- 松永史談会 -

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丸山鶴吉(元内務官僚)の自伝 第二弾

2013年11月13日 | 教養(Culture)


旧制福山中学を卒業する頃には在校生に関することを仕切っていたといわれるほどのリーダーシップ、面倒見の良い「親分」肌のところがあったらしい。東大法科時代は帰省するごとに、丸山先輩にあこがれる旧制中学生の後輩たちが、丸山の後をぞろぞろついて回ったとか、福原麟太郎が随筆で書いていた。私の場合、日記とか自叙伝といった自己申告型の資料を無批判に真に受けるようなことはしないが・・・中々の人物だった。

今回国会図書館の「近代日本人の肖像」の中に著書が加えられた。

仙台基督教育児院編「落穂ひろいー「丘の家」から・大坂鷹司のメッセージ」、1992、中央法規出版には昭和6年に全国私設社会事業連盟の理事長となり、後年宮城県知事・東北方面総監として仙台に赴任し、昭和19年に窮地に立たされていた民間孤児院に対して支援し続けた丸山の姿が紹介されている。ここで紹介した「70年ところどころ」でも言及されているように朝鮮総督府の局長時代も、警視総監時代も、丸山の人柄を伺わせる施策(よく言えば、思いやりのある施策、悪く言えば懐柔的施策)を様々取っている。
丸山には血の通う行政、実力行使を専らとする男性原理とは違った思想に基づく施策が取れたようだ。ただ、歴史上は第五代大政翼賛会事務総長としての顔を持つ。


前列・中央の髭の軍人が宮さん(梨本宮)。その左右に丸山と頭山満(とやまみつる)翁. 丸山と頭山は現在国会図書館の「近代日本人の肖像」に掲載中で、ともに近代日本を構築した「偉人」たちだ。




ここに写っているお孫さんたちも今では70年の歳月が流れ8,90歳近い老人になっているはずだ。

丸山鶴吉著「70年ところどころ刊行会」編、昭和30年刊 


元内務官僚丸山鶴吉を通してみた大正~昭和前期史のみならず、彼の内面(思想)史を読み取ることができる貴重な文献だ。


丸山が自分の過去を清算するために、50歳の時に別荘:秋畔荘で速記者・筆記者をつかって制作された口述本だ。昭和9年8月10日よりその月の月末まで3週間足らずで書かれたものらしい。
内務(警察)官僚の、意外な心の内面が語られて大変面白かった。これは多分丸山の本音を記したものだろか?!。丸山はユーモアのセンスがあって、漫談を織り込みながら中々読ませる自伝になっている。

馬賊の参謀として暗躍していた大陸浪人の同調者(田中高愚)を懐柔し、自分のつくった同好会の幹事長と警察官の子弟の寄宿舎(遺芳寮)の寮監にしたかと思うと警視総監時代は「鶴の会」という丸山夫妻を囲む懇親会をたちあげ、ここでは禿げ頭の丸山が鬘(かつら)をかぶって出席するといった芸当を見せている。「鶴の会」の鶴はつるつる頭(禿げ頭)をもじったものでもある。大杉栄に関しても立派な文芸家、立派な政治家になる資質を有しながら哀れむべき社会運動家に堕していると感想を述べている。高島平三郎のネットワークに取り込まれる西川光二郎あたりの転向もその裏で丸山が関与していたかな~。彼らのような、若くて有為な社会運動家を改心させる為には、自分にはその器量はないが、しかるべき教育者=人物の感化が待望されるといったことを吐露している。わたしが感心したのは雑誌『都市と農村』洛陽堂刊に東京のスラムに言及していた。大正期は日露戦争後の農村窮乏化対策が声高に叫ばれ、地方改良運動が推進された時代だったが、警察官僚としての丸山の視野には帝都の片隅にある貧民窟が入り、それが我が国に於ける社会的病理の根源と考えていた節がある。
本書は過去の自分(東大法科→内務官僚・警視総監)を葬り去るために書かれたとあり、丸山のその後の生き方を見ると、なるほどと思える部分が多い。
「50年ところどころ」についても後日精読する予定だが、警察官僚丸山が本書の中でどのような自己に対する印象管理やイメージ操作を狙っていたのか。そういった点を含めて慎重に吟味してみるつもりだ。




まさかの丸山鶴吉の絵と文字?
だとすれば西川光二郎ばりに相当の悪筆だが・・・。筆跡が違う?!絵心は相当に欠如?!
この本は何となく子供のころ祖父の書棚で見た記憶がある。


参考:丸山の筆跡


装幀は小川千甕。川端龍子・小川芋銭と珊瑚の会を結成、昭和7年日本南画院に参加。






警視庁の監察官時代(20代後半~)からはそろそろ大杉栄らからツルツル禿げの鶴吉などと陰口されていたのだろうか。警視総監時代は丸山夫妻を囲む「鶴の会」が発足し、鬘をつけて参加していたらしい。


