のメンタリティと同根であるような気がしてならない。

「組織野球」なる言葉が廃れた理由

「組織サッカー」という言葉ができたのは、日本人がまだ満足にトラップすらままならなかった時代のお話だ。「自分たちは個人技で戦えば外国に負ける。だから組織でカバーし合おう」。個でぶつかれば負けるから組織力で勝とう。裏を返せば、ミスの責任を個人が取らずにすむよう組織サッカーが生まれたことになる。

 一方、野球でもかつては組織野球、全員野球なる言葉が盛んに持て囃された。だがいまではあまり聞かれない。なぜだろうか? おそらく日本の野球選手の個人技術がアメリカに伍するほど向上し、個人が敗戦の責任を取らなくてすむ確率が高まったからだ。だからもう逃避としての組織野球なる呼称は必要ない。

 もちろんサッカーも昔とくらべ日本人選手の個人技術は飛躍的に伸びている。だがそれでも野球とくらべればまだまだ世界とは明らかな落差がある。野球とちがいサッカーでは、まだ日本人の個の力は十分ではない。であるがゆえに敗戦の責任が個人に回って来る可能性が高い。

 ゆえにそれを避けるため、いまだに組織サッカーという美名のもと、誰も責任を取らなくてすむよう集団による無責任体制が存在しているわけだ。しかもタチが悪いことに「無意識のうちに」そうなっているのである。これが日本独特のパス至上主義の正体だ。

 日本サッカーが個の力で世界に勝ち、個人が敗戦の責任を被らなくてすむ時代はいつやってくるのか? ひょっとしたら技術やフィジカルの問題以前に、日本人はまず「責任回避のメンタリティ」を変えなければ世界に勝てない。いや、もちろんポルティモネンセの中島翔哉やフローニンゲンの堂安律、ハンブルガーSVの伊藤達哉など、日本人が世界に個で勝つ雄々しい胎動はすでに始まっているのだが。

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【ハリル解任】日本サッカー界は課題に取り組むことを放棄した

2018-05-03 05:59:05 | サッカー日本代表
ハリルが指摘した日本人の多くの弱点

 分析力に長けた前監督のハリルは、日本人の多くの弱点を指摘した。彼はそれらの課題に取り組み、欠点を修正することにチャレンジした。ゆとり教育で育った日本人は「長所を生かす」ことが大好きだが、ハリルは逆に短所を直すことでチームを強くしようとした。

 それが「日本人は球際が弱いからもっとデュエルしろ」だったり、「日本人はムダにポゼッションしたがり遅攻ばかりになる。そうじゃなくもっと速攻を増やせ」だったした。

 また「日本人は狭いエリアに集まり、複数の選手がショートパスを交換してばかりいる。そうではなくもっとピッチを広く使え。ウラを狙う縦への長いスルーパスや、フィールドを斜めに横切るサイドチェンジを入れろ」だったりした。

弱点がむき出しになる戦い方の是非

 ところが日本人はこれらの提案にアレルギー反応を示し、「ハリルの戦い方では日本人の弱点がむき出しになる。結果が出ない。もっと日本人の長所を生かすべきだ」と問題点から逃げた。

 いや、ハリルはまさにその弱点を直すためにやっているのだ。課題を修正し終えるまでは産みの苦しみだが、苦手なプレイを避けてばかりいては日本人は進歩しない。そもそもそのためにハリルを招聘し、弱点の克服に挑んだはずではなかったのか? だが結局、日本人は逃避してすべてを放り投げ、ハリルは解任された。

 日本サッカー界は歴代、新監督が来るたびにチームコンセプトを丸投げにし、自分の頭で考えようとしなかった。で、監督が去ればそれまでやってきたことを全部チャラにし、白紙に戻って新監督の新しいやり方を始める。この繰り返しだった。だがそれではいつまでたっても日本人の課題は解消されない。

 日本人の長所を生かすことはもちろんである。だが同時に短所を直すことも必要だ。短所に目をつぶり得意なプレイばかりしていては引き出しが乏しくなる。弱点を突かれてやられてしまう。とすればハリルが去ったいまこそ、彼が指摘していた日本人の課題(個の弱さやデュエル、縦への速さ等)を忘れず、それに取り組むべきだ。「チャラにして丸投げ」の連鎖を食い止めなければならない。

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【サッカー日本代表】ロシアW杯後は日本人監督による「内向きジャパン」がスタート?

2018-05-01 07:33:02 | サッカー日本代表
ホームに格下を呼び連戦連勝するビジネスモデル

 ロシアW杯が後わったあと、すでに代表チームにはなんと年内に早くも6試合ものホームゲームが組まれている。もしや田嶋体制は、過去の安易なビジネスモデルに回帰するつもりなのだろうか?

 すなわちこの記事でも書いたが、ホームに格下の弱小国ばかりを呼んで連戦連勝。スター選手を起用し、華やかで攻撃的なパスサッカーを見せてホームで観客動員数とテレビの視聴率を上げる。で、各種広告収益等を売り上げる。ただしW杯本大会だけは(このやり方では当然)勝てない。そんなビジネスモデルだ。

 つまりW杯の本大会で勝ち進むことはもう目指さず、そのかわり親善試合で勝ちまくって(コア層以外の)代表人気を煽るパターンである。

 しかも田嶋政権下では「オールジャパン」の美名のもと、日本人監督路線が定着しそうな気配だ。なるほど、それではたとえアジア予選をいくら勝ち進みサッカー人気を盛り上げることができても、W杯本大会では勝てそうにない。

 日本人監督体制を敷き仲間内でナアナア馴れ合い。W杯本大会で勝つことを目指さず、カネを稼ぐことを目的にする。さしずめ「内向きジャパン」とでも命名すればいいだろうか。

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