運動神経は抜群だったようだ。いずれも警視総監時代の雄姿(御歳47-48)


平野義一「私設社会事業 : 丸山鶴吉先生古稀記念集」、東亜援護協会、1953,256P

[目次]
題字
序 参議院議員 後藤文夫
序 参議院議員 広瀬久忠
序 衆議院議員 山崎巖
序 衆議院議員 灘尾弘吉
自序
目次
社会事業デーに就て-ラジオ放送に於ける講演要旨-・丸山鶴吉 / 1
「社会事業デー」の経過と二三の批判・牧賢一 / 13
社会事業家を遇する道-私設社会事業従業員恩給財団設立- / 23
私設事業従事員の待遇について・三浦かつみ / 34
亡き母を憶ふ-私設事業統制協議会の日にて-・丸山鶴吉 / 43
秋畔荘訪問記・三谷此治 / 63
競馬法の改正を繞りて-貴族院本会議に於ける質問演説-・丸山鶴吉 / 69
私設社会事業の財源問題・高木武三郎 / 83
社会事業助成法の制定を望む-貴族院予算委員会に於ける質問演説-・丸山鶴吉 / 89
私設社会事業気魄の吟味・松島正儀 / 98
社会事業法の制定に当りて-貴族院本会議に於ける質問演説-・丸山鶴吉 / 105
私設社会事業への要望・竹中勝男 / 123
厚生省の誕生と其の輸廓-厚生省とは何をする官庁か- / 127
厚生省設置に際して-首相談- / 131
社会事業行政の今昔・平野草生 / 133
〔追錄〕
月報「私設社会事業」の創刊に際して
発刊の辞・丸山鶴吉 / 141
月報の創刊を祝す・男爵 山本達雄 / 144
創刊を祝す・伯爵 清浦奎吾 / 147
創刊の祝辞・子爵 前田利定 / 149
月報の発刊を祝して・本山彥一 / 151
創刊の祝辞・佐々木祐俊 / 155
月報の創刊を祝して・守屋栄夫 / 157
全国私設社会事業家大会を顧みて
第二回全国私設社会事業家大会 / 161
肇国の精神を憶ふ・丸山鶴吉 / 165
大会風景・谷川貞夫 / 169
第三回全国私設社会事業統制協議会 / 173
大阪に社会事業大会を開催せよ・浜田光雄 / 177
第四回全国私設社会事業協議会 / 180
社会事業協議会を顧みて・富田象吉 / 183
第五回全国私設社会事業大会 / 186
社会事業助成法制定促進に関する件・三輪政一 / 186
私設社会事業助成財団設立に関する件・橋本勝太郎 / 188
社会省設置促進に関する件・小池九一 / 189
来りて援けよ・大阪鷹司 / 191
第三回日満社会事業大会に就て
日満不可分関係の強調に就て・丸山鶴吉 / 197
第三回日満社会事業大会概況 / 199
張景恵氏の祝辞 / 208
呂栄寰氏の式辞 / 209
〔資料〕
震災当時の私の思い出-震災十周年記念日に於ける講演要旨-・丸山鶴吉 / 211
私設社会事業経営難の助成に就て-罹災救助基金法に依る補助金- / 221
社会事業と共同募金に就て・五十嵐喜広 / 227
公私社会事業限界の確立・八浜徳三郎 / 232
公私社会事業の連絡、協調・中村三徳 / 237
〔附記〕
理事長退任の辞・丸山鶴吉 / 239
全聯の回顧と展望・長谷川良信 / 243
東京私設聯盟より・塩沢正一郞 鶴見欣次郞 / 248
私設社会事業に就て・鄭寅学 / 251
古稀の会世話人に代りて / 253
〔写真説明〕
A、 社会事業デーの思い出 / 1
B、 私設社会事業家の集い / 23
C、 小供達による還曆の祝い日 / 43
D、 東京驛ホーム出発の瞬間 / 69
E、 相愛学院に於ける丸山理事長 / 105
F、 満洲国宮内府前の日本代表者 / 127
G、 聯盟理事長在職の時代 / 141
H、 日満社会事業大会日本側出席者 / 197
I、 正裝をした警視総監の時代 / 211
J、 北支慰問行を東京驛に見送る / 239

「国立国会図書館のデジタル化資料」より

内務官僚としての丸山についてはいろいろ論文もあるようだが、わたしとしても時間を見つけて精読してい見たい丸山の著書が何冊かある。
昨日閉館し日本はきもの博物館(館長:丸山万里子)は丸山の実兄の子孫経営。調べてみたいことが山積だ。

在鮮四年有餘半




警察官僚になって乗馬を始めたらしい。






丸山鶴吉『家庭読本』・・・・・・『50年ところどころ』の類似本



手元にある丸山の主著たち(『50年ところどころ』掲載の写真2枚の原板写真に相当するものが丸山の幼友達:(松永町の)本郷屋山本(国次郎)家アルバム中にある)
